東京都無形民俗文化財に指定されている「世田谷ボロ市」。通称〝ボロ市通り〞を中心に約700の露店が並び、4日間で約70万人が訪れる一大マーケットだ。最近では地方や海外からの観光客も来るそうで、知名度は全国区といえるだろう。
ボロ市の歴史は今から440年以上前までさかのぼる。天正6年(1578)、関東地方を支配していた小田原城主北条氏政が、世田谷新宿と呼ばれた界隈に楽市を開いたのが始まりだ。「当時はまだ五街道が整備される前で、江戸から小田原に向かうのに大山街道が用いられ、この辺りは宿場町として栄えたんです。そこで市を開いて自由な行商を認めたのです」と教えてくれたのはボロ市保存会事務局長の村石圭樹さん。

せたがやボロ市保存会 事務局長 村石圭樹さん
伝統あるボロ市を受け継ぐ保存会は、現在40人の有志によって結成。村石さんは現在69歳で、「僕は若い方。平均年齢は80歳ぐらいじゃないかな(笑)」。
代官餅は朝イチで並ぶべし。からみ(大根おろし)が特に人気。
骨董は見るだけでも面白い。

その後、北条氏が豊臣秀吉に滅ぼされ、徳川の世になると楽市は衰退。かつて世田谷は、その地名が示す通り農村地帯で、楽市はやがて農具や古着、正月用品などが売り出される歳の市となって12月15日に開かれた。なかでも、農家の作業着の繕いや、わらじに編み込むと丈夫になるという布切れのボロが飛ぶように売れたという。それが「ボロ市」の由来だ。

お宝がザクザク見つかる!?

さすがにボロはもう売られていないが、通りを歩くと、骨董やアンティーク着物、植木、神棚、おもちゃ、古本と、あらゆるものが目に付く。北は青森から南は鹿児島まで全国から出店者が集まり、「ボロ市だけで一年間の生計が立つ店もある」という話からも、売り手のボロ市に懸ける意気込みが感じられる。これは選りすぐりの物に出合えるチャンス! というわけ。ちなみに、おすすめの時間帯は「人出が少し引く16~18時ぐらい。商品も比較的ゆっくりと見られて、値段交渉もしやすいですよ」。

インパクトのある看板はまな板の店。
戦前の教科書を取り扱う店も。
シャーピンの屋台は盛況。獰猛な虎が猫のようになるほど旨いということか。

また、ボロ市グルメの食べ歩きも醍醐味だ。飲食の出店は99軒。代官餅やボロ市まんじゅうといった名物のほか、地元飲食店が出すタンシチューや屋台のシャーピン(台湾風おやき)も人気。ホットワインや甘酒は冷えた体を温めてくれる。
買い物もグルメも満喫できるボロ市。「犬も歩けばマナ板に当る」なんてユニークな謳い文句を掲げた店もあるが、目的がなくても宝探し感覚でぶらぶら歩くのも実に楽しいのだ。そうそう、お出かけの際には防寒対策はお忘れなく!

世田谷ボロ市
毎年12月15・16日と1月15・16日の4日間開催。9:00~20:00。世田谷代官屋敷を中心とした、通称〝ボロ市通り〞とその周辺にて。東急世田谷線上町駅もしくは世田谷駅下車。03-5432-3333(せたがやコール)
こちらも注目! 「松陰神社通りのみの市」
松陰神社駅前の商店街の店で、およそ10軒程度が店を出す小さなのみの市。フリマやアクセサリー屋、占い、アロマなど、どんなお店に出合えるかはそのときどき。毎月第1日曜の11:00~日没に開催。雨天中止。詳しくはInstagramとホームページにて確認。

取材・文・撮影=香取麻衣子 写真提供=世田谷区
『散歩の達人』2019年12月号より