◆散歩コース◆

体力度:★☆☆
難易度:★☆☆

  • 登山シーズン 4月~11月
  • 最高地点 663m(大根ノ山ノ神)
  • 登山開始地点 307m(鳩ノ巣駅)
  • 歩行時間 2時間30分
  • 歩行距離 約5.0km
スタート
鳩ノ巣駅
駅前から右へ行きすぐ青梅線を越えて道なりに上がる。正法院の左の小道を上がると登山口。眺めがいい。

登山口
ここからは土道の登山道になる。ゆっくり登って小1時間ほどで分岐の大根ノ山ノ神へ。新しい標識がある。

大根ノ山ノ神
ここは分岐点になっていて、右の林道を進む。と、10分程度で林道が終わり土道に。峰はすぐ。以前は歩きにくい道で廃道になりそうな雰囲気だったが、いまや廃村林道となり、気軽に行けるような道になった。

峰集落跡
来た道を戻るだけ。来るときと違い大根ノ山ノ神からは下りなので集落跡から1時間程度で鳩ノ巣駅へ。

ゴール
鳩ノ巣駅

アクセス:
[行き]新宿駅からJR中央・青梅線で青梅駅へ。青梅駅からJR青梅線で鳩ノ巣駅へ。約1時間40分。
[帰り]鳩ノ巣駅からJR青梅線で青梅駅へ。青梅駅からJR中央・青梅線で新宿駅へ。約1時間40分。

登山道を上がり、棚沢集落の全貌を見渡す

奥多摩には廃村がけっこう多い。なかでも峰は有名だ。ほかに鳩ノ巣駅から近い越沢や日原手前の倉沢など。山梨県になるが、丹波山村の高畑、檜原村では藤倉の奥に茗荷平などもある。

さて峰である。

「低山さんぽ」なのになぜ廃村なのか。

それは山の中にあるからだろう。今から30年近く前に初めて訪れ、それから何度か来ているので、その変遷も目の当たりにしてきた。この辺でまた取り上げてみてもいいかと思った次第。

峰は1972(昭和47)年に最後の住人が山を下りて、完全に廃村になった。この村の歴史はかなり古く、今から600年ほど前に秩父から山を越えて逃げてきた武士の集団が住みついたのが始まり。そういえば、日原近くの倉沢に住んでいた故・坂和連さんも秩父からやってきた修験者の末裔と言っていた。秩父からは案外、山伝いに来やすかったのだろうか。

峰はまた柳田國男で知られるところで、東京帝大在学中に峰を訪れた体験を、のちに『後狩詞記(のちのかりことばのき)』に記している。峰から羽田沖に浮かぶ帆が見えたと書いているが、昔はよほど空気が澄んでいたのだろう。

峰には鳩ノ巣駅から。駅の北側の集落が棚沢で、峰から出てきた人が多く住んでいた村だ。筆者は最初に訪れた際に、峰に住んでいた福島伊勢松さんを訪ねた。ご存命なら103歳。当時で74歳。足を悪くして、もう歩けなかった。50㎏もある臼を背中に担いでいる写真を見せてもらった。これじゃ足も悪くなる。

峰の暮らしで一番大変なのは、たぶん水だったと思う。飲料水は毎日数回は下の沢に汲みにいったという。明かりは昭和31年に電気が通ったというので、そんなに遅くはない。

棚沢集落の上、登山口付近にあったモノレール。高齢になれば、集落内の坂道もきついのだろう。
棚沢集落の上、登山口付近にあったモノレール。高齢になれば、集落内の坂道もきついのだろう。

棚沢の外れが登山口になる。この道は川苔山や本仁田山に行くルートにもなっている。登山道に上がると棚沢集落の全貌が見えてきた。訪れたのは4月下旬の春真っ盛り、山も山麓も芽吹きのときで美しい。

登山口付近から。棚沢集落の眺望。左下の朱色の屋根は正法寺。正面に見える小高い山は 広沢山だろうか。
登山口付近から。棚沢集落の眺望。左下の朱色の屋根は正法寺。正面に見える小高い山は 広沢山だろうか。

峰までの道は山道だが、昔は生活道、それほどきつい勾配ではない。入り口から1時間ほどで祠のある大根ノ山ノ神に着いた。ここが川苔山や本仁田山へ行く分岐点。その先で峰へ行く道は、以前と違って歩きやすい砂利道の林道になっていた。これはびっくりだ。

