魚を熟知した職人が調理する新鮮な刺し身が看板メニュー
たくさんの飲食店がひしめく柏駅東口は、飲ん兵衛にとって絶好のスポット。チェーン店もさることながら、魅力的な個人店が多いのもうれしい。
柏神社の近くにある『魚の蔵』は、鮮度のいい魚介類と日本酒を味わわせてくれる店だ。
店内に入ると、和モダンの落ち着いた空間が広がり、中央にはコの字のカウンターがある。そこでは、店長の加藤朝規(とものり)さんが魚を調理している様子を見ることができる。このライブ感は、カウンター席に座った人だけの特権だ。
ガラスケースの中には、毎日オーナーの田中辰弥さんが松戸南部市場で自分の目で見て仕入れた鮮魚が収められている。
「市場の仲買さんともいい関係ができていて、良質な魚を仕入れることができています。でも、それを生かすために魚の知識や保存方法、メニューのアイデアが必要なんですよね」
加藤さんは料理人として働いてきたが、『魚の蔵』に入るまでは和食の経験は少なかった。数々の和食店で腕を磨いてきたオーナーの田中辰弥さんに、魚の扱い方や調理方法などをマンツーマンで仕込まれた。
魚は種類や状態で締まり方も違うため、刺し身の厚みも変えるという。いい魚を仕入れるだけでなく、目利き、保存、切り方も含めて“いい状態”で提供する。
それが職人の仕事なのだ。
そう話しながらも、加藤さんの手は止まらない。鮮やかに魚を引いていく手元を眺めながら、魚にまつわる話に聞き入った。
「居酒屋以上、割烹未満」で楽しむ魚と酒
うまい魚と職人の確かな技術で提供される魚料理にはどれも定評がある。一部に肉料理や旬の野菜を使ったものもあるが、メニューのほとんどは魚料理だ。
「調理法はごくシンプル。刺し身や焼き物など、魚そのもののおいしさをダイレクトに味わってもらえるものが多いですね」
「魚料理はもちろんですけど、オープンから10年以上人気のかにクリームコロッケや、出汁からこだわる出汁巻き玉子も人気なんです。『居酒屋以上、割烹未満』の店でありたいですね」と、加藤さん。
料理に寄り添う酒の品ぞろえも充実している。特に日本酒にはこだわりがあり、メニュー表にはひと目で味がイメージできるようチャート付きで提供。
「常時18種くらいの日本酒があります。メニューには載せてない『隠し酒』もあるので、声をかけていただけたら! 料理と酒のペアリングもアドバイスしますよ」と加藤さん。
値段や銘柄だけで選ぶのではなく、とっておきの魚を味わうためにピッタリの酒を選ぶ。これこそが贅沢というものだろう。
年中楽しめる生牡蠣と、牡蠣専用の日本酒を味わう
『魚の蔵』に来たなら、名物の刺し身をいただかないわけにはいかない。すぐさま刺身盛り(2人前)2640円をオーダー。
刺し身盛り合わせには、天然物の本マグロのトロ、カツオの藁たたき、自家製〆サバ、イワシの木の葉造り、カンパチ、タコ、サワラの7点。選んだ酒は、宮城の純米吟醸酒、山和(やまわ)144cc 880円だ。
口に入れた瞬間とろけるトロは、脂だけでなく赤身のうまみもあり、辛口だが華やかな山和の相乗効果で味わい深い。軽くバーナーで皮を炙ったサワラや、藁焼きして香り高いカツオ、上品な酢締めの〆サバなど、随所に職人技が光る。
「ところでこの山和、ラベルを見てわかるように牡蠣に合う酒なんですよ。実はうちのもう一つの売りは生牡蠣が年中食べられることです。ぜひ、一緒に味わってください」と加藤さんにおすすめされ、迷うことなく追加オーダー。
牡蠣は仕入れにより価格が変わり、この日は2個で1628円。
加藤さんは「大きめなので平均よりも少し価格が高めです」というが、こんな大ぶりの魚介との出合いも楽しく、次回の来店にも期待が持てる。
スダチを搾りポン酢をつけて牡蠣を食べると、口いっぱいになってしまうほど大ボリュームだ。
濃厚な潮の香りとうまみが口に広がり、思わず口角が緩む。
すかさず、山和をちびりと飲めば、口からあふれんばかりの幸福感に包まれた。
「牡蠣は濃厚なミネラル感が特徴ですが、山和にもほんのりミネラル感があって相性がいいんですよね。これは来てくださったお客さまにぜひ食べていただきたいです」
牡蠣が胃袋に入った後も、舌にはうまみの余韻がいつまでも残って、それだけでお猪口1杯飲んでしまった。
真面目な魚介酒場かと思ったら、こうしたうれしい予想外もあって満足。
気のおけない仲間と、うまい魚とうまい酒を酌み交わせるのがここ『魚の蔵』。
しっぽり飲みたい時に訪れたい大人の酒場だ。







