【多摩のA面/たまらんB面】とは
東京都の西側、23区以外のエリアにあたる多摩地域。このエリアに越してきて日が浅い筆者が、30市町村を1つずつ歩き回って調査! 1つの市町村ごとに街の見どころを紹介する【A面】と、気になるテーマを深掘りする【B面】の二部構成でレポートします。
小平市 DATA
面積……20.51平方キロメートル
人口……19万6799人(2025年1月現在)
小平市・一橋学園にワッペンキーホルダー天国があるという
ここは小平市の一橋学園駅前。西武多摩湖線で国分寺駅から一つめ、商店街が南北に延びる生活拠点。また陸上自衛隊小平駐屯地や国土交通大学校など大人数が出入りする施設もあり、夜には個人居酒屋が活気づく面白い雰囲気の街なんです。
突然ですが、見てください! フルーツサンドの絵柄が刺繍された、ワッペンキーホルダー。イチゴの断面、キウイの種まで再現されて、かわいいですよね〜!
もう一丁!今度は「ほうれん草」。
根本がしっかりピンク色なのと、結束テープが紫色なのも、あるあるですよね〜。
こんなニッチなモチーフのワッペンキーホルダーが、何百種類も陳列されている雑貨店がここ、一橋学園にあるのです。
国分寺から1駅、単線の西武多摩湖線。その一橋学園駅のホームから見える至近距離に、噂の店はあります。その名も『Kimamaya T&K』。
店舗が開いている日が水・木・金曜日のみというのもまた、興味をそそりますよね。では、扉を開けて……ドーン!
うわ〜! 食品系だけじゃありません! あんなモノも!? こんなモチーフも……!?
思わず一人で取り乱し、失礼しました。ひとまず気を落ち着けて、じっくりこのお店の成り立ちをご紹介しましょう。
母娘のWエンジン!『Kimamaya T&K』の原点はフェルトのおもちゃ
2016年に実店舗オープン、10年目を迎えるという雑貨と手仕事の店『Kimamaya T&K』。
オーナーであり自ら商品も作る樋口智子さんと、そのお母さまでグッズ制作のサポートをされている梶谷敬子さんで運営されています。
先ほどド〜ンとワッペンキーホルダーを押し出しまくりましたが、他にも店内には布の手作り雑貨がズラリ。
実は、智子さんと敬子さんがこの『Kimamaya T&K』開店に至った活動の原点は、布系クラフトのほうにありました。
母・敬子さんがパッチワークを教えていたこともあり、「ミシン使い放題」というほど手芸が身近な家庭だったそう。社会人時代は展示会や百貨店などのディスプレイを手がける会社に勤めていた智子さんですが、産休中、遠ざかっていた手芸に触れ直し、再びスイッチが入ったようで……。
「家にいて暇な時に、母(敬子さん)がフェルトのキットをくれて、フェルトでいかにリアルに食べ物を表現するかという楽しみにハマって」と智子さん。指差した先の棚には、その頃から作り始めたというドーナツやパンのフェルトおもちゃがありました。
その後、スタイなどのベビー用品などへジャンルの幅を広げ続け、レンタルボックスや委託販売での販売開始。2016年、住まいにもほど近いこちらの立地での開店に至りました。
お二人の得意技を分担して生まれるグッズも多数。例えばこの「ハリネズミさんの編み編みブローチ」。
毛糸の部分は、編み物の得意な母・敬子さん、ウッドパーツで編み棒をつけるのは智子さん……と、アイデアと技術を合わせたオリジナル商品です。
ちなみに、どの業種のお店も苦境に陥ったコロナ禍には、お二人がフル稼働で布マスクを日夜量産し、近所の方々に大変重宝がられたそうです。
勝手に!『さんたつ』読者におすすめしたいこ〜んなワッペン
さてさて、冒頭でチラ見せした、ワッペンキーホルダー。全500点近くにもなる怒涛の全点陳列棚を、改めてクローズアップして参りましょう!
一律ひとつ1210円で、土台に本革を使用した本格派。長持ちし、愛着の湧く一品なんです。
ここで勝手に! Web『さんたつ』読者のみなさまの琴線に触れそうなジャンルをよりぬきでご紹介しましょう〜!
まずは食品系!
最近ブームの蒸篭入りの小籠包はいかが? ラーメンは紅生姜のアクセントがニクい! それでいうと、秋刀魚に添えられたはじかみも、いい味出してますね〜。そして! のりたまごのふりかけは、全キーホルダーの中でも不動の一番人気だそう。
続いて、路上看板や掲示物系!
クラシックな美容室看板や、アパートに貼ってある「入居者募集」。あるある〜。レトロなうどん・そば自販機の切り絵風サインに、王道の「たばこ」……散歩好きにはたまらないでしょう!
