立川で繊細なスペシャルティコーヒーを堪能

『PORTERS COFFEE』は、立川駅から6分ほど歩いた場所にあるスペシャルティコーヒースタンドだ。2016年から西国立エリアで同名のコーヒースタンドを約7年営業したのち、2023年に現在の柴崎町に移転オープンした。西国立の旧店舗だった場所は現在、焙煎所として稼働している。

白を基調とした店内は、たっぷりと余裕のある空間。コーヒーを待つ間はゆっくりとベンチに座れるほか、2階にはテーブル席も用意されている。コーヒースタンドだが、テイクアウトと店内利用は半々くらいの割合なのだそう。

店内の片隅には大会優勝のトロフィーが輝いている。
店内の片隅には大会優勝のトロフィーが輝いている。

オーナーの黒澤俊さんは、会社員のときにスペシャルティコーヒーに出合ったことでその魅力にのめり込み、30歳を過ぎてから全くの未経験でコーヒーの世界へと飛び込んだ。

西国立で初代『PORTERS COFFEE』を運営するなかでコツコツとハンドドリップの腕を磨き、日本スペシャルティコーヒー協会が2022年に開催した「ジャパンハンドドリップチャンピオンシップ2020(JHDC2020)」(開催はコロナ禍で2年延期)で見事優勝! さらに、立川の商工会が企画した飲食店のイベントでも受賞し、地元を中心に店の知名度を上げていった。

「西国立の時代に、地元の方にうちのお店を認知していただくきっかけが立て続けにあったことから、よりいろんな方においしいコーヒーを飲んでもらいたいという想いが強まりました。西国立のときは喫茶店寄りのお店だったので、もっとメニューを絞り、コーヒーに特化したお店をつくりたいと思い移転を決めました」と黒澤さん。

バリスタの濱中さん(写真左)と、マネージャーの髙橋さん(写真右)。コーヒーが大好きなお二人だ。
バリスタの濱中さん(写真左)と、マネージャーの髙橋さん(写真右)。コーヒーが大好きなお二人だ。

現在は、黒澤さんが全幅の信頼を寄せるメンバーにお店をまかせることも多い。カウンターでは、コーヒー好きなスタッフ陣が笑顔で出迎えてくれる。何気ない会話から日々、お客さんとの温かいコミュニケーションも生まれる。

バリスタの濱中さんは「お仕事の前や、帰り道にコーヒーを買いに立ち寄ってくださる方が多いです。コーヒーの調整によって毎日おすすめのコーヒーが変わるので、お客さんには“今日はこのコーヒーがおすすめです”とお伝えするようにしています」と話す。

地元・立川をイメージしたブレンドコーヒーなど個性際立つラインナップ

今日はどのコーヒーにしよう、と選ぶ時間も楽しい。
今日はどのコーヒーにしよう、と選ぶ時間も楽しい。

コーヒーの種類はオリジナルのブレンドをはじめ、その時々によってラインナップが変化。取材時には6種類のコーヒー豆が並んでいた。焙煎の度合いは、浅煎りをメインに中深煎りまである。ドリップコーヒーは一杯600円~(種類によって異なる)。スピーディーに飲みたい人には、種類をおまかせできるクイックコーヒー450円もおすすめだ。

ブレンド600円は、立川の街のイメージをコーヒーで表現。
ブレンド600円は、立川の街のイメージをコーヒーで表現。

「コーヒーは、透明感があってきれいな味わいを目指しています」と黒澤さん。

今回は、地元・立川をイメージしたというブレンドをいただいた。ふわっと穏やかな香りが鼻を抜け、黒澤さんの言葉通り、苦味や雑味がなくストレスフリーで飲める。飲み進めるうちにチェリーのように華やかな風味や、スパイシーさがあとからやってくる。後味もキレがいい。こうした味わいの複雑さで、昔ながらの街並みや繁華街、新しさが混在する立川の街を表現している。

今回飲んだ立川のブレンドシリーズは第一弾。今後もさまざまな角度から見た立川のイメージを表現したブレンドが登場するそう。

「コーヒーって、例えばおしゃべりしながら飲んでいると、温度が冷めてきて飲みづらくなくなるというか、自然と手が伸びなくなると思うんです。それは温度の変化で味が崩れてしまうコーヒーが多いということ。でも、きちんと丁寧に処理されたコーヒーは冷めても味が大きく崩れないんです。“気がつくと飲み終わっていた”というくらい最後までおいしく飲めるコーヒーを目指していますし、そこへのこだわりは他のお店に負けないと思っています」

また、カップに少量だけ入れるというちょっぴり変わった提供方法は、コーヒーの味わいや香りをより引き立たせるための、黒澤さんならではのこだわり。ただ、提供後はお客さんに自由に楽しんでほしいとのこと。

スペシャルティコーヒーはそれぞれの豆によって味わいにしっかりと個性が出る。飲み比べなどで、楽しみ方は無限大だ。

新しい店舗ではコーヒーの味わいにブレを出さないため、最新のオートドリップマシーンを採用している。オリジナルのレシピを記憶させることで、この店ならではの味わいが出せるとともに、スタッフとお客さんが向き合う時間が長くなることでコミュニケーションも深まる。

とはいえ全てをマシーンにまかせるわけではなく、毎朝開店前には1時間かけて一つ一つのコーヒーをテイスティング。バリスタの舌でしっかりと味わいを合わせる作業は欠かさない。こうした細部にまでわたるこだわりが、この店でしか出せない繊細な味わいを作っているのだ。

コーヒーとスイーツのマリアージュも!

取材時は、リンゴのパンナコッタ530円(写真左)とイチゴのパンナコッタ530 円(写真右)が提供されていた。
取材時は、リンゴのパンナコッタ530円(写真左)とイチゴのパンナコッタ530 円(写真右)が提供されていた。

コーヒーが中心の『PORTERS COFFEE』だが、実はスイーツメニューにもこだわりがたっぷり。なかでも注目のスイーツが、姉妹店である中野の果物専門店『農家団欒 果実店』の専属パティシエが作る、季節のパンナコッタだ。生のフルーツのフレッシュさを存分に生かしたパンナコッタは、ひと味違うおいしさ。スイーツに合うコーヒーも提案してくれるので、コーヒーとのマリアージュを楽しんでみよう。

黒澤さんは「自分が休みの日に、ふらっと行って、おいしいコーヒーを飲める場所が近所にあったら最高だなと思いました。そんなお店を作りたかったんです」と、地元の立川で店を続ける理由を話してくれた。

地元の人も、立川に行く機会が多い人も。『PORTERS COFFEE』の個性豊かなスペシャルティコーヒーが、毎日の楽しみを増やしてくれるはず!

住所:東京都立川市柴崎町2-11-22/営業時間:11:00〜18:00/定休日:水/アクセス:JR立川駅から徒歩6分

取材・文・撮影=稲垣恵美