我が故郷を巡る「犬千代ルート」
ちゅうことで儂(わし)が此度やってきたのは、名古屋市中川区にあるあおなみ線“荒子”駅前、写っておるのは儂と妻のまつの像じゃ!
そう、荒子の地は儂、前田利家が生まれ育った場所である。
荒子駅へは名古屋駅からあおなみ線で6分と我が故郷は名古屋の中心地からも程近く、足を運びやすい。
さんたつにて戦国がたりを初めて丸2年経つが一度も紹介した事がなかったでな、年の節目に案内いたそうと思った次第である。
儂が育った荒子のある中川区は、儂の足跡や縁ある地を大切に保全し、さらにそれを皆が巡りやすいように道を整えてくれておる。
その名も「犬千代ルート」である!
我が幼名から取った良き名であるわな。
地面に埋まっておるこの案内板を辿って進めば、儂ゆかりの地を網羅する事ができるのじゃ。
あおなみ線の荒子駅から行軍して犬千代ルートの終点・近鉄の伏屋駅まで約6.6km、おおよそ一時間半ほどで少し体を動かしたい者に丁度良い塩梅であるぞ!
令和7年の3月までは犬千代ルートを巡りながら謎解き遊戯「ナッピーと不思議な巻物」なる催しが行われておる。
参陣無料であるが、見事謎を解き明かした暁には中川区名物の甘味や、台湾まぜそばやきしめんといった名古屋飯の割引券を手にいれる事ができるで、奮って挑戦するがよい。
謎解きに必要な冊子は中川区役所などの施設や、区内の飲食店に置いてあるぞ!
それでは改めこの犬千代ルートを辿りながら、我が故郷の観光名所を紹介してまいろう。
荒子観音寺へいざ参る!
まずやってきたのは尾張四観音が一つにして、前田家の菩提寺である荒子観音である!
この本尊は近年に建て替えられたものであるが、かつてはわしが信長様に従い、この荒子から越前へと移っていく折に再建したものが元となっておる。
荒子観音は円空仏でも有名な場所。鉈彫りで独特の趣をもつ円空仏は全国で5000体以上見つかっておるのじゃが、そのうち1200体以上がこの荒子観音に収められておる。
山門にある円空作の仁王像は、他では見られぬ趣で人気があるのじゃ。
そして、忘れてはならんのが多宝塔じゃ。
多宝塔が建てられたのは天文5年(1536)で儂と同じ世代の建物で、名古屋市最古の建造物であるぞ。
戦国の世で儂が見ておった建物を皆も見る事が叶うわけじゃな。
冨士権現天満社である!
次なる冨士権現天満社は、かつての荒子城があった地である。
我が父・前田利昌様が治めておられたこの荒子城にて儂も生を受けた。
すなわち前田利家生誕の地である。
荒子城は一重の堀に囲まれた小さな城で、儂も信長様の命で前田家の家督を継いだ折には荒子城主を務めたこともある。
この辺りは少しばかり道に迷いやすいで、足元の案内札を確認しながら進むのじゃ!
犬千代ルートを歩いておると、わしを描いた金色の郵便受けポストなるものや、我らが消防局と共闘し火事への注意を促す掛け軸を見かけたわな。
これは今だけの楽しみ方である。
荒子城をあとにして20分ほど歩くと我が生涯を描いた利家ロードが見えてくる。
ここでは我が初陣の萱津の戦いを始め、我が生涯の重要な転換点の解説が記してある。
その後も宝珠院や龍潭寺など数多の寺社仏閣をめぐり、庄内川が見えたら犬千代ルートはもう間も無く終いである!
橋の上からは良い眺めである!!
中川区はこの庄内川を始め、中川運河や堀川など大きな川がいくつもあるのが特徴の一つじゃな!
前田速念寺へ!
ということで此度最後に紹介致すのは前田速念寺である!
美しい紅葉が出迎えてくれたわ!
この速念寺はかつて前田城があった場所じゃ。
前田城は我ら荒子前田家の本家筋にあたる家。前田城におった前田家は我ら荒子前田家が北陸に移った後もこの地を治め続けておった。
その後に小牧長久手の戦いで秀吉方に味方したものの、徳川殿からの猛攻撃を前に攻め落とされ前田家の本家は武家としては滅びることとなった。
じゃが、前田城は「前田家発祥の地」として我等にとっては大切な場所であったために、近くに住まう民たちが上手く徳川家の目を掻い潜って綺麗に保ってくれたようじゃ。
現世においては儂の長烏帽子形兜(ながえぼしなりかぶと)を模した良き作りの本尊が出迎えてくれるわな。
ここもわしがかつて寄進した阿弥陀如来尊像があるで見ていくのを忘れるでないぞ!
して、此度の探訪では荒子駅前にある甘味処『FIRENZE(フィレンツェ)』殿に立ち寄った。
この店は儂が率いた荒子衆を文字った「あらこシュー」なる甘味が看板である。
これは先に紹介致した謎解き遊戯「ナッピーと不思議な巻物」の初級を解き明かした褒美としてもいただけるぞ!
故にわしも喰らおうかと思うたのじゃが、売り切れておったで代わりに荒子パイなる甘味をいただいたわな。
さて、此度で本年の戦国がたりは最後となる。
皆が好きだった記事、気に入った話はあったかのう。
来年も皆におもしろき話が届けられるように励んで参るで、これからも楽しみにしておるが良い!
それでは皆の衆また会おう。
良き年を迎えるが良いぞ!
取材・文・撮影=前田利家(名古屋おもてなし武将隊)