未経験の強烈貝だし濃厚ラーメン

ウッドなファサードにセンスを感じる『らーめん改』。
ウッドなファサードにセンスを感じる『らーめん改』。

『らーめん改』はカウンター席のみのこぢんまりとした造りだ。

メインメニューの貝塩らーめん1000円の食券を購入して着席する。

 

テーブル下のバッグハンガーとティッシュがうれしい。
テーブル下のバッグハンガーとティッシュがうれしい。

荷物に気を取られることなくラーメンを堪能できるよう、カウンターの下はバッグを掛けられるようになっている。シンプルなグレーの塗り壁に備え付けられたティッシュもうれしい。カウンターで目に写るのはラーメンだけ。

透き通る貝出汁のスープが美しい貝塩らーめん1000円。
透き通る貝出汁のスープが美しい貝塩らーめん1000円。

ラーメンが到着。淡い色で透き通るスープに太目の縮れ麺。ピンク色が鮮やかなチャーシューとわかめ、そしてメンマではなくたけのこも。優しく、おだやかな見た目が深みのある味わいを期待させる。

麺は太目の手揉み。
麺は太目の手揉み。

お店の2階で作られている自家製麺は太く縮れてスープをしっかりと絡めとってくれる。

ひと口いただくと強烈な貝の風味とうまみが口の中に溢れんばかりに広がっていく。

見た目のさっぱりとしたイメージを完全に裏切る濃厚さとコクだ。極太の麺とパンチのあるスープのバランスが抜群。とはいってもいわゆる豚骨や鶏白湯のような濃厚さではない。魚介ベースのあっさりさと濃厚さが同居しているのだ。矛盾しているようでいて一体化している未知の感覚に包まれ箸がとまらない。

麺だけでも脳に力強く響く貝感。スープを飲んだらどうなるのだろう。わくわくしながらスープを一口いただくと、口の中で海のうまみが爆発するかのように広がっていく。体中に優しさが染みわたる。

低温調理のレアチャーシュー。
低温調理のレアチャーシュー。

ピンク色が美しい低温調理のチャーシューがもつ柔らかな食感と魚介スープの絶妙なハーモニーがたまらない。チャーシュー増し300円をトッピングすればよかったと後悔するほどだ。

たけのこには下味がついていて単品でも心が落ち着く滋味がある。スープとタケノコのダブル癒やし効果で心がすっと穏やかになる。

最近はあまり見かけない、わかめも魚介出汁との相性は言わずもがな。

すべてがやさしく、真冬の温泉に浸かっているかのような安らぎと心地よさ。一口ごとに幸せのため息が漏れる。多幸感に包まれながら食べ進めていると、すっと鼻を抜ける柑橘の香り。丼の底に沈む柚が清涼感をもたらしてくれる。

最後のひと口を食べ終え、またひとつ大きくため息をつく。

 

原体験は母親の作ってくれたお吸い物

茹でる前にしっかりと揉まれる麺。
茹でる前にしっかりと揉まれる麺。

「昔、母親が作ってくれた蛤のお吸い物がおいしくて、それのラーメン版を作りたいと思ったのがきっかけですね」

と木場本さんは語る。

国産の貝類を大量に使い、厳選した乾物を使用して『らーめん改』の唯一無二の超濃厚貝だしラーメンスープは作られる。科学調味料は不使用。

いくども試作を繰り返して、それぞれの食材のよさを引き立てる絶妙なバランスの良さに辿り着いた。

 

お店の2階で作られる自家製麺にもこだわりを詰め込んだ。「自家製のいい所は国産の品質のいい小麦がふんだんに使えるところです。国産の香り高い小麦を中心にブレンドして製麺しています」

揉まれることでスープとの絡みもよくなる。
揉まれることでスープとの絡みもよくなる。

国産の良質な小麦を使うことでスープの味を邪魔せず、全体のバランスを完璧にマッチさせる麺を作り上げた。

茹でる前にはしっかりと揉み込む。こうすることでスープがよく絡み、いわゆる「スープを持ち上げる」ようになるという。

チャーシューは肩ロースを低温調理したもの。

「当時は低温調理も珍しかったんですが、今では使っているお店が多いので独自のウリという感じではないですね。しかしこの貝出汁のスープには一番合うんですよ」

スープのバランスの良さをさらに際立たせる麺と具材。まさに日本料理の神髄ともいえるお吸い物といえよう。

滋味あふれる濃厚貝出汁スープで心と身体がすっとほぐれる蔵前の『らーめん改』

タイルがかわいいカウンター。
タイルがかわいいカウンター。

『らーめん改』は貝を中心とした魚介の出汁で、かつ超濃厚という他ではない味を体験できる。

「濃厚ですが優しく、老若男女問わずおいしく食べられるラーメンだと思っています」

と木場本さんの言うとおり、『らーめん改』の貝塩らーめんは誰もが親しみやすい。

しみじみと優しく、かつ濃厚な貝出汁のラーメンを『らーめん改』でぜひ体験しよう。

住所:東京都台東区蔵前4-20-10 宮内ビル 1F/営業時間:11:00~15:00、17:30~21:00/定休日:無/アクセス:地下鉄浅草線蔵前駅から徒歩3分

取材・文・撮影=かつの こゆき