コーヒーは、“私好みの一杯”を
「ハンドドリップコーヒーは、深煎りから浅煎りまで30種類ほどを用意しています。味の好みを言っていただければ、お客様に合わせたコーヒーをお出しします」と中目黒店の責任者、太田亜沙美さん。
漠然と「コーヒーは老舗の喫茶店特有の苦い味が好き」「どっしりとした甘さのケーキに合わせて飲む派」「最近流行りのフルーティーなコーヒーを試してみたい」などと何気ない会話の中で、その人にマッチする一杯を探してくれるのだ。コーヒーカップも一杯ずつ違ったものを出してくれる。
お客様に喜んでもらうことが流儀(ファソン)
店主の岡内賢治さんは、元々はコーヒーとは関わりのない会社員だったが、コーヒー好きが高じて脱サラし、ネルドリップの喫茶店でコーヒー修業を始めた。その後、2009年前に中目黒店をオープン。とにかく「人に喜ばれる仕事がしたかった」という岡内さん。店名の「ファソン」はフランス語の「流儀」。おいしいコーヒーを淹れることもその一環だ。
今では『カフェファソン』の自家焙煎のコーヒーは、有名ブーランジェリーやミシュランに載るレストランにも卸している。
カップに注いだコーヒーがゼリーに!
6時間かけてじっくり抽出した香り高い水出しアイスコーヒーも自慢。なかでも、甘いミルクの上にアイスコーヒー浮かばせたカフェ・オレ・グラッセ660円は、ワイングラスで供され、見た目も美麗。
ほか、あんこをトッピングしたアイスクリームにシェイカーでコーヒーを注ぐと、みるみる内に固まり、ゼリーになる、まほうのコーヒーゼリー660円もぜひ。
目の前で作ってくれるので、その秘密を探ってほしい。ちょっとしたユーモアに心和むスイーツながら、自家製のあんこも控えめな大人の味だ。
おしゃれだけど居心地のよい中目黒の隠れ家
中目黒の駅から徒歩1分ほど、ビルの奥にあるエレベーターを上った3階に入り口がある。ちょっとした隠れ家風の立地ながら、店内の大きな窓からは緑が覗き、日の光が気持ちいい窓際席もある。反面、個室のように囲いがある席もあるので、適度なプライベート感も保っている。
壁に飾られた絵の作者を聞くと、店内の全ての絵は同じ作者で、しかも『ファソン』に通うお客様の作品なのだそう。店頭にかけられた麻袋の刺繍も同じ方の作。
「お子様からご年配の方まで、またはおひとりさまなど、プライベートでもお仕事でも、幅広い方に楽しんでいただきたいです」と太田さんは、笑顔で話してくれた。クラシカルな雰囲気ながら、実は懐の深い店なのだ。
取材・文・撮影=新井鏡子