おいしさとコスパの良さが、神田神保町住人の胃袋を掴んだ
店舗があるのは、神保町駅と御茶ノ水駅のちょうど中間あたり。明大通り沿いを歩いていると見えてくる。ちなみにこのエリア、なぜか老舗から新店までカレー店が多数集合している神保町屈指の“カレースポット”であり、「カレー銀座」なんて呼ぶ人も。そんなエリアにわざわざ新規出店したという店だけに、期待は高まる。
2011年から始まった「神田カレーグランプリ」は、神田界隈にある400店舗以上のカレー店からその年のナンバーワンを決めるコンテスト。優勝すると大きな話題となるのはもちろんなのだが、さすがに創業して1年経たないうちに優勝したのはこの店が初。
店内はカウンター席と、2人がけのテーブルが2席。外の券売機で購入した食券は、手ごねハンバーグカレー820円と、トッピングのチーズフォンデューソース200円。そう、このチーズフォンデュー掛けハンバーグカレーこそが、神田カレーグランプリで優勝したメニューなのだ。
ワクワクしながらカレーを待つ。と、机の上には気になるボトルが……。どうやら、ルーやライスにかけて“味変”を楽しむアイテムらしい。
と、カレーが到着! 大皿になみなみと注がれたカレー、そしてライスの上に置かれた手ごねハンバーグ。チーズフォンデューソースは写真のように別添えでやってくる。
はやる気持ちをおさえて、チーズフォンデューソースを上からトローリ。ワクワク感がさらに増し、まるでアトラクションのよう!
さて、さっそく一口。こちらのカレー、創業者の方いわく「スパイシーさと日本式の煮込みカレー、どちらのよさも求めた」とのことだが……納得! 一見欧風カレーのように見えるが、さにあらず。まずじっくり煮込まれたカレー独特の甘みと旨味が口の中に広がり、そこから追いかけてくるのがルーに使われているという数十種類のスパイスの複雑な香り、そして辛さ。チーズフォンデューソースと合わせると、そこにマイルドさとコクが加わる。
上に鎮座した手ごねハンバーグがまた美味しい! スプーンを入れると肉汁がじゅわりと染み出すジューシーさ。「トッピングのハンバーグ」と思っていると、いい意味で裏切られるはず。
食べていると、厨房の奥で手ごねハンバーグの仕込みが始まった。カウンターの向こう側でいい匂いをふりまく、肉肉しいハンバーグ。多分このハンバーグ、これだけを定食とかで食べても美味しいやつ。それが上にのって820円、そしてカレーがこの味。お得じゃないですか? しかもこの店、ライスは大盛り無料。近隣大学生にも人気というけれど、納得だ。
せっかくなので、卓上の味変スパイス類も試してみる。こちらは「香りのスパイス」、ミルをゴリゴリとひいてライスの上へ。中身はクミンやコリアンダーシードだろうか? ホールに近い粗さで加わるため、新鮮な香りと食感が楽しめる。
店舗で毎日仕込まれる、「マジ」なカレー
ひろびろとした大皿を、あっという間に平らげてしまった。神保町店・店長の下村さんに「この美味しさの秘密って、何なんですか?」と質問してみる。
「そうですね……とにかく手をかけて、丁寧に作っている、ということでしょうか。かなり長時間煮込んでいますし、ルーも毎日お店でバターと小麦粉を炒めるところから手作りしています」
なんと! 正直、そんなに広くはない店内。大変じゃないですか? と聞いてみると「あはは、そうですね」と苦笑。でもきっと、それが一番大切なことなのだろう。
ありがとうございました、とお礼を言って帰ろうとすると、ふと目についた壁の張り紙。その視線に気づいた下村さんが「あ、よければこの情報もぜひ。実は日曜日だけまったく違うカレーを出してまして……」と。いやいやいや! それとても大事な情報ですから!!
新型コロナウィルスの影響で、休日の神保町エリアの人出は落ち込んでいるそう。そんな中でもなにか新しい試みを……ということで2021年2月からスタートしたとか。通常出しているカレーとは全く違う「スパイスカレー」2種、これは日曜日しか食べられない限定メニュー。通常のカレーがとても美味しかっただけに、猛烈に気になる。
というわけで後日、日曜日に再訪してみようと思った。いやでも他のトッピングも気になるのがあったなあ……そうなると平日か。そんなことをぐるぐると考えながら神保町を歩く。どうやらこの店の「実直さ=マジ」に、ぐっと心を掴まれてしまったようだ。
構成=フリート 取材・文・撮影=川口有紀