もう道はなくなったかと思ったのに。峰の手前で林道は終了、少し行くともう峰の中心にある村の神様、日天様(日天神社)に着いた。

峰に行く道標でもある大根ノ山ノ神。ここまでくれば峰はまもなく。峰の子どもたちは 古里の分校までこの道を通って片道1時間かけた。
峰に行く道標でもある大根ノ山ノ神。ここまでくれば峰はまもなく。峰の子どもたちは 古里の分校までこの道を通って片道1時間かけた。

最初に来たときは家が4、5軒残っていて、まだ倒壊もしていなかったが、だんだんと崩れたのか、ついに建物は完全に消滅していた。600年前にほぼ戻ったということだ。

周辺を歩いてみる。大きな屋敷があったと思われる敷地。山城のような立派な石積が残っていた。峰の長(おさ)で、古里村の村長だった福島文長さんの家だろう。柳田國男はこの屋敷に泊まったのだ。

広大な屋敷があったと推測される家の跡。おそらく村長の福島文長さんの家だろう。石垣がとても立派。
広大な屋敷があったと推測される家の跡。おそらく村長の福島文長さんの家だろう。石垣がとても立派。
集落の中心部にある大きな御神木の下には日天様が祀られている。
集落の中心部にある大きな御神木の下には日天様が祀られている。
セルロイドの人形がまだ残っていた。最初の頃はいろいろ物があったが、持ち去られたのだろう。
セルロイドの人形がまだ残っていた。最初の頃はいろいろ物があったが、持ち去られたのだろう。

自然に還りつつある峰から人里へ戻った。できるなら人里は人のいる里のままでいてほしいと願わずにはいられない。

峰からの帰りに右側が開けた場所があった。棚沢の家々が見える。古里の分校に通っていた子どもたちは帰りには米や醤油を担いで帰ったという。
峰からの帰りに右側が開けた場所があった。棚沢の家々が見える。古里の分校に通っていた子どもたちは帰りには米や醤油を担いで帰ったという。

廃村・峰について

600年の間、山中で生き続けた秩父の末裔たち

1995年、まだ倒壊していない家が4、5軒あった。台所用品やレコードプレーヤーなどもあった。2009年に来たときは写真の傾いた家が1軒だけ、そして今はもう家は見当たらなかった。
1995年、まだ倒壊していない家が4、5軒あった。台所用品やレコードプレーヤーなどもあった。2009年に来たときは写真の傾いた家が1軒だけ、そして今はもう家は見当たらなかった。
2009年。
2009年。
2020年。
2020年。

峰は約600年前に秩父の武士が戦に敗れて逃げてつくった村らしい。明治維新時には7軒の家があり、「峰七軒」と呼ばれた。ちなみに柳田國男が来村したのは明治32(1899)年のこと。電気は昭和31年に通じたが、水道はなかったために水で苦労した村だった。住民は昭和12年頃から山を降りはじめ、昭和42年頃で家は10軒、そして昭和47年に廃村。最後の住民は福島儀左衛門さん。

 

山歩きメモ

大根ノ山ノ神からは川苔山へ直接行くルートと杉ノ尾根を上がり、瘤高山から本仁田山へ行くルートあり。本仁田山から奥多摩駅への下山は、かなりの急坂。

アドバイス

危険箇所もわかりにくいところもない。ただ峰は平坦地だが、外れは崖になっている箇所もあるので、ちょっと注意したい

カフェ山鳩

駅からすぐの眺めのいい席で一杯

具だくさんのピッツァは味もボリュームも大満足。
具だくさんのピッツァは味もボリュームも大満足。

駅そばにおしゃれな喫茶店のような店。カフェなので当然なのだが、奥多摩ではあまり見かけない雰囲気の店だ。サンルームのような席がいい。ランチやピッツァなどがおすすめ。

●10:00~17:00、月曜・第3火曜(祝日の場合は翌日)休。鳩ノ巣駅から徒歩1分。 ☏0428-85-2158

大橋屋

地元民の酒場&食事&食料品のお店あり

生姜焼き定食は900円。そのボリュームに圧倒される。お酒はお通しがまた単品料理ほどの量。
生姜焼き定食は900円。そのボリュームに圧倒される。お酒はお通しがまた単品料理ほどの量。

こちらは山鳩の対極にあるようなディープなラーメン屋&山麓酒場。さらに食料品などの販売もやっている多角経営の店。昼から焼酎で一杯やっている地元の人もいるが、負けずに一杯やろう。定食などは量が多いので食べきれないほど。

 

●7:00~19:00、不定休。鳩ノ巣駅から徒歩2分 ☏0428-85-1195

取材・文=清野編集工房
『散歩の達人 日帰り山さんぽ 低山をきわめる!』より