Now Parking《駐車なう》

まずその代表格はこれ。「駐車禁止」と赤で記された文字ばかりか、標識マークの赤の部分も消えてしまい黒の車のシルエットだけが残っています。遠目には車のマークにしか見えません。かつてはNo Parkingだったのにいまや駐車場のサインのように見えるということでNow Parking、ツイッター風に《駐車なう》と命名してみました。

しかし、あらためてこの車のマークをこうしてじーっと見ていると違和感ハンパなくなってきませんか。フロントグラスの真ん中に縦にピラーが入ってるなんて、いまどきバスや電車でも見かけなくなりました。もはや立派なクラシックカーでしょう。子供たちの目にはどう映るんでしょうね。丸いヘッドライトの上にある線は眉毛、バンパーは口、グリルは鼻……なにか最初から顔に寄せて描かれたイラストに見えているのかもしれません。

The black car《黒い車》

駐車禁止看板の車のシルエットがやたらと気になってきました。数としては多くはないですがこの横向きの昭和レトロカーもときどき見かけますよね。なにやら実在する車の図面をトレースしたみたいにリアルなシルエットが特徴的です。

車に詳しい友人にこの写真を見せたところ、いすゞフローリアン初期型(1967〜1970年)だとすぐに同定してくれました。さすがです。調べてみるといすゞの名車117クーペの兄弟車なんですって。そういわれてみると昭和レトロ気分もあがります。

しかし、なぜこの車種なのか。そして、なぜここまでリアルに描く必要あったのか? こうした標識に使われる絵記号のことをピクトグラムと言いますが、そのデザインはできるだけシンプルに、形は一般化するのが鉄則なのに……。車種はわかったけれど新たな謎がいっそう膨らむばかりです。

Forbidden Silhouette《禁断のシルエット》

駐車禁止の看板のはずが車のマークになってしまったのと同様に、こちらは禁煙の看板が喫煙のマークに変わっていました。

現在よく見かける禁煙のマークは一本棒に描かれたタバコから煙が出ているピクトグラムに赤の斜線と丸囲みというものが主流ですが、これはタバコを指に挟んだ手が描かれている珍しいタイプ。赤の禁止サイン抜きでこうしてシルエットだけで見ると、シガレットの傾き、煙の渦と流れ、親指の形など細部にわたってなかなか優雅じゃないですか。禁煙の赤いサインが消えたら、タバコが紳士淑女の嗜みとしてまだ認められていた時代の文化的イメージが浮かび上がってきたというのはなんとも皮肉なことです。

Gentleman only 《殿方用》

最後にもうひとつ。住宅地の駐車場の隅で見つけたこの看板、「関係者以外」の下におそらく「立入禁止」の赤い文字があっただろうということは想像がつくのですが、問題はその上の立入禁止のサイン。これなにかが違うんですけど、わかりますか?

きっと当初は誰も気がつかなかったんじゃないかと思うのですが、赤丸と斜線が消えて浮かび上がったこの人物のピクトグラム。これトイレのドアで男女を区別するために使われるピクトグラムですよ。

男女不問で人を表すだけなら白のワイシャツのVゾーンのないただの人型でいいのですが、この看板を作成したデザイナーはうっかり「殿方用」のピクトグラムをコピぺして使ってしまったんですね。

しかもこの看板、やけに低い位置にあるのも奇妙ですよね。夜道で尿意をもよおした人が引き寄せられないといいのですが。

文・写真=楠見 清