自分の店は絶対『永吉』って決めてたの

『永吉』店主・清水幸雄さん 

アメ横で買った白スーツで決め、年3~4回はライブに行く清水さん。
アメ横で買った白スーツで決め、年3~4回はライブに行く清水さん。

「自分は中学時代から単車にハマってて。18のころ、単車仲間の先輩に武道館ライブへ連れてってもらったのが永ちゃんの初体験だった。

会場周りでは旗を振っている応援団みたいなヤツもいたしさ。吞(の)まれたね、雷が落ちたような感覚。なにより2時間ライブを真剣に歌いきる、この人プロだ、かっこいいなって思ったの。あ、その先輩は本職になったけどね。

高校卒業後、自分は中華の道に入った。町中華でバイトを続けてたとき、店の大将が『本気でやりたいなら』と紹介されたのが、周富徳さん。そこから『聘珍樓(へいちんろう)』を皮切りに、ずっと中華で修業し続けた。

『アー・ユー・ハッピー?』を夢中で読んでた時期でね。もう当時から自分の店は絶対『永吉』って名前で開業しようって決めてたの。親の介護もあって、店を開くのは45歳と遅かったけど、永ちゃんの『てめぇの人生なんだから、てめぇで走れ!』って言葉を胸に、中華で走り続けたよ」

SHIMIZU’S SELECTION

  1. オイ、そこのFriend
  2. So Long
  3. 居場所

※「居場所」と「流星」では選べないと言われ筆者が聞いて選曲。

麻(マー)も辣(ラー)もガツンと効いたロックな担々『永吉』

担々麺は普通~大辛まで3段階で選べ、普通でも結構パンチあり。無料の半ライスをシメに丼に投入するのが常連流。
担々麺は普通~大辛まで3段階で選べ、普通でも結構パンチあり。無料の半ライスをシメに丼に投入するのが常連流。

清水さんが「いつの間にか一番人気になっちゃった」という担々麵1100円は、濃厚な練りゴマのスープに唐辛子と花山椒をバッチリ効かせた、発汗よろしくな一杯。下味をしっかり付けた大ぶり焼き餃子2個380円~や海老チリ1380円など麺類以外にも、長年鍛えた中華の技が光る。「営業中は、ホールを見られないぐらい調理に集中している」というプロ意識も、実にYAZAWAイズム。

西川口で12年。
西川口で12年。
住所:埼玉県川口市西川口1-5-5 MFハイツ1F/営業時間:17:00~23:00(日・祝は~21:00)/定休日:月/アクセス:JR京浜東北線西川口駅から徒歩2分

永ちゃんは憧れでもあり、目標

『I.ZAKAYA 830』店主・立花正豊さん

カラオケバーの『CAROL』で永ちゃんの象徴、白いスタンドマイクをもつ立花さん。店内にはYAZAWAグッズ。
カラオケバーの『CAROL』で永ちゃんの象徴、白いスタンドマイクをもつ立花さん。店内にはYAZAWAグッズ。

「俺は実家が寿司屋でね、14歳から和食の修業をはじめた。(奥さんから『悪さばっかしてたから割烹(かっぽう)に回されたの』の声)まあ昔のことはいいんだよ。14の時にテレビCMで永ちゃんの『時間よ止まれ』を聴いて、なにこれ! と衝撃が走った。曲が入ってる『ゴールドラッシュ』ってレコードを速攻買ってよく聴いたな。

永ちゃんの『成りあがり』を読んでサ、壮絶な苦労からの成功は自分の励みにもなった。料理の世界で50年もやれてるのは永ちゃんのおかげだと思ってる。

この居酒屋を開いたの3年前、隣のカラオケバー『CAROL』は2年前。永ちゃんの歌? 歌わないよ! あの雰囲気はあの人しか出せないから、自分で歌うと違和感を感じるの。(奥さんから「『東京』をよく歌ってくれたじゃない」の声)それは言なうよ(笑)。

永ちゃんは憧れでもあり、目標。永ちゃんが80までやるなら自分も80まで厨房(ちゅうぼう)に立ちたいんだ」

TACHIBANA’S SELECTION

  1. 長い旅
  2. 親友
  3. 安物の時計

※奥さまが「よく歌ってくれたの」と教えてくれたのは「東京」。

ファン以外も痺れさせる酒肴の数々『I.ZAKAYA 830』

刺身3種盛1430円(実際は5種)など。
刺身3種盛1430円(実際は5種)など。

立花さんが豊洲から仕入れる鮮魚料理が自慢。生本まぐろレアカツ1650円の口でとろける食感ときたら! この日はトウモロコシの冷製スープ770円やアクアパッツァ1100円まであり、和洋で客を魅了する。「まーくんは仕込みに5時間はかけてるの」(奥さん)という準備意識もまた、YAZAWAイズム。永ちゃんトークで盛り上がったら隣の『CAROL』(~24時ごろ)で熱唱もOK!

料理のうまさで、ファン以外も笑顔に。
料理のうまさで、ファン以外も笑顔に。
住所:埼玉県川口市並木2-31-9
/営業時間:17:00~23:00(日・祝は~21:00)/定休日:水/アクセス:JR京浜東北線西川口駅から徒歩4分

取材・文=鈴木健太 撮影=オカダタカオ
『散歩の達人』2025年10月号より