視覚的に涼しさを感じられないだろうかと、氷屋さんを見ていく

とはいえ、この暑さは何とかしたい。かき氷を食べることはできなくとも、涼しげな氷まわりのデザインを眺めることで、視覚的に涼しさを感じることはできないだろうか。

まずは氷屋さんを見ていきたい。昔に比べて街中の氷屋さんの数は減ったように感じるが、それでも古くから営業している氷屋さんは各地に存在する。

年季の入った看板。配色がしゃれている(下馬)。
年季の入った看板。配色がしゃれている(下馬)。
友人Mさん撮影の、神谷町の氷屋さん。桜印が渋い。
友人Mさん撮影の、神谷町の氷屋さん。桜印が渋い。
路地を覗(のぞ)くと見つかる控え目な看板(府中)。
路地を覗(のぞ)くと見つかる控え目な看板(府中)。

こうした氷屋さんでは、夏場にかき氷を提供する店も多く、近所の人たちの夏の楽しみにもなっている。

夏にかき氷を販売する下北沢の氷屋さん。ペンギンや氷という涼しさを感じさせる要素はあれど、真っ赤なデザインに熱量が感じられる。
夏にかき氷を販売する下北沢の氷屋さん。ペンギンや氷という涼しさを感じさせる要素はあれど、真っ赤なデザインに熱量が感じられる。

氷屋さんのデザインの中で、特に涼しさを感じられるのがドライアイスの看板ではないだろうか。字体からしてすでに冷たそうだ。

スッとした硬質な字体が、ドライアイスの冷たさを感じさせる(小平)。
スッとした硬質な字体が、ドライアイスの冷たさを感じさせる(小平)。
小平の氷屋さんの字体とほぼ同じ「ドライアイス」(岐阜県大垣)。
小平の氷屋さんの字体とほぼ同じ「ドライアイス」(岐阜県大垣)。

こうした看板にはシロクマやペンギンなどの寒冷地キャラクターがあしらわれていることも多く、涼しさの演出に一役買っている。

ドライアイスを運ぶシロクマがかわいい。スッとした字体は、「ニットーのドライアイス」のロゴなのだろうか(神田)。
ドライアイスを運ぶシロクマがかわいい。スッとした字体は、「ニットーのドライアイス」のロゴなのだろうか(神田)。
80年代っぽいペンギンが印象的(千葉)。
80年代っぽいペンギンが印象的(千葉)。

涼しいペンギンのキャラは、街中を走る冷凍車にも見ることができる。

チルド物流を主とするムロオのトラック。このペンギンは「ブルペンくん」という名前だそう(岐阜県関ケ原)。
チルド物流を主とするムロオのトラック。このペンギンは「ブルペンくん」という名前だそう(岐阜県関ケ原)。

ペンギンはいなくとも、炎天下で信号待ちなどをしている時、目の前を涼しいデザインの冷凍車が走り抜けていくと、何となくうれしい気持ちになるものだ。

以前、「かわいいトラック」のコラムでも取り上げた五十嵐冷蔵のトラック。積もった雪が涼しそう(桜上水)。
以前、「かわいいトラック」のコラムでも取り上げた五十嵐冷蔵のトラック。積もった雪が涼しそう(桜上水)。
ある日、友人のMさんが「ミニストップのトラックがかわいくて、写真に撮りたいのだけれど、なかなかチャンスがない」と言った。私はそれまで、「トラックがかわいい」という気持ちをついぞ抱いたことがなかったので、その言葉に少なからず戸惑った。Mさんが言うには、ミニストップのトラックは、ピンク色の背景にソフトクリームが車体に描かれていて、なんともかわいいデザインなのだという。
こちらは氷屋さんのトラック。黒地というのは珍しい気がする(渋谷)。
こちらは氷屋さんのトラック。黒地というのは珍しい気がする(渋谷)。

アイスクリーム屋さんのデザインはどうだろうか

一方、同じく冷たい商品を扱う街中のアイスクリーム屋さんのデザインはどうだろうか。最近ではオシャレなアイスクリーム屋さんも増えてはいるが、やはりレトロなデザインの店舗に引かれてしまう。

