20年目を迎える人気ラーメン店
うなぎの寝床のように奥に長い店内。
11時30分の開店と同時に、近隣のサラリーマンが訪れ、あっという間に席が埋まる。客の多くが、ラーメンと好きなごはんのセットメニューを注文している。
次々と入る注文に、厨房では、店主の伊東伸久さんがせわしなくラーメンを作っている。慌ただしい光景に、清澄白河でも指折りの人気店であることがうかがえる。
困難を幾度も乗り越えて
伊東さんは料理人歴約30年。ここで店を開く前について話してくれた。「寿司やイタリアン、そしてトラック運転手などあらゆる仕事を経験しました。トラック運転手時代に、毎日のように食べに行っていた食堂のラーメンの味が忘れられず、いつか自分で店を開く時には、毎日食べても飽きないラーメンを作りたいと、ずっと思っていました」。後に、ラーメンの名店で店長を務め、独立し、合羽橋育ちの伊東さんも馴染みの深いこの地で店をもつことにしたという。
「実は今年に入って大病を患い、ちょうどコロナ禍ということもあって、3月から3カ月ほど店を休んでいたんですよ」と伊東さん。大病上がりでこれほどハードな仕事、大丈夫なのだろうか?とお節介ながら、少し心配に。
「昔はバイク事故で大怪我を負ったこともあるんです。いろいろあるんですよ……」と笑いながら話してくれる姿に、伊東さんの人柄の良さがにじみでている。
ヘルシーな味わいを目指して生まれた一杯
毎日でも食べられることを目指し、完成した豚骨スープのラーメンは、コクもしっかりありながら、あっさりとした飲み口。
スープは、煮込み時間を調整することで、豚骨特有のクセを感じさせない味わいに仕上げている。スープは、塩、味噌、醤油の3種類の味を用意。麺も特注の中太麺で、もっちり感が楽しめ、スープとの相性もよい。
トッピングの焼豚は、素揚げして旨みを閉じ込めた豚バラ肉をスープで煮込み、特製ダレに一晩漬けこんでいる。口の中でほろほろととろけるほど柔らかだ。
このほか、体に気をつけたい中高年や、ヘルシー志向の女性客には、野菜ラーメン830円をおすすめしたい。女性の一人客も多く、気軽に利用できる店だ。
『東煌』店舗詳細
取材・文・撮影=千葉香苗