前田利家 戦国がたり
更新日:2025.08.17

「氷室」の役割とは? 五稜郭が日本中にかき氷ブームをもたらした? 暑い夏、日本の涼の歴史について語る!

この記事をシェア
表紙戦国がたり
前田利家 戦国がたり
名古屋おもてなし武将隊が一雄、前田利家が戦国時代を語る!戦国時代の文化や大河ドラマの時代背景、そして戦国から現代に続く史跡名跡についてご案内。

皆々、息災であるか。

前田又左衛門利家である。

うだるような暑さが続いて、正直息災ではないぞという者も少なくないのではないかのう。

誠、現世は恐ろしく暑い。

無論、我ら名古屋おもてなし武将隊は真夏であろうとも名古屋城にて皆をおもてなしておるのじゃが、時折皆から「戦国武将は夏場の戦はどうしておったのですか」と問われることがある!!

確かに、これほど暑き中、甲冑なぞを着てしまえばものの数分で熱中症であろう。

この問いへの答えは簡単で

「我らの時代はこんなにも暑くはない」

で以上なのじゃが中々おもしろき疑問であるわな。

我らの時代は小氷河期と申して世界が急激に冷え込んだ時期。

よって作物が育たず戦が増えたのが戦国時代であって、現世とは対照的な時代と言えるのじゃが、無論それなりに暑さへの備えも考えられておった。

簾(すだれ)や風鈴、打ち水あたりが有名であるな。

因みに、江戸時代においては夏バテ対策として甘酒が飲まれておって、故に甘酒は夏の季語となっておるのじゃ。

コンテンツ目次
皆々、息災であるか。前田又左衛門利家である。長く苛烈であった2024年の夏も10月に入ってようやっと終わりを迎えようとしておる。現世では地球温暖化の影響で段々と暑くなっておるそうじゃな。 我ら名古屋おもてなし武将隊は週末に名古屋城にて演武を執り行っておるのじゃが、今年の夏は熱中症の危険のために中止になることが多かった。現世では暑さによって様々な問題が起こっておるが、我らが生きた戦国時代は寒さによって命が危ぶまれる時代であった。現世とは対極の問題を抱えておったわけじゃ。此度は我らの時代の気温について話してまいろうかのう。

夏の楽しみ、氷菓子

ところで、現世の重要な避暑の方法の一つであり夏の楽しみであるのが冷たい甘味や氷菓子であるわな!

名古屋の人気の茶亭『コメダ珈琲店』殿は大きすぎるかき氷が夏の風物詩であるし、灼熱の名古屋城でも大人気である。

特に近年、高級かき氷が人気となって新たな店が続々と出来ておるそうじゃ。

氷菓子は冷蔵冷凍の技術の発明と発展によって出来た、現世ならではの楽しみと言えるのじゃが、平安時代に記された『枕草子』には清少納言があまづら(高級甘味料)を削り氷にかけて食べたと記しておる。

実は我らの戦国時代よりも更に古くから食されてきた歴史があるのじゃ!

皆からすれば中々衝撃的な話ではないか?

ということで此度の戦国がたりでは、かき氷と、冬の氷を夏まで蓄えておく氷室(ひむろ)について話して参ろうではないか。

かき氷と氷室

平安時代は現世の気候と近く、随分暑い時代であった。

故に単袴(ひとえばかま)、現世で申すところのしーするーの衣が流行ったり、風が吹き抜ける寝殿造の建物が主流であったりと暑さ対策が考えられた時代でもあった。

平安から続く庭園文化も、池の水で空気を冷やす意図があったとも考えられておる。

そんな時代背景もあって考えられたのがかき氷である。

じゃが無論、現世のように氷を保管や製氷はできんかった。

故に冬場に出来た氷を山奥の気温が低いところに保管しておったのじゃ!

これが氷室と呼ばれしものじゃな!

氷室の歴史は実に古く、300年頃に仁徳天皇が氷室を訪れた記録が残っておる。

この時訪れたとされる平城の氷室が元となった氷室神社があることや、氷室を管理する役職があったことから氷室が重要なものであったことがわかるわな!

因みにこの氷室神社、手水(ちょうず)に飾られる花が氷に閉じ込められておったり、氷みくじなるものがあって人気があるようじゃ。

冬に氷を切り出し、おがくずや藁(わら)で断熱をして氷室に納め、必要な時に取り出して用いるのじゃが、いくら暗所にあるとはいえ、夏を迎える頃には半分ほどの大きさとなっておる。

更にそれを運ばねばならんからな、実際に氷を口にできたのは帝や一部の公家のみで、到底民が口にできるものではなかったわけじゃ。

その後も氷室は公家や大名に重宝され、幾つもの氷室が作られていった。

そして、戦国・江戸期において氷室といえば、我らが前田家である!

