きぬた歯科 きぬた泰和先生

1996年にきぬた歯科を開業。日本でインプラント治療にいち早く取り組んだ先駆者。自身の写真を全面に出した看板を設置することで一躍知名度を上げ、現在、首都圏を中心に230カ所以上設置。日本一顔の知られた歯医者さんと言っても過言ではないはず。

胡散臭い自分の姿に「これはいける!」と確信

西八王子駅のロータリーの向こうから颯爽と現れるは、きぬた泰和先生ご本人。こう言っちゃなんだが、看板で見慣れているせいで初めて会う気がしない。

先生が看板に力を入れたのは、ひとえに広告戦略だ。当時、街に設置されている看板で、一般人が映るものは皆無だった。そんな中、ふと自撮りを試した先生。写った自分の姿に「胡散(うさん)臭い!」と驚愕すると同時に「これはいける!」と確信したという。

「タレントは美しすぎて風景の一部になってしまう。でも、胡散臭いオッサンは逆に印象に残るはず」という独自の着眼点だったが、手始めに八王子市内で2カ所設置すると、狙いが的中して客足は増加。その後も看板の設置と比例して、医院は大忙しに。まさに戦略通りだったというわけだ。

そんな先生も、まさか看板に熱烈なファンが付くとは思っていなかった。「気づけば『#きぬ活』というハッシュタグが盛り上がっていて、有志がグッズを作っている。驚きました」。今となっては先生自身、ファンとの交流は良い気晴らしになっていて、「#きぬ活」のハッシュタグがついた投稿には、積極的にリプライする。もはや本人公認の推し活動。看板を見かけたら「#きぬ活」で投稿だ!

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#きぬ活 してみた

片倉町・東京環状線沿い

大・中・小の三連きぬたとくと見よ!
大・中・小の三連きぬたとくと見よ!

八王子駅から国道16号線をひたすら南下。JR片倉駅もさらに越えた先のゆる~いカーブで遭遇する。看板自体は道から外れた低地に建っているため、ちょうど歩道と看板のきぬた先生の高さが合う。同じポーズで記念撮影するには、最高にちょうどいい!

左入橋交差点

ここの看板空いたらすぐに知らせて!
ここの看板空いたらすぐに知らせて!

北上すれば、昭島市へと続く大きな交差点。傍らの集合看板に目をやれば、スーツ、絶叫、安全運転呼びかけの3種の先生(?)と目が合う。「いずれ、この看板全部ジャックするんだ」と野望をボソリ。そんなことしたらここ、“きぬた交差点”と呼ばれるようになりそう。

小比企町・北野街道沿い

頼りになる男におれはなる!
頼りになる男におれはなる!

のどかな住宅地を行くと不意に現れる「俺に任せろ!!」の真っ赤な文字。ファイティングポーズも相まって、他の看板よりもひと際雄々しい印象を受ける。「格闘技、やってるんですか?」と聞くと「やってないんですよ~」と先生。それにしては、意外とサマになっている……。

明神町交差点

集合看板のど真ん中に、きぬた歯科の看板がドーン! その上に、別の企業からリスペクトあふれるメッセージが。「こんなコラボは大歓迎」と、きぬた先生もホクホク見つめている。ここは看板の真向かいがベストポジション。ぜひ同じポーズで撮りたい。

宇津木町南交差点

宇津木町を北上する際のオーバーパスを側道へ。交差点の駐車場に立つ看板だ。隣には、よく似た構図のリフォーム専門店の看板が並んでいる。きぬた先生は、「看板のポーズは、オープンソースですから」と楽しそう。懐の深さ、天晴れです!

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きぬた歯科公認(⁉)グッズも……

「きぬた歯科神経衰弱」や「きぬたかるた」など、有志が作ったグッズも。当初は同人作品的なものだったが先生の目に触れ、公認に。「正直、ここまでやるとは思わなかった」と、グッズに関しては先生自身もファンの一人。ファンの熱意、恐るべし!

きぬた歯科

東京都八王子市台町4-48-9
JR中央線西八王子駅南口ロータリー内

取材・文=どてらい堂 撮影=鈴木愛子
『散歩の達人』2023年11月号より