看板メニューはバランス良いスンドゥブチゲ
『ノダジ』の看板メニューは、豚肉のスンドゥブチゲ定食850円(ランチ価格)。ぐつぐつと煮込まれた熱いスープに、卵、豆腐、豚肉、ネギなどがたっぷり入っている。
一口食べると、辛さがしっかり付いていて、じんわりと汗がにじむ。しかし、辛いだけではない。スープには、出汁の奥深い味わいがあり、具材の旨味も十分に引き立っている。
このスープの秘密は、牛骨から丁寧に取った出汁にあるらしい。
「スープは最初に牛骨を茹で、骨に付いた肉や筋、
タデギとは牛脂を炒めて脂を抽出し、そこに韓国産粗挽き唐辛子を入れて作った調味料のこと。
「ただの牛骨スープに唐辛子を入れただけでは、決して辛味と甘みの調和したスープにはなりません。タデギの牛脂という甘みがあってこそ、
こうして、じっくりと手間暇をかけてスープを煮込んで作るスンドゥプチゲは、辛さと甘み、そして旨味と塩分のバランスの良さから、男女問わず人気No.1のメニューだ。
「定食にはナムルやキムチが付きます。白菜キムチは、
韓国料理をメインにした大衆居酒屋のような場所を目指して
「2023年に、雇用していた韓国人の従業員の方が突然辞めてしまって。ワンオペ営業になってから、韓国料理が苦手な人も食べられるようなメニューも出そうと思って、いろいろなメニューの開発を始めたんです」
こうしてメニューには、お好み焼きやチャーシュー丼など、店主自身が好きな料理も加わっていったという。これらのほとんどを、仕込みから一人で手作りしている野村さん。
作るのも、切り盛りするのも大変そうだが、『ノダジ』のメニューは、どれも良心的な価格。
「値段にはこだわっていますね。材料費はずっと高騰し続けているんですが、オープンしてからの9年間、価格は変え続けていません」
このように価格を変えないのは、野村さんの『ノダジ』に対する理想のためだ。
「皆さんに気軽に通ってもらえるお店でありたいんです。目指しているのは、韓国料理をメインにした大衆居酒屋のような場所。昭和の居酒屋のような安心感やレトロな空気感が理想なんです」
大変なことも多いだろうが、そんな願いを叶えるために、工夫を重ねているのだ。
人との助け合いで切り盛りしてきた『ノダジ』
25年間のサラリーマン生活を経て、飲食業に飛び込んだ野村さんは、かつて観光旅行をしたことをきっかけに、韓国を好きになり、韓国料理をメインに据えた居酒屋を作ったのだという。
お店の名前も、一緒に働いていた韓国の方から付けてもらったそう。
「ノダジっていうのは、韓国語で、思いもよらない大金が入ってくる、という意味なんです。それに僕の名前が、ノムラシンジなので、それにちょっとかけて、店名を『ノダジ』にしました」
店に来てくれるお客さんとの会話も欠かさない野村さん。「お客さんに『ごちそうさま』と言われる瞬間が、とてもうれしいですね」と笑顔で話す。
昭和の居酒屋のような温かい雰囲気を目指して、今日も野村さんは、周りの人と支え合いながら、『ノダジ』を切り盛りする。
取材・文・撮影=谷頭和希
取材・文・撮影=谷頭和希