前田家が治める北陸はその氷室に適した気候で、

金沢の程近くにある倉谷の氷室は儂が用いた氷室である。

そして、江戸時代においては江戸幕府に氷を献上する役割を担っておったのじゃ!

毎年1月に氷室に氷を納め、6月1日に氷室を開いて江戸幕府に届けておったようじゃ。

金沢から江戸までは480kmあるでな、普段ならば13日ほどかけて進む道のりであるが、そんなに時間をかけては氷がなくなってしまうでな、

精鋭の飛脚が4日で江戸まで走り抜いたと伝わっておる。

江戸時代が終わり、冷蔵庫や冷凍庫が発明されると氷室はその役目を終え、かつての氷室はほとんど現存しておらんのじゃが、石川県ではこの氷室の文化を後の世にも伝えようと氷室開きが湯桶温泉にて毎年6月30日に行われておるそうじゃ!

五稜郭が生んだ氷菓子

現世では当たり前となったかき氷やあいすくりーむなる甘味。

これが日ノ本に広まったのにはとある城が大きく関わっておるのじゃ!!

その城とは、星形要塞で知られる五稜郭である!!

かき氷もあいすくりーむも共にこの五稜郭が発祥と言っても過言ではないのじゃ!

江戸時代が終わり冷蔵庫が伝わった頃は、まだ製氷の技術は発達しておらず、保冷の性能を高めたものが主流であった。

要は高性能の氷室のようなものであったわけじゃ。

しかも氷は異国から仕入れねばならんくてな、えらい値がはったわけじゃ。

そんな中で日ノ本でも天然の氷を作らねばならぬと目をつけられたのが五稜郭であった!

北海道にある五稜郭はその気温の低さに加えて、港に近く、日ノ本各地に氷を運ぶのに適しておったわけじゃな。

大量に作れる上に運びやすい故に値を抑えることができてな、これまでは高級食材であった氷が民にも届くようになった!

そこで起きたのが“かき氷ぶーむ”じゃな!!

五稜郭で作られた氷は「五稜郭氷」、あるいは「函館氷」の名で親しまれ、製氷技術が発達する昭和の時代まで続けられたようじゃ!

因みに、この氷作りを始めたのは三河出身の中川嘉兵衛殿。

中川嘉兵衛殿が函館氷のために作った「横浜氷会社」は現世において冷凍食品で著名なニチレイ殿の前身である。

して、五稜郭といえば江戸時代最後の戦、戊辰戦争の最後の決戦地であるわな。

この戦では幾人かのフランス軍の士官たちが旧幕府軍と共に五稜郭に籠り新政府軍と戦ったのじゃが、その折に旧幕府軍として五稜郭におった元尾張藩士・信大蔵殿がフランス人から製法を学び、終戦後に売り出したのが“そふとくりいむ”だそうじゃ!!

大蔵殿が開いた「函館屋」により“そふとくりいむ”も日ノ本に広まり、現世においてはかき氷と共に夏に欠かせぬ甘味となっておるわな!

終いに

此度の戦国がたりは如何であったか!!

暑い現世の中でも本年は特に暑いわな。

播州・神戸にある氷室では暑さに耐えきれず、夏まで氷がもたなかったことが話題になっておった。

普段ならば朝から夕刻まで名古屋城に出陣しておる我ら名古屋おもてなし武将隊も、皆の熱中症対策の為、8/9〜8/17は夕刻から夜にかけての出陣となる。

共に暑き夏を乗り越えるべく励んで参ろうではないか。

これよりもこの戦国がたりにて歴史のおもしろき話を届けて参るで楽しみに待っておるが良い!

また会おう、さらばじゃ!!

