挑戦するのは、豊富な日本酒とそれによく合うお惣菜が自慢の『笹吟』のメニュー・胡麻酢和え。実はこれ、料理長の高柳さんに教わり、note「さんたつアカデミア」の記事として配信したものなんです。
このレシピを参考に、「多少のアレンジOK」「具は自由」というルールで、4人が各々自宅で調理&実食。レポートを提出してもらいました。
日本酒一筋の辛党編集部員が、晩酌用の刺し身を携えて挑む
写真・文=白瀧綾夏
まずは「地」を作る。本当はきっちり計るべきなんだろうけど、まぁ家庭で作るものだし。始めにすりごまをだいたい20g。練りごまは100g入りのパックだから、だいたい半分入れれば50gになるだろう。こんな感じでざっくり進めていく。
作り始めは粘度が高い。酢を入れる段階で一気に緩くなって「地」っぽくなる。
具材は冷蔵庫に残っていたもの。そして晩酌用に買っていた鯛・中トロの刺し身。この辺を適当に組み合わせた。
これが完成品。写真上段、左から鯛、キュウリとカニカマ、リンゴとチキン。下段左からセロリとチキン、キュウリとチキン、トロを和えて白米に乗せたもの。
どれも美味しかったが、意外だったのは中トロの刺し身。強めの脂と、トロ特有の香りが「地」の風味と非常にマッチしていて白米に合うのだ。出汁をかけてお茶漬け風にして食べても良かったな。次はそうしよう。
お腹に旨味を貯めこんでいる副編集長は、これさえあれば家飲み一皿めが名店化する予感
写真・文=星野洋一郎
材料さえそろえてしまえばあら簡単。呆気にとられるくらい簡単にできてしまった。書いてある順番通りにゆっくり混ぜていくだけなのだ。ハイライトは醤油を投入した瞬間。それまでただただゴマの匂いがするだけのタネが、一瞬のうちにヨダレ必垂の香りを放ち始める。この感動は作った者だけの特権だ。
さて、何を和えようか。さんざん迷ったあげく。インゲン、オクラ、カニカマでいくことにした。カニカマなら簡単だし、色合いもよい。そして、何より安い。微かにカニカマがチープ感を出してしまうことを懸念していたが、これは杞憂。名店の「地」の威力恐るべしである。
思いつきで、ただ豆腐に載せてみる……絶品。群馬県人の血が騒いでこんにゃくを和えてみる……これまたイケル。この恐るべきポテンシャル、皆さんにも是非体験していただきたい。
さて、日本酒あけてこよ!
自称ズボラ料理研究家の編集部員は、自分用レシピと同じ具材で徹底的に比較
写真・文=中村こより
用意した材料はこちら。常に我が家の冷蔵庫に居座っている小松菜、にんじん、こんにゃく、しいたけという「白和えの具」四天王。普段、目分量でテキトーに作る白和えと同じ具にすることで、「地」の違いを感じてみたかったのだ。
星野副編集長は醤油を入れる瞬間がハイライトと仰るが、私はやはりゴマを擦り擦りする工程で心躍る。子供のころ母親に料理の手伝いを頼まれてすり鉢を渡されると、張り切って擦り擦りしたもんだ。
普段の白和えと同様、こんにゃくとしいたけは、だし・醤油その他もろもろで適当に煮ておく。その分、「地」に使う醤油・みりん・砂糖の分量は、気持ち遠慮気味にした。
こちらが完成品! 小松菜・にんじんの若々しい触感と、こんにゃく・しいたけが醸し出すなまめかしいほどの旨みの組み合わせは、さすが「白和えの具」四天王。しかし、普段のズボラ料理と明らかに違うのは、ゴマの香りと酢の酸味の絶妙なバランス。上品だけど遠慮しすぎずしっかりした味で、すぐにお酒が欲しくなる。
リモートワーク中に昼間っから作り始めてしまったので、飲み始めるには少々早い。でも、ひと口食べたら止まらない。まだ業務中だけど、飲んじゃおうかな……?
