昭和の雰囲気を残した店内でいただく本格イタリア料理
今回のお目当ては筆者の大好物のナポリタン。老舗ならではのこだわりがあふれるナポリタンをランチでいただけると聞いて、川崎にやってきた。川崎駅から徒歩6分ほど。京急川崎駅からもほぼ同じくらいの距離だ。
レンガ風の壁とカラフルなサンシェード。レトロ感があふれる外観の『モナリザン』。ドアを開けて店内に入ると、昔ながらの洋食屋さん風のテーブル席が並ぶ。ゆっくりと食事を楽しめそうだ。
左側にはイタリアンバルのようなカウンター席。ガラスケースにはその日のアンティパストが並ぶ。単品メニューで軽く食事をいただきながらワインを楽しむといった使い方もできそうだ。
「もともとは1955年に開業した喫茶店が始まりです。メニューのバリエーションを増やすために、帝国ホテルで調理経験のあるシェフを呼んで洋食メニューの提供を始めました。1971年に店舗を改装し、本格的なイタリア料理店として営業を始めたんです」と教えてくれたのは3代目店主の大嶌正悟さん。創業者の大嶌正二郎さんは正悟さんの祖父にあたる。
正悟さんは外資系IT企業に10年ほど勤務した後、2代目である父の正人さんのあとを継いだ。学生の頃から店を手伝って料理の腕を振るっていたが、店を継ぐことが決まると学び直しのためにイタリアへわたり現地で修業を重ね、イタリア国家認定ソムリエの資格を取得。伝統を守りつつ、本場仕込みの新しい味にも挑戦している。
創業の味を守り続ける大人味のナポリタン
さっそく今回の目的であるナポリタン・スパゲティ1100円を注文。
しばし待つとミニサラダが出される。ドリンクバーも付いているので、早めに飲み物も準備して、酸味の強めなイタリアンドレッシングがかかった新鮮野菜のサラダをいただきながらナポリタンの出来上がりを楽しみに待つ。
注文から10分ほどで注文したナポリタン・スパゲティがテーブルに。具が大きい! さっそく、本格イタリア料理店が長年守り続けてきたナポリタンを一口いただく。
ソースは、ケチャップ系の甘さを控えた、いわゆる大人の味だ。甘みの少ない分、トマトソースの旨味が引き立つ。ソースの味付けについて大嶌さんに伺うと、トマトソースとトマトペーストをベースにして、ウスターソースで味に深みを加えているそう。
ナポリタンには太麺を使う店が多いが、細麺を使うのがモナリザン風。茹で加減はもっちり柔らかめではなく、芯には軽い歯応えが残るアルデンテだ。“イタリア料理店のスパゲティ”というこだわりだろう。
大きめのエビやベーコン、玉ねぎは飴色に炒めてあり旨味たっぷり。マッシュルームの代わりにシイタケとシメジが使われているのも老舗ならではの味わいだ。他の店のナポリタンとは一味違う、老舗イタリア料理店がつくる大人味のナポリタン。とてもおいしくいただきました。
ランチだけではもったいない! 夜は本格イタリアンとワインを楽しむ
昭和レトロな雰囲気の1階から2階に上がると、おしゃれで現代的なレストランスペースとなっている。3階はグループでの会食やパーティ、家族連れなど、人数に合わせてパーテーションで区切ることができるので、個室風の落ち着いたスペースで食事を楽しめる。ちょっとした隠れ家的にも使える空間だ。
コースでイタリア料理をいただくのもおすすめだが、気に入った料理や季節のメニューを何品か注文し、料理にあったワインを楽しむという楽しみ方もおすすめとのこと。もちろん、ワインは大嶌さんへ相談しよう。ボトルだけではなく、厳選のグラスワインも充実している。
そしてちょっと気になるメニューがキャセロール・スパゲティ。ベシャメルソースに2種類のブレンドトマトソースをあわせたクリーミーなソースに、太めのパスタをあえてエビとチーズをのせてオーブンで焼きあげる、モナリザンの名物メニューだ。
次回伺う機会があれば、ソムリエの資格を持つ大嶌さんおすすめのワインを飲みながら、ゆっくりとキャセロール・スパゲティ楽しみたいなと思う。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=羽牟克郎