ちょっと旅情をそそるモノたちも。
紙の時刻表に、会津の赤べこ……みちのく鉄道旅気分。高速道路の渋滞表示は、思わず「SA寄っとけばよかった〜」。旅館の湯呑みもイイ。宿に入ったらまずは、ウエハースみたいな個包装菓子と、これで緑茶を一服ですよね〜。
ディテールに着目すると、まず土台の本革と縫い合わせる糸。ワッペンの刺繍の色に合わせてステッチ(針目)の糸の色を変えたり、透明に見える糸を導入するなど、浮き立たない仕上がりに。そして肝心の本革にもフォーカス。先ほどの旅情系4点を裏返してみると……?
表側のワッペンに応じて、革の色を変えてあるんです! ……ん? ということは、材料の革を仕入れる時も、少しずつ考えて買わなきゃいけないですよね!?
「革は本当に出合いで。問屋さんで、あ、これいいっていう革に出合ったら買います。本来、カバンとかを作るための大きな革を買う人が多いですが、『ワッペン用に小さくするので切ってもいいです』と言うと驚かれますね」と智子さん。
仕入れた革にワッペンを当てて、輪郭よりちょっと大きめに切り、詰め物を入れ、ミシンで智子さんが縫合。はみ出たフチを切り落とし、裁断面がザラつかないように液剤でコーティング……たくさんの手間がかかっているだけあって、本当に手なじみがいいんです。
キーホルダーの金具の扱いやすさも重要。扱いが楽な「レバー鐶(かん)」を採用していますが、母・敬子さんが一つ一つ、きちんと開閉するか検品しています。
今では『Kimamaya T&K』の看板雑貨、ワッペンキーホルダー。
元々、手芸用品の1ジャンルとして、ワッペンのみを販売していたそう。お客さんの既製服などにアレンジしてつけるサービスもしていたようですが、「どこにつけていいか迷っちゃう」という人もちらほら。そこで!
「家にあるパワーのある職業用ミシンで、本格的な革と縫い合わせてキーホルダーにするのを思いついて作ったら、反響がすごく良くて」と智子さん。
そのうちに、絵柄からオリジナルのワッペン開発に開眼。智子さんが図案を描いて台湾の刺繍会社に発注を繰り返すうち、「だいたい2カ月に10種類くらいのペース」で新作が生まれ続け、現在の500種類規模の点数に!
雑誌『散歩の達人』の愛読者だったという智子さん、路上観察は昔から得意とするところ。「都心にいく道中とか、電車から見えるもの、地方に行けば地方ならではのモノ……」と、続々アイデアが思い浮かんでくるそう。目に映ること全てのことはワッペンモチーフ、ですね〜。
“じゃらづけ”再燃の今こそ! イチオシは「DXキーホルダー」
いま、イチオシなのが、壁のワンコーナーにある「DXキーホルダー」とも教えていただきました。これは——!?
ワッペンキーホルダーを中心に、同じテーマのモノを複数、太ひもストラップでひとまとめにしたもの。例えば、この「タレ袋付 革餃子」をご覧ください!
革製のジャンボ餃子をメインに、アクリル製のオリジナル「餃子のタレ」キーホルダー、そして1つ1つレジンでタレを表現したミニチュア八角皿を町中華レッドのストラップで束ねて……これぞ「組み合わせの妙」。あらかじめセットされたもの以外に、自身でパーツをカスタマイズもできます。
辛い物好きには唐辛子、バドミントン部員にはシャトル……と、自分や贈る相手の嗜好に合わせてアイテムを選び、「オリジナルの束」を作れるんです。
最近、若者のバッグにも“じゃらづけ”——平成期の携帯ストラップを思わせるチャーム大量づけが回帰しているようですが、まさにピッタリじゃないですか……。
『Kimamaya』ブランドの品々は現在、通販のほか、委託販売先の主力・ラフォーレ原宿のセレクトコーナー「愛と狂気のマーケット」でも絶大な人気を誇っています。が、この爆発的な全点数を一挙に見られるのは、この実店舗だけ!
最後に、お二方が長く暮らす小平市のことを聞かせていただきました。
「小さい頃は(小平市)中央公園で遊んだり。あとは、玉川上水。高校時代は自転車で爆走して、武蔵野市まで通学したり」と智子さんが語れば、「昭島の『モリタウン』も、自転車でいく場所という感覚。(智子さんが)小さい頃は後ろに乗っけて、大きくなったら自転車2台でショッピングに行って」と敬子さん。
この辺から昭島までって、10km以上もあるのでは!? でもたしかに、この小平を含めて武蔵野台地上は平坦で、サイクリングロードが発達してるんですよね。
小平生まれの『Kimamaya』グッズ。武蔵野の林を抜けて一橋学園に足を運び、ワッペンの森でとことん悩んでみませんか!
取材・文・撮影=イーピャオ







