透き通ったスープが特徴の、オールドスタイルを貫く醤油つけ麺
店内に入ると、まず左手にある券売機でメニューを選ぶ。らぁ麺 醤油900円やつけ麺 坦々(ピリ辛)980円など魅力的なメニューが並び、魅力的なメニューにどれを選ぶか迷ってしまうが、今回は1番人気のつけ麺の中から特製つけ麺 醤油1300円をいただくことにした。
『麺や ぱんだ』ではらぁ麺・つけ麺ともに麺の量を選ぶことができ、なんと並盛から大盛まで料金は一律。麺の固さ、味の濃さ、あつ盛りも対応してもらうことができ、自分好みの一杯を楽しむことができる細やかなサービスが嬉しい。
つけ麺が到着すると、にごりが無く透き通った美しいつけ汁に目を引かれる。早速、麺をスープにくぐらせていただくと醤油のキリッとした旨味が口いっぱいに広がる。今までに味わったことがな香ばしい醤油の風味は癖になる味わいで、1番人気のメニューというのは大いに納得だ。自家製の細麺は醤油つけ汁がよく絡み、つけ汁が小麦の香りと甘みをより引き立てる抜群の組み合わせ。もちもちと噛み応えの良い麺は喉越しも良く、つい次々と口へ運んでしまう。この麺が大盛まで一律料金で、たっぷりと味わうことができるのは幸せである。
メインに負けない主役級の具材たち
つけ汁、麺がおいしいのはもちろんだが『麺や ぱんだ』のつけ麺はどの具材も主役級。
特につけ汁の中にも入っているチャーシューが絶品で、肉の触感がしっかり残っていながら柔らかさも兼ね備えている、絶妙な触感が特徴。分厚く肉々しい食べ応えのあるチャーシューは、とても満足感の高い逸品。
太めでシャキシャキとした歯ごたえのメンマや絶妙な半熟具合の煮卵、それ以外のどの具材もつけ麺をよりおいしくいただくことができる主役級の味わいである。
自家製の食べるラー油で味変すると、ぴりっとした辛味が加わり、また違った味わいが楽しめる。
名店の味を受け継ぐだけでなく、よりおいしい一品を目指して
『麺や ぱんだ』は2023年6月にオープンした新しい店舗だが、実は以前、池上に店を構えていた人気店「彩華」の味を引き継いでいる。もともと「彩華」の常連であった店長の森さんが、閉店することを聞きレシピや屋号を受け継いだそう。
レシピを受け継いだものの、はじめは作ったスープが濁ってしまうなど、納得するものが仕上がらず苦労も多かった。先ほど目を引かれた美しい透き通ったスープは森さんの努力の結晶なのだと思うと、どこか胸が熱くなる。
提供している料理へのこだわりを伺ったところ、森さんは「『麺や ぱんだ』の味は基本的には受け継いだ味を変えず、しかしもっとおいしくなるようにスープの仕込みの材料を試行錯誤している」と教えてくれた。
さらに麺は森さんの出身地である北海道の小麦を使い、店内の製麺機で麺を作っている。また絶品のチャーシューは作り置きせず、毎朝6時~7時に仕込みを行っているそうだ。
森さんはこだわりについて「それだけですよ」と遠慮がちに語ってくれたが、「長く愛されるようなラーメン・つけ麺になってくれたらいいな」という言葉に、一杯に対する強いこだわりと愛情が感じられた。
親しみやすさの秘密
可愛らしい店名の『ぱんだ』の由来について訪ねたところ、「彩華」の屋号を使うこともできたが、娘さんが名付けてくれた『ぱんだ』の店名を採用したことを伺った。
さらに店頭の看板は、奥さんが描いたパンダの絵を使用しているそうだ。それだけでなく、元フレンチのオーナーシェフである義理の父が製麺を担当しており、はじめの頃はスープのアドバイスももらっていたという。どこか店内の雰囲気に温かみを感じるのは、もしかすると家族で作り上げたからこそ親しみやすさがあるからなのかもしれない。
また、きめ細かい接客も『麺や ぱんだ』のモットーだそう。
カウンターには「つけ麺スープの、温め直し、割りスープ、遠慮なく言って下さい」のコメントがあり、食事をいただいている際にも
「最後までおいしくいただいてほしいので、遠慮なく言ってくださいね」とお声かけいただいた。
温かな接客も、また来たいと思わせてくれる親しみやすさの秘密の1つだろう。
かわいしいぱんだの看板と暖簾を背に、知らぬうちに微笑みが浮かんでしまう。味も接客も大満足だ。
取材・文・撮影=青野 奈月