芝大神宮近くの神明芸者ゆかりの地
地下鉄大門駅から歩くこと数分、細い路地に入ると間口の狭い木造建築が立ち並ぶエリアがある。まるでそこだけ時間が止まったような場所だ。
このあたりは、かつては芝神明の神明芸者といわれる芸者さんが行き交う花街だったそう。『とんかつ穂久斗』の2階(別店舗)も芸者置き屋だった。そういわれてみれば、窓から張り出した木枠の手すりや瓦葺のひさしなど歴史と情緒を感じる建築だ。
ラード100%でカラリと揚げたとんかつ
看板料理のロースカツは、ラード100%の油で揚げたボリュームのある一品。これに味噌汁とご飯がついて1000円。
その次に人気があるのは通称「ハンコロ」と呼ばれているハンバーグコロッケ950円だ。5時間かけてじっくり煮込んだデミグラスソースのハンバーグと、濃厚なクリームコロッケがつく。
このハンコロ、注文してから出てくるまでがとにかく早い!
「スピードを重視しています。ハンコロのハンバーグは、煮込んで火を通していますから、もう、すぐにでも提供できる。コロッケやとんかつも揚げ時間早めに仕上げています」と店主の川島和宏さん。
ランチ時間が短いサラリーマンには嬉しいスピードだ。メニューはこの他にもハンバーグ750円や、チキンカツ、アジフライ(ともに700円)など、お手頃価格のランチが並ぶ。
洋食一筋、父子2代でつなぐ48年の歴史
店主の川島和宏さんは2代目。先代店主のお父さんが昭和47年(1972)に開業した店だ。店名の由来は、その前にこの地にあったという店の名前から。
「縁起の良い名前だとは聞いています。そのわけは話すと長くなりますよ……」と川島さん。
先代のお父さんはイタリアンとフレンチの店で修業、現店主の川島さんも都内のイタリアンレストランで11年の経験を積んでいる。
「これから、どんな店にしたいですか」の問いに、すかさず「特に変える予定はないですね」と返ってきた。
また、この店は夜は一転して居酒屋になる。串カツ800円やえびフライ900円など昼とは趣向を変えた料理も出す。カウンター上の棚には、キープしたボトルがずらりと並んでいた。
取材・文・撮影=新井鏡子