書籍を模したパッケージを開けば物語が始まる『MILLE‐FEUILLE MAISON FRANÇAIS(ミルフィユ メゾン フランセ)』
サクッと歯切れよく、ふわっと軽やか。思わず天を仰ぎたくなるような、このはかなくも美しいオリジナルの食感は、パイの層数を工夫することで生み出されているそうだ。パイ生地を表すフランス語「フィユタージュ」には「本のページをめくる」という意味もあり、これをきっかけにミルフィーユの「積み重ねる」構造をとことん研究。フランス産の小麦粉の香り、発酵バターの風味が口の中でゆっくりと膨らむ。
『MILLE‐FEUILLE MAISON FRANÇAIS』店舗詳細
伝統と革新、和と洋が織り成す馥郁(ふくいく)たる世界『萬年堂 本店』
断面に見えるナッツやドライフルーツが、羊羹を華やかに演出。当初、棹状の大きなものしか販売されていなかったが、常連客の要望でミニサイズが登場。ひとくちよりも満足感がある、その名も『百果‐ふたくち』だ。「サイズが小さい分、具材の密度は必然的に高いんです」と、13代目の樋口喜之さん(写真)。「黒胡椒」は近隣のバーでも使われ、ウイスキーやラム酒に合うとか。「ドライフルーツ」は白ワインにも。
『萬年堂 本店』店舗詳細
老舗のせんべいに感じる普遍性と可能性『MATSUZAKI SHOTEN 銀座 松﨑煎餅 本店』
小麦粉と砂糖、卵からできる朗らかな甘みの瓦煎餅が有名。なかでもモダンな魅力を漂わせているのは、格子模様が目を引くシリーズ。砕いた落花生を生地に入れた「大江戸松﨑 格子」は、その素朴さが食べる人を和ませる癒やし系。もう一つの「大江戸松﨑 黒格子」は蔵前の『ダンデライオン・チョコレート』との共作。チョコレート入り生地にこれまた砕いたカカオニブが潜み、かじるとカカオの香りがふわり!
『MATSUZAKI SHOTEN 銀座 松﨑煎餅 本店』店舗詳細
愛媛みかんの秘めたポテンシャルにワクワク『10 FACTORY』
ジュース、ゼリー、ジャムなど、なんとすべての商品が愛媛みかんで作られている。愛媛県は生産するみかんの品種が国内最多で、みかんの王道「温州」や人気の高級柑橘「せとか」、シャープな酸味が特徴の「不知火」などさまざまだ。陳列棚に約10種類のジュースが並び、グラデーションが圧巻。「温州」「伊予柑」「ポンカン」の3本セットは飲み比べると違いが分かりやすく、スターターセットとしてもおすすめ。
『10 FACTORY』店舗詳細
銀座を歩く醍醐味(だいごみ)をあの人におすそ分けしよう
晴海通りと中央通りが交わる銀座4丁目交差点に立っている。目線を上げれば、そびえ立つ和光の時計塔が見え、これぞ銀座! と浮かれるあまりつい手を叩たたきそうになった。飾り付けられたショーウインドーはキラキラしてまぶしく、そこに映り込んだ自分の姿までいつもとは少し違って見える。非日常の景色に囲まれ、まっすぐ延びる目抜き通りを歩き出した途端、気分はさっき電車の中で読み終わった物語の主人公。
重なり合うフィユタージュ(パイ生地)から成るミルフィユの姿を「壮大な物語を記した本のよう」と言い表す『MILLE-FEUILLEMAISON』。『松屋銀座』の地下1階で洋書の書籍をモチーフにしたギフトボックスを受け取ると、子供の頃わくわくしながらページをめくったファンタジーを思い出した。そうだ、これは読書家のあの人に渡したい。表紙に見立てた蓋(ふた)を開ける時、一体どんな表情をするだろう。
込められたエピソードを手土産に添えて
古今東西の逸品が揃う銀座。元和3年(1617)に京都で創業し、御所などに菓子を納めていた「亀屋和泉」は明治の遷都と共に東京に移り、『萬年堂』と名乗るように。ここでは飲んべえのあの人に、お酒のアテにもなる粗挽きの黒コショウ入り羊羹「百果-ふたくち」を選ぶ。聞けば、ウイスキーに合うらしい。
木挽町に立派なのれんを掲げるのは、文化元年(1804)から続く『MATSUZAKI SHOTEN』。職人が季節の絵柄を描く瓦煎餅「大江戸松﨑 三味胴」が名物だが、関東では醤油で味付けする堅焼きが主流だ。ちょっと不思議に思って調べてみたら、江戸時代中期に編纂された百科事典『和漢三才図会』に「煎餅」の項があって、小麦粉に糖蜜を加えて作る甘いせんべいもその頃既にあったって。へえ! この豆知識、甘党のあの人の前で披露しよう。
『GINZA SIX』には発信力のある個性派が多い。オリジナルの加工品で愛媛みかんのおいしさを伝える専門店『10FACTORY』もその一つ。みかんジュースの陳列棚を眺めていると、思う。オレンジ色ってこんなにいろいろあるんだな。
「甘みが強かったり、酸味が感じられたり、苦味がアクセントになっていたり、品種によって本当にさまざまなんです」
気づけば、紙袋で両手がいっぱい。みんな喜んでくれるといいな。
取材・文=信藤舞子 撮影=泉田真人
『散歩の達人』2025年12月号より






