ザ・ポリス - So Lonely(1978年)
舞台は約40年前の都営浅草線!
始まってすぐに「日本の駅!!! 日本の電車!!!」と興奮してしまう、ザ・ポリスの1978年の曲のMV。舞台は都営浅草線の車内や三田駅構内で、車両は京急1000形、京成3200形、3500形などが登場。『週刊住宅情報』『週刊文春』『とらばーゆ』などの中吊り広告を一つ一つ見ていくのも楽しい(『週刊文春』には映画『地獄の黙示録』に関する見出しがあった)。なお合間には香港の映像も挟まっており、アジアの認識が雑なところにも時代を感じる。
ビースティ・ボーイズ - Intergalactic(1998年)
新橋と新宿の街中でゲリラ撮影を敢行!?
MVも曲自体も有名なビースティ・ボーイズの楽曲。冒頭でロボットが降り立つ場所は渋谷区神山町の商店街(「八竹亭」「三浜鮨」などの店の看板が見える)。そこからメンバー3人は新宿の都庁前を猛ダッシュ。続いて駅まで走る早回しのシーンは西新橋周辺~新橋駅の模様だ。その後は新宿の西口地下広場や伊勢丹前などが多く映される。
なおゲリラ撮影だった模様で、街中の人達のポカーンとした表情も見どころ。日本ロケのコーディネートをしたMATT TAKEIさんの述懐(cdn.mastered.jp)によると、メンバー3人は都庁前で警備員に見つかって全力疾走。メンバーの1人のキング・アドロックは「殺されるかと思った」との言葉を残している。
マニック・ストリート・プリーチャーズ - Motorcycle Emptiness(1992年)
大観覧車は横浜の「コスモクロック21」
英国のバンドの1992年のシングル曲。切なく叙情的なメロディに合わせて、渋谷のセンター街や東京タワー、パチンコ屋、横浜・みなとみらいの大観覧車「コスモクロック21」などが映される。なお曲名の邦題は「享楽都市の孤独」。街にあふれる日本人の表情はほとんど映らず、ただ道を急ぎすれ違うのみだ。バブルの終焉を迎えた日本の都市の雰囲気が曲の内容にもマッチした、いいMVだ。
エラスティカ - Car Song(1995年)
近未来風の映像だが場所は思い出横丁
東京のネオン街が舞台で、監督はスパイク・ジョーンズ。映画『ブレードランナー』(1982年)のような退廃的な未来都市をイメージしての撮影だったのだろうが、日本人が見ると明らかに日本すぎて面白い。銃らしきものを持って逃げ回る緊迫のシーンの場所は、どう見ても新宿の思い出横丁で、『つるかめ食堂』の「豆を食べよう」「元気丼500円」などの看板がチラチラ見える。
マドンナ - Jump (2005年)
『博多天神』の店名が『マドンナ』に!
マドンナのアルバム『コンフェッションズ・オン・ア・ダンスフロア』収録曲。MVではノリノリで踊るマドンナと、パルクールパフォーマーが東京や横浜の街中を飛び回る映像が組み合わされる。マドンナの背後にはネオン街の看板がズラリと合成されており、「PUBエロチカセブン」「歌食の店 静香」「テレクラ鈴々ハウス」などなど静止して読み取るのが楽しい。パルクールパフォーマーの映像では、街中で映る『博多天神 渋谷南口店』などの看板の店名が、ことごとく『マドンナ』に書き換えられているのに注目。
バックストリート・ボーイズ - Bigger(2009年)
「ザ・日本」な名所や店がてんこ盛り
今やちょっと懐かしい存在となった、米国の男性アイドルグループの楽曲。新宿駅東口や浅草寺、秋葉原などが映り、メイド喫茶やカラオケでメンバーが歌を歌う場面もある。「ちょっとステレオタイプをなぞりすぎだし、撮影は半分で残り半分は観光では?」と感じる内容だ(海外アーティストの日本撮影MVには結構ありがち)。10年ほど前の映像だが、秋葉原に石丸電気があり、新宿に新宿国際劇場があるところに時代を感じる。
ウィル・アイ・アム - #thatPOWER ft. Justin Bieber (2013年)
ビッグサイトや「新宿の目」の前でダンス
こちらは2013年とグッと最近の楽曲。東京国際展示場、東京国際フォーラム、都庁前駅、「新宿の目」の前、霊友会釈迦殿の前などでダンスパフォーマンスが披露される。宗教建築と展示場、駅、街中のアートがゴチャまぜの場所のチョイスに、日本のMVとは違うセンスを感じるし、見慣れた景色がこの映像では新鮮かつカッコよく見える。なおダンスの振付を担当しているのは、須藤元気が結成した「WORLD ORDER」の元メンバー。
【おまけ】エルメート・パスコアール - Feira de Asakusa (Asakusa Market)
叩き売りの口上がジャズに変貌!
MVではないが、日本に関わる曲をおまけに一つ。この曲は、鳥、豚の鳴き声から、水を息でブクブク鳴らす音まで楽曲に取り入れるブラジルの鬼才の作品。日本のバナナの叩き売りの口上がサンプリングされ、その声がメロディになり、コードとリズムがついてジャズになっていく。1分半程度と短い曲なので、ぜひ最後まで再生を!
文=古澤誠一郎