最後に登場するのは、おっさん編集長、武田。自称「趣味は料理」ですが、自分の好きなものしか作らないので、めちゃ偏りがあるとか。なんかわかる気がします。
JA直売所好き編集長は、鯛の代わりに鳥むね肉でどうだ?
写真・文=武田憲人
私が具に選んだのは、近所の直売所で買った竹の子を水煮したもの、知り合いからもらったグリーンアスパラガス、そしてスーパーで買ってきた鳥むね肉。なぜ鳥肉か? 実は私は鳥わさが好きなのです。あれを一度家で作って食べたいと思っていましたが、なかなかチャンスがなく今日にいたっています。ので、今回はチャンス到来というわけで値の張る鯛の刺し身の代わりにしてみたわけです。
竹の子とアスパラ、そして鳥むね肉を霜降りにします。
切り分けると中はおいしそうなピンク色! ああ、ついに念願の自宅鳥わさの日が来た。
さあ地と和えよう!
と思ったその時、
「ちょっと待ったぁ~!」
隣で餃子を焼いていた妻から物言いが入りました。
「ななな、なに?」(私)
「なにそれ、そんなの生のままで食べるんじゃないでしょうね?」(妻)
「だめなの?」
「だめに決まってるでしょう! そういうのはいいお肉屋さんで買ったお肉じゃなきゃだめなのよ」
……ちょっとWebで調べてみましたが、確かに妻の言うとおり。知らずに食べると最悪カンピロバクターの餌食になったかもしれません。ああ恐妻家でよかった。仕方がないので、もう一度お湯を煮立て中まで火を通して和えてみました。
見た目はまずまず。で、味は……うまい、とは思います。竹の子とアスパラはまったく文句ありません。ですが、鳥肉がパサパサ。当たり前ですが、鳥わさに比べるとパサついてます。「地」は結構大量に余ったので、今度戸田の人気精肉店「くまき」にでも行って、ささみを買って再トライしようということで、この日の話はおわりです。
で、これは一体なんすか?
さて、次の日。冷蔵庫を開けたら、ちょっと前にJA直売所で買ったタラの芽を見つけました。色はきれいな緑色ですが、さっさと食べないと傷みが出そうです(実際一部傷んでいました)。
タラの芽を湯がいてオリーブオイルで和えるパスタは我が家の春の定番メニュー。だからパスタにすればいいいかと思っていたら、再び妻が物言いをつけてきました。
「これ、タラの芽と違うんじゃない?」(妻)
「ええ、違うの?」(私)
「だってハカマがないよ」
……そういわれてみればタラの芽特有のハカマが見当たりません。直売所ではビニール袋に入っているだけで野菜名の表記はありませんでした。じゃあ、これはなんなのか? 写真を撮ってGoogleで調べてみましたが、「菜の花」(絶対違うだろ)「龍髭菜」(中国野菜らしいがこれも多分違う)と要領を得ない答が返ってくるばかり。なんだかよくわかりませんが、パスタはやめて、お浸しにでもしようということに。その時私は思い出したのです。昨日の「地」が余っていたではないかと。もしかしたら行けるかも?と。
早速軽く湯がいて、和えてみたら……
……わりとうまい? いや、これ……すっげーうまくないすか‼
山菜のあくがいい感じで春を感じさせ食感も絶妙。妻や娘たちにも好評でした。
というわけで胡麻酢和えレシピは、この春の山菜にもよく合うと思います。ただし名前はわかりません。
なにやら多少のすったもんだはあったようですが(主に編集長)、結果的には4人とも大満足。具をアレンジしやすいところが特に楽しめるポイントかもしれません。試行を重ねて味を極めるもよし、『笹吟』を訪れてプロの味を再確認するもよし。「むッ、やはり敵わん……」ってなるのもまた一興でしょう。
それにしても、編集長宅の冷蔵庫にあった謎の山菜は一体何なのだろう。知ってる方がいたら教えてください。
構成=中村こより 写真(笹吟)=加藤熊三