雷井戸の由来
昔、三島神社のあたりの原野は落雷が多く、地域の人々は雷を恐れていました。
ある日、三島神社の境内に雷が落ちた時のこと。
神主はこの雷をこらしめるため、さっと井戸に蓋をしてそこに雷を閉じ込めることに成功。
すると雷は、井戸の中から「どうか井戸から出してください」と哀願してきました。
かわいそうに思った神主は、「この地に二度と落ちない」ということを条件に雷を許してあげます。
それ以降、この地に雷が落ちることはなくなったそうです。
フィールドワーク①入谷駅から三島神社へ
台東区下谷にある三島神社を目指し、東京メトロ日比谷線・入谷駅の4番出口からスタートします。
金美館通りをJR鶯谷駅方面に進み、小野照崎神社の前を通り過ぎましょう。
台東区の西半分を占めるこの下谷は、東京・下町を構成する地域のひとつとして知られています。
歴史を遡ると、1590(天正18)年、江戸に移った徳川家康により埋め立てられるまで、この一帯はなんと沼地であったそうです。
根岸3丁目の交差点を右折し、金杉通りを直進していきます。
日本の神話や信仰における雷について調べてみたところ、昔は雷鳴を「神鳴り」と呼んでいたとされ、日本では古来から雷を神々のものとして認識していたことがわかります。
また、雷が鳴った時に唱える「くわばら、くわばら」という言葉について。
これには諸説ありますが、桑の木が雷除けの神聖な力を持つという信仰があったためだと考えられています。
金杉通りを進んでいくと、下谷の三島神社に到着しました!
フィールドワーク②雷井戸と古来からの雷について
台東区下谷の三島神社の創建は 1281(弘安4)年。
本社は愛媛県今治市の大山祇神社で、三島神社の主祭神は山の神・大山津見神(おおやまつみのかみ)です。大山祇命は天照大神の兄にあたり、日本総鎮守の神とされています。
下谷の三島神社では、鎌倉時代中期の武将・河野通有が発願して以来、代々河野家の子孫が宮司を務めているそう。
緑豊かで静かな空気が漂う境内。
本殿でお参りを済ませ、雷井戸を探してみます。
本殿のすぐそばにある雷井戸を見つけました。
三島神社の雷井戸の説明板です。
この井戸自体の発掘年代は不明とされているそう。
かなり古いもののため、雷が解放された現在も、危険防止のために蓋をされています。
直接見ることは叶いませんでしたが、井戸の中は現在も豊かに水をたたえているとされ、雷よけの井戸として信仰されています。
また雷が「落ちない」ことから、試験や売り上げ、人気や運気までも「落ちない」御利益があり、不落守(おちないまもり)や雷絵馬といったオリジナルのお守りや絵馬のほか、不落祈願として祈祷も行えるそうです。
調査を終えて
今回は三島神社の雷井戸に伝わる伝説についてご紹介しました。
雷などの自然現象はもちろん、あらゆるものに神を見出し信仰していく。
取材を通して、日本の神道の世界観により深く触れた気がしました。
そして神主によって井戸に閉じ込められた雷が「出してください……」と哀しそうに訴える様子を想像すると、なんだか人間味があって面白いな……と笑ってしまうのでした。
(参考サイト)
三島神社公式ウェブサイト
https://www.mishimajinjya.or.jp/wp/
東京都神社庁
http://www.tokyo-jinjacho.or.jp/taito/3044/
(参考文献)
「三島神社御縁起 」三島神社
「日本民俗学 第1-4 神事篇」中山太郎
取材・文・撮影=望月柚花