もうアイスクリーム屋さんとしての営業は行っていないようだが、懐かしい雰囲気の看板(渋谷)。
もうアイスクリーム屋さんとしての営業は行っていないようだが、懐かしい雰囲気の看板(渋谷)。
惜しまれつつ数年前に閉店した「銀閣寺キャンデー店」。異なるフォントで冷たいものが列挙されている、素敵なデザイン(京都)。
惜しまれつつ数年前に閉店した「銀閣寺キャンデー店」。異なるフォントで冷たいものが列挙されている、素敵なデザイン(京都)。

幼い頃、海水浴の帰りに寄ってアイスを買った駄菓子屋さんを思い出すからかもしれない。

近年、日本各地のアイスのパッケージデザインが“地元アイス”として注目されているが、アイスクリーム屋さんの看板デザインもなかなか趣深いものがある。静岡・飯塚製菓の「アイスまんじゅう」看板は、シロクマや氷山があしらわれ、先に挙げた氷屋さんにも見られた涼しさが演出されている。

シロクマと氷山、これ以上涼しさを感じさせるデザインがあろうか(静岡)。
シロクマと氷山、これ以上涼しさを感じさせるデザインがあろうか(静岡)。

しかし、多くのアイスクリーム屋さんのデザインでは、「涼しさ」というより「かわいらしさ」が優先されている気がする。つまり、アイスクリーム屋さんの看板を見ただけでは、ひとは涼しい気持ちにはなりにくいということだ。

ジェラートの写真と文字だけなのだが、何となくレトロさを感じさせるのは色遣いのなせる業か(山梨県清里)。
ジェラートの写真と文字だけなのだが、何となくレトロさを感じさせるのは色遣いのなせる業か(山梨県清里)。
ZOZOマリンスタジアム内の看板。シンプルながらかわいい(幕張)。
ZOZOマリンスタジアム内の看板。シンプルながらかわいい(幕張)。
もう営業していないお店のようだが、1980年代的なファンシーさにあふれている(小田原)。
もう営業していないお店のようだが、1980年代的なファンシーさにあふれている(小田原)。
アイスクリーム好きには有名な神谷町の『SOWA』。近頃涼やかな外観の新店舗になったが、こちらは移転前の仮店舗のかわいい看板(友人Mさん撮影)。
アイスクリーム好きには有名な神谷町の『SOWA』。近頃涼やかな外観の新店舗になったが、こちらは移転前の仮店舗のかわいい看板(友人Mさん撮影)。

実際に氷を食べる涼しさ

そう言えば、気温が上昇するにつれ、アイスクリームよりもかき氷の売り上げが伸びると聞いたことがある。ウェザーニュースの調査では、気温が34℃を超えると、アイスクリームとかき氷の需要が逆転し、かき氷が優勢になるという( https://jp.weathernews.com/news/41171 )。視覚的に涼しさを求めるのであれば、アイスクリーム屋さんより氷屋さんを見た方がいいということか。

かくして日々氷屋さんのデザインを眺めているが、やはり絵に描いた餅、実際に氷を食べる涼しさにはかなわない。猛暑が過ぎ去る前におなかの調子を整えて、かき氷店めぐりをしたいと願うこの頃である。

イラスト・文・写真=オギリマサホ

歩き疲れたら、とっておきのひんやりスイーツがある店に避難しよう。上がりきった体温を冷ましてくれ、澄んだ甘みが気持ちを和ませてくれる。実力店が集中する清澄白河・門前仲町エリアなら、休憩場所にも困らない。
街の薬局の店頭には、さまざまなキャラクターがいる。以前このコラムでも取り上げたパンダのニーハオシンシン、カエルのケロちゃん、赤いウサギのピョンちゃん……。その中でも最も有名なのが、佐藤製薬のキャラクターであるオレンジの象「サトちゃん」ではないだろうか。
田無。それは西武新宿線沿線に住んでいた私にとって、各駅停車の終点としてなじみ深い地名であった。そんな田無市が、保谷市と合併して西東京市になったのは2001年のことだ。2024年になり、あれから23年が経った。かつて田無市があったことなど、もう忘れ去られてしまっているかもしれないと思っていた。ところが、先日用があって田無に赴いたところ、あちらこちらに旧田無市の痕跡が残っているではないか。私は史跡を巡るような気持ちで、旧田無市の名残を見つけることにした。