羽根付き餃子デビューを果たすべく、夜の蒲田へ
「羽根付き餃子」とは、焼き目の部分に薄く広い皮が付いた焼き餃子であり、この皮の部分が羽根に見えることからそう呼ばれている。
自分の場合、羽根付き餃子との出合いは冷凍食品だった。「フライパンで簡単!」の謳(うた)い文句に惹(ひ)かれ購入し調理するも、自宅の古いフライパンの底に焼き面がこびりついてしまい、出来上がったのは、羽根はおろか焼き目ごともがれた「マイナス餃子」。結果、羽根付き餃子デビューはかなわず、以来縁遠い存在となってしまった(近年は改良が進み、こういったことは少なくなっているようです)。
しかし今号(2026年2月号)は「蒲田・大森・池上」特集である。それなのに、蒲田名物とされている羽根付き餃子を食べたことがない人間が編集部にいるとなると、後々軽い騒動にもなりかねない。これを機に、改めて羽根付き餃子デビューを果たすべく、夜の蒲田に繰り出すことにした。
伺ったのは『歓迎 本店』。言わずと知れた羽根付き餃子の名店であり、創業40年を超える中華料理の老舗でもある。
着席開口一番「羽根付き餃子(と紹興酒)ください!」と店員さんに告げ、ほとんど間もなくやってきたのが次の写真の羽根付き餃子である。
まず驚いたのはやはり見た目。餃子を覆うように薄く広がった皮は、まさしく「羽根」であり、半透明の外側ときつね色の焼き目の部分のコントラストがもはや美しい。箸を入れると羽根が崩れるサクサクという音と共にとびきりおいしそうな香りが広がり、思考回路はショート寸前。ニンニクベースの特製ダレを羽根に絡ませ齧(かじ)りつくと「皮がモチモ……」と思い終わる前に中から肉汁があふれ出した。もはや軽いパニックである。ほどなく目・耳・鼻・口すべての感覚器官から「おいしいです」という表明があり、元締めである“自我”もこれに同意。
かくして、羽根付き餃子デビューは大金星となった。帰り道、煌々(こうこう)と輝く『歓迎 本店』を背に、自分は人知れず5cmほど浮いていた、ように思う。
取材・文・撮影=守利郁弥(『散歩の達人』編集部)
『散歩の達人』2026年2月号より








