中華とワインを楽しめる大人の雰囲気漂う店
店内に入ると左右にカウンター席があり、座面の高いハイチェアが並ぶ様子は、バーそのものだ。店の名前は、『中華バル麻辣チャオ(ちゅうかバル マーラーチャオ)』。店主の水野大輔さんは20代後半で独立。独立以前は、横浜中華街のお店で働いたり、バーテンダーとしてサービスをしたりと、長く飲食業界に身を置いている。
国分寺で飲食店を開いてからはもう20年ほど。ワインバーや中国料理のお店以外にもフランス料理、イタリア料理、オーセンティックバーなど一時期は複数の店舗を展開していた。
「海外の食文化を少しずつでも広めたい」。そう考えて、“原木”と呼ばれる生ハムの塊やトリュフ、フランス産のチーズなど、国分寺では当時なじみのなかった高級食材も取り入れていたほか、ワインも高いものから手頃なものまで幅広く揃えていた。コロナ禍以前は「高級なワインがある店」として知られ、界隈の店からワインを持ってきてほしいと頼まれて出前に行くなんてこともあったのだとか。
多店舗展開していた水野さんだが、現在はマダムの水野絢華(あやか)さんと2人で『中華バル麻辣チャオ』のみを経営している。同じ名前の店を2009~2011年に国分寺北口大学通りで営業していたのだが、当時水野さんが営むお店の中ではカジュアルな価格帯だった。高校生にも人気を博していたが、他の業態に注力するために閉店。事業を縮小したのを機会に2020年に改めて今の場所でリスタートした。
多店舗展開を終了して、改めて中華のお店を開いた理由を「若いころ経験して私自身が好きですし、やはり中華は間口が広いと思うんです。初めての人も入りやすいし、1週間に何度か食べにくる人もいますね」と水野さんは話してくれた。常連客の中には近隣のオフィスや学校に勤める人など、20年来の顔なじみも少なくないそうだ。
とっておきの味!重慶小麺(じゅうけいしょうめん)
お店では文字通り看板メニューとして担々麺を掲げているが、メニューに目を向けると実にたくさんの麺類が並んでいた。ランチタイムの麺だけでも、汁ありと汁なしなど担々麵4種類のほか、中には初めて見る麺料理の名前も並ぶ。
「中華料理は、麺類だけでも本当に種類がたくさんあります。この店の設備と作り手1人という制限はありますが、日本人はほぼ食べたことないような地方の麺料理を作ることも多いんですよ」
海外の食文化を国分寺で広めてきた水野さんが、中国出身の人にも喜んでもらえるメニューだと勧めてくれたのが重慶小麺(じゅうけいしょうめん)だ。
「重慶は中国で最も人口が多い都市で、その町の名前がついたシンプルな麺です」
重慶はかつて四川省の一部だった都市で、四川料理同様、辛い料理が名物だ。重慶小麺も自家製ラー油入り。「おっ?」と思わず声を上げるほど丼の表面は赤い。とろみをつけた挽き肉、四川名産のヤーツァイ(芽菜)とザーサイの漬物を混ぜたもの、そして青みとして枝豆と香菜がトッピングされている。
鶏ガラをメインにとった中華の基本スープ・清湯と、スープに加えた黒酢の酸味、トッピングのヤーツァイとザーサイから出た旨味が組み合わさって、スープはスッキリ。ラー油の辛味もキリッとしていて食べやすい。花椒、ラー油の唐辛子からくる香ばしさもいい。
刻まれた2種類の漬物はザクザク、枝豆はプリッとしていて、食感のバラエティが楽しい。ツルッとした麺を食べ切った後、スープを改めて口に運ぶと、強く感じるのは甘みだった。
「自家製ラー油を作るときに唐辛子が焦げて沈むのですが、その部分も重慶小麺に使っています。唐辛子は辛いだけでなく甘みがあるので、黒酢とも合わさった甘みがあるのだと思います」と水野さん。
自家製ラー油は澄んだ部分だけを使うお店もあるが、『中華バル麻辣チャオ』では唐辛子の香ばしさや甘みも生かしている。
夜も麺類あり。ワインと前菜の組み合わせも気になる~ぅ
昼間は麺類が中心、夜もチャージがないので麺だけを食べに来る人もいれば、ワインと中華風のおつまみという組み合わせで楽しむ人や、メイン料理にちょっといいワインを合わせる人など利用スタイルはそれぞれ。
おつまみのラインアップも青山椒カシューナッツとかピータンのゴママヨネーズソースとか、ちょっとつまんでみたくなるものが低価格で用意されている。ちなみにアラカルトは一皿400円から、ワインはグラスで900円から。ワイン1杯とちょっとおつまみをと思っていたら、ついついもう1杯となりそうだ。
なお重慶小麺はランチでもディナーでも食べられる。ただ、もうすでにお酒を飲んできた人が2軒目としての利用するのは、閉店時間が早いこともあって遠慮してもらっているのだとか。
国分寺で20年もの間、飲食店を開いてきた水野さん。料理の東西を問わず、本場の味を国分寺の人たちに届けて喜んでもらいたいという姿勢が伺える。重慶小麺から、『中華バル麻辣チャオ』のこだわりを感じてみよう。
取材・撮影・文=野崎さおり