文・撮影=前田利家(名古屋おもてなし武将隊)

編集部のおすすめ
noimage
東京都内でおすすめのスーパー銭湯&日帰り温泉25選
都内に点在するスーパー銭湯&日帰り温泉。ちょっとした旅行気分が味わえたり、仕事帰りに入浴できたりと、気軽に利用できるのも人気の秘訣だろう。のんびりと温泉に浸かれる施設から、機能浴満載や岩盤浴充実の最新施設、リゾート気分を楽しめる施設など、自分好みのスーパー銭湯&日帰り温泉を探そう。
noimage
北千住のおすすめランチ18店。定食にラーメン、焼き肉、中華、エスニックまで、コスパ抜群な店もおしゃれな店も網羅してご紹介!
にぎやかな駅前から少し離れると下町風情があふれる北千住。大学のキャンパスも立ち並び、老若男女幅広い人々が行き来する。昔ながらの商店街には新旧店舗が混在、多様な文化に触れることもできる。そんな北千住でオリジナリティーあふれるランチをご紹介!
川越のおすすめ食べ歩きグルメ11選!うなぎ、芋スイーツ、B級グルメ。ご当地名物をいっぱい味わおう
神保町の絶品ランチ18選。洋食に町中華、ボリューム満点の定食に感動必至!
都内のおすすめモーニング22店。おいしい朝ごはんをしっかり食べて元気スイッチをON!
前田利家
達人
名古屋おもてなし武将隊
名古屋おもてなし武将隊が一雄。
名古屋の良き所と戦国文化を世界に広めるため日々活動中。
2023年の大河ドラマ『どうする家康』をきっかけに、戦国時代の小話や、戦国ゆかりの史跡を紹介している。
令和の北陸大返し【後編】~長良川から利家の妻・まつ生誕の地、そして名古屋城へ、五日間の旅路踏破じゃ!~
令和の北陸大返し【後編】~長良川から利家の妻・まつ生誕の地、そして名古屋城へ、五日間の旅路踏破じゃ!~
べらぼうに面白い! 尾張の江戸時代史。御三家の一角・尾張徳川家が名古屋にもたらしたものとは
べらぼうに面白い! 尾張の江戸時代史。御三家の一角・尾張徳川家が名古屋にもたらしたものとは
前田利家 戦国がたり
前田利家 戦国がたり
名古屋おもてなし武将隊が一雄、前田利家が戦国時代を語る!戦国時代の文化や大河ドラマの時代背景、そして戦国から現代に続く史跡名跡についてご案内。
この記事をシェア
おすすめ連載
sengoku_heroC
24-12-水と歩く-670×420
670×420
1209-24-12-住みたい街の隣も住みよい街だ-670×420-3
新着記事
noimage
シドニー発『Deus Ex Machina Harajuku』でアサイボウルと抹茶ゼリーを味わう〜黒猫スイーツ散歩 原宿表参道編29〜
カフェ・スイーツ・パンケーキのお店を年間約1000店以上ぶーらぶらしているミスター黒猫です。特にパンケーキは日本一実食していると自負している黒猫が、気になる街や好きな街を散歩しておすすめのお店を紹介していきます。今回は、そんな黒猫スイーツ散歩の原宿表参道編第29弾です。
noimage
佐野史郎と乱歩と池袋。「乱歩の小説には、自分の原風景が出てくるんです」
小学生のときに、『電人M』を読んで以来、佐野史郎さんは江戸川乱歩の魅力にとりつかれている。旧江戸川乱歩邸から鬼子母神、小泉八雲の墓がある雑司ケ谷霊園まで歩き、幻想怪奇の作品世界の魅力を聞いた。
noimage
新潟県寺泊温泉『北新館』。一人3役の女将が作る、なごみのおもてなし料理を
日本海に面した港町、新潟県寺泊。2種の源泉をもつ寺泊温泉『北新館』の女将が「これまでの旅館料理から脱却しよう」とアートなひと皿に思いを込める。
noimage
【手塚理美のガチロケハン】浅草観音裏~念願のおにぎり屋、そして偶然見つけた酒場で乾杯!?
俳優・手塚理美がスマホを手に、『散歩の達人』的に気になるエリアをガチ(=本気)でロケハン。今回は【浅草観音裏】を月刊『散歩の達人』編集長・H岩と歩きます。はたして釣果は今後の編集内容に生きるのか!?
noimage
取材帰りの日高屋で「一人で生きられそう」と実感した【東京チェン飯diary】
「チェン飯(=チェーン店のごはん)」を切り口として、40代バツイチフリーライターの「私」(吉玉サキ)のリアルな東京での日常を描く「東京チェン飯diary」。第1回は関東のみで展開している中華チェーンの「日高屋」です。
おすすめするスポットやお店のメニューなど、みんなの「こりゃいいぜ!」を絶賛募集中です!! さんたつ公式サポーター登録はこちら
募集中のお題
残り3日
愛してやまないおやつ
残り61日
冬に飲みたいあったかドリンク
残り61日
マイ御利益スポット
残り3日
おすすめ散歩グッズ
PAGE TOP トップへ PAGE TOP 目次へ