そこはウエルカムな店だった!
百軒店は派手な電飾に囲まれているが、昭和元年創業の『名曲喫茶ライオン』や日本最古のライブハウス『B.Y.G』などが並ぶ周辺は、落ち着いた大人の雰囲気がある。
コンクリート打ちっぱなしの壁に木目を合わせたナチュラルさがありながら、店の奥にほんのりピンクのネオンが灯るネオ居酒屋『KAMERA』。入り口が大きく開け放たれウエルカムな雰囲気に惹かれて店に入った。
店に入るなり、「いらっしゃいませー」と元気に迎えてくれたのは、スタッフのせいやさん。亀良と書いて“カメラ”と読む店名の由来から聞いてみた。
「オーナーの亀谷さんと目良さんの名前をもじって『KAMERA』なんですよ」。ほほ〜、すごくわかりやすい理由だったんですね。
オーナー・亀谷さんはビブグルマンを獲得したこともあるビストロのオーナーシェフで、『KAMERA』の料理の監修を担当している。
「ウチは外の看板にもある通り、焼売とウーロン茶ハイがメインです。焼売は中華なんですけど、さまざまなメニューにフレンチの技法を取り入れているんですよ」とせいやさん。
焼売は地方のイベントで出店したり、百軒店の駐車場を利用して開催するブロックパーティーでも販売することがある。焼売に次ぎ、台湾風唐揚げ(フライドジーパイ)や自家製の豆鼓(トウチ)パウダーを使った坦々もやしも人気だ。
フレンチの技法を応用したジューシーな焼売
無添加で手作りする焼売は全5種類あり、その中から山形豚の熟成焼売2個500円と仔羊と黒米の熟成焼売2個700円を、そしてドリンクはウーロン茶ハイ 台湾四季春650円をオーダーした。
「焼売の肉だねには豚肩ひき肉を使用しています。数種類のスパイスや調味料を入れて熟成させるという、フレンチでソーセージを作るときの技法を応用しています。肉の旨味とスパイスの効果ですごく味に奥行きが出るんですよ」
豚の熟成焼売にのっているトマト黒酢は、トマトを焦げる寸前まで煮詰め、さらに黒酢を合わせた自家製調味料。肉だねと合わさりどんな味になるのか楽しみだ。
仔羊の熟成焼売は、炒めて最大限に旨味を引き出したタマネギに、仔羊のひき肉、炊いた黒米を混ぜた肉だねをさらに黒米をまぶして包んでいる。「実はボクがいちばん好きな焼売なんです」とせいやさん。おお、ひとつずつ凝っていますね。
焼売はオーダーが入ってから蒸しあげる。蒸すところを見せてもらった。
焼売を蒸している間、外国人のお客さんがフラッと入ってきてせいやさんが英語で応対。壁にかかっている春画のイラストに感激しているようだった。そんなやりとりを見ていたら、あっという間にオーダーが揃った。たまたませいろの前の席を確保できたので、ここでいただきまーす。
目の前でせいろから湯気が立つのを見ながら飲める特等席をゲットできてうれしい。まずはクイッとウーロン茶ハイをば。お酒が苦手な人はウーロン茶だけ(お酒抜き)もあるのでぜひお試しを。
そして、山形豚の熟成焼売にも着手。1個をひとくちに食べたら口からはみ出しそうな大きめサイズだ。プリッとしてジューシーな肉だねにトマトの旨味が凝縮された甘酸っぱいトマト黒酢が相性抜群。フレッシュなトマトのみずみずしさが豚の脂を中和してくれて、思ったよりあっさり。お、シャクシャクとした食感はクワイだ!
続いて仔羊の黒米熟成焼売。こちらはタレにもこだわっている。
「アリッサっていう唐辛子のペーストとナンプラー、スパイスなどを入れた自家製のタレが合います。これはスパイシーなのでお好みでどうぞ。そのまま食べてもおいしいですよ」
まずはタレをつけずに食べてみると、黒米に仔羊の脂や旨味がよく染み込んでいる! スパイスが仔羊の旨味を引き立て、さらに餅米の甘みや香りが加わって、噛みしめるごとに魅惑の世界へ。目をつむれば、草原で草を食む羊ちゃんたちが浮かんでくるわぁ。すかさず、ウーロン茶ハイをひとくちグビリ。ひゃ〜、熟成焼売とウーロン茶ハイって疲れた身体に染み渡りますね。
茶藝師が選定する上質な茶葉。ひと味違うウーロン茶ハイ
それにしてもウーロン茶のグレードが高くて驚いた。それもそのはず、この店のウーロン茶は専門の茶藝師がセレクトした茶葉を店内で煮出しているのだ。台湾四季春(たいわんしきはる)のほかにも鳳凰単叢(ほうおうたんそう)、岩茶武夷水仙(がんちゃぶいすいせん)があり、それぞれのフレーバーが楽しめる。
「3種のウーロン茶のほかにウーロン茶の茶葉をミックスしたKAMERAオリジナルブレンドハイもあります」とせいやさん。
ウーロン茶以外にもジャスミン茶やライチ紅茶、金木犀緑茶などが用意され、それぞれに個性があるから飽きない。
焼売は見た目以上にボリュームがあったけど、ウーロン茶ハイを飲みながらだとあっさり食べられた。おかげで、まだおなかに余裕がある。シメに富士鶏とシジミ蕎麦、仕上げにデザートのお茶パンナコッタを食べて帰るのもいいかもね。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