お茶や料理から健康を取り入れる

『月和茶』は、吉祥寺駅前のアーケード商店街を抜け、東急百貨店を過ぎてすぐの場所にある。引き戸の先に続く階段を上ると、重厚な質感の木製テーブルとイスが並ぶ空間と座敷が広がる。台湾にある昔の民家をイメージした店内は、木の素材を活かした造りが特徴で、本場の茶藝館に来たようだ。

オーナーの楊明龍(ヨウメイリュウ)さんは、1990年代半ばに来日した際、生まれ育った台湾では身近な存在だった烏龍茶が、日本では一般的な飲み物ではなかったことに気付く。

「台湾の美味しい烏龍茶を、コーヒー1杯分の値段で飲んでもらえたら」

そんな想いから、楊さんは1999年に経堂でこの店をオープンした。店を開くにあたって決めたテーマは、“お茶と薬膳”。台湾で古くから伝わる薬膳は、今なお台湾の人にとって普段の生活の中で自然に取り入れているものだという。その習慣をこの店にも持ち込むことで、訪れたお客さんの健康につなげたいと考えた。今では、メニューの8割に薬膳が用いられているそうだ。

枇杷甘桔茶(ピーパァガンジェチャ)825円。金柑の蜜漬けは自家製だ。

その代表的なメニューの一つである健康茶(薬膳茶)は、5種類から選べる。様々な薬効のある薬膳を、楊さんが飲みやすくオリジナルでブレンドしているのだという。中でも、お店のイチオシは枇杷甘桔茶(ピーパァガンジェチャ)。胃腸の働きを整える効果がある枇杷(びわ)の葉と、風邪のひき始めや喉にもよく効くという金柑の蜜漬けが丸ごと1個入ったお茶だ。少し酸味があって、さっぱりした飲み口のお茶はクセがなく、どんな料理にも合いそう。ガラスポットに入れて供される健康茶は、別のポットからお湯を注いで、何杯でも楽しめる。その他にも、緑豆や白きくらげ、陳皮など8種類の素材がブレンドされた八宝茶(パーパオチャ)は、持ち帰り用にも販売している。

八宝茶やパイナップルケーキは持ち帰り用にも販売している。

この店では薬膳茶以外にも、烏龍茶や緑茶などの台湾茶も多く扱っている。それらの茶葉は、全て楊さんの知り合いの農家から直接買い付けを行っているのだそうだ。この店のオープン以来、楊さんは毎年欠かさず現地の農園を訪れて、その時期の最も良い茶葉を選んで仕入れていたが、2020年は新型コロナウイルスの影響で台湾に行くことができないため、一部の茶葉はなくなり次第終了になる場合もあるという。

薬膳食材をたっぷり使ったスイーツ

『月和茶』は料理やスイーツも豊富で、多くのメニューに薬膳が用いられている。例えば、オリジナルパフェの月和茶聖代(ユエフウチャスンダイ)には、仙草ゼリーや愛玉ゼリー、杏仁などの薬膳食材がたっぷり使用され、美味しく健康を取り入れることができる。

月和茶鳳梨酥(店内での飲食の際はお茶とセット)1100円。※お土産の場合は3個入りで1100円。

お店のイチオシスイーツである鳳梨酥(パイナップルケーキ)は、楊さんが製造に研究を重ね、5年ほど前から提供を始めたこだわりの一品。外はサクサク、中はしっとりという食感の異なる2種類の生地の製法にたどり着き、あんもパイナップルを使って丁寧に手作りされる。台湾の人にとって、鳳梨酥は家庭の味というより買って食べるものという存在であるらしく、一から理想とするものを作り上げるには相当の苦労があったようだ。

オーナーの楊明龍さん。

薬膳といっても、まったく違和感なく、むしろ美味しくいただけるのは、楊さんの腕の成せる技。甘いものを食べても、体にいい効果のある薬膳が使われていると思えば、きっと罪悪感も消えるはず。この店を訪れたら、ぜひ薬膳に注目しながら、本場台湾のお茶と食事を楽しんでもらいたい。

『月和茶』店舗詳細

住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町2-14-28 2F/営業時間:11:00~17:00LO(土日祝は18:00LO)/定休日:火(祝日の場合は営業)/アクセス:JR中央線・京王井の頭線吉祥寺駅から徒歩5分

取材・文・撮影=柿崎真英