ジョージ・マーティンが絶賛した中後期サウンドは必聴
そんな実力者であるパウロさんが鶴見でこの店をオープンさせたのは90年のこと。「せっかく自分のお店を作るのだから既存のビートルズ系のライブハウスとは異なる、自分なりのビートルズ愛とロック色を出したお店にしたかった」というように、同店のこだわりは、ライブハウスに据え置きのビンテージ・アンプと出演ミュージシャンが使用する楽器に表われている。ヘフナー500-1、ヘフナーラップズティールのオリジナルなど、ここでしか揃わない貴重な楽器が拝めることも同店の人気の理由だ。
そんなパウロさんのこだわりとキャラクターは多くのビートルズ・ファンに支持され、今では『Rubber Soul』出身のビートルズ・バンドやプレイヤーが各所で活躍するまでになっている。パウロさんの演奏が観られるビートルースのライブやビートルズ・セッション会、ビートルズ・サミットなど、毎月ビートルズ関連のイベントが目白押しだが、最近はフリーマイク&セッションも人気だとか。
「ビートルズのすごいところは歌えない人でも歌えそうだと思わせてしまうところ。簡単にそうに見えて実はすごく難しい。そこが魅力なんでしょうね。でも回を重ねるうちにうまくなっていく人もいます。その光景を見ていて思うのは、ビートルズはみんなのものになっているなってこと」
2020年に30周年を迎え、多くの伝説的ライブが繰り広げられてきたこの店。なかでもパウロさんの印象に残っているのが、2003年に行ったデヴィッド・ピールの公演だという。デヴィッド・ピールとは、70年代前半にジョンとヨーコがニューヨークに移住した際に親しくなったストリート・ミュージシャン。アップルから『ローマ法王とマリファナ』という珍盤を出したことでも知られる彼を招いてライブを行い、パウロさん自らがベースを弾いたのだ。そんなエピソードにも、この店のディープなビートルズ愛が表われている。
取材・文=竹部吉晃 撮影=小野広幸