立川で10年以上。不動の人気を誇るラーメン店
立川駅の南口から3分ほど歩いた、細い路地に現れるのが『らーめん チキント』。2011年から営業を開始し、時代とともに続々とラーメン店が増え続ける立川の地で着実にファンを増やしている人気店だ。
店内は厨房を囲むカウンターのみの7席で、店主とスタッフが目の前で手際よくラーメンを作ってくれる。なるべく会話は小さな声で、など店主のお願いごとが店内にちらほら書かれており、一人で黙々とラーメンを食べたいときにはもっていこいの店だと感じられた。
豚骨魚介から着想を得た鶏白湯ラーメン
昭島出身で幼い頃から立川になじみのあった店主の紅林勝雄さんは、ラーメン店をはじめあらゆるジャンルの飲食店で腕を磨き、そのなかで「自分のラーメン店を開きたい」という気持ちが高まっていった。独立する前に働いていた洋食居酒屋では紅林さんの思いを汲んだオーナーの厚意により、間借りのラーメン店「くれちゃん らぁめん」の営業を開始した。その店で現在の鶏白湯ラーメンの原型ができあがったというから、それが『らーめん チキント』の原点と言えるだろう。
現在のスタイルのラーメンに行きついたのは「店をオープンした当時、世間では豚骨魚介のラーメンが流行っていました。それでも匂いなどで豚骨が苦手な人は多い。それなら鶏はどうだろう?と考えました。当時はこの辺りで鶏白湯のラーメンを出している店もなかったんです。そしてスープだけではなく“具材も全部鶏にしちゃおう”と思いました」。
そして完成したのが、鶏白湯に魚介を掛け合わせたWスープと具材まで鶏の旨味を楽しめる一杯。とろりとしたスープは、醤油味のため白湯といえど濃い褐色だ。そんな鶏へのこだわりは『チキント』という店名にも詰まっている。
スープから具材まで。鶏の旨味が存分に!
今回は通常のらーめんにチャーシューが追加された、鶏肉らーめんを注文した。大きくカットされた4枚のチャーシューは鶏のむね肉、モモ肉の2種類を楽しめるほか、つみれもあるので別の角度から鶏を味わい尽くせるのがうれしい。
醤油味の鶏白湯スープはこってり濃厚。醤油の存在感が抜群で、鶏のみならず魚介の香りもしっかりと感じられる。それぞれのバランスが絶妙で、紅林さんが研究を重ねて生み出した賜物といえる。そんなスープに合わせる麺は業界でも注目される『村上朝日製麺』のストレート麺。スープとよく絡まり、もっちりとした食感で小麦の豊かな風味も感じられる。
見た目のわりに鶏が主役なので重たくなく、体に配慮した無化調。こってりとしていながら、さっぱり好きの人にも刺さる万能な一杯かもしれない。
2種類の鶏チャーシューもスープと合わせて食べてみた。箸で持ち上げるとホロホロと崩れるほどやわらかいモモ肉は、皮があぶられているので香ばしさがありジューシー。モモ肉は、しっとりと肉厚で食べ応えがたっぷりとある。気になるつみれはというと、ペッパーの香りが効いていて一個では物足りなくなるくらいだ。鶏の旨さを「これでもか!」と思い知らされる一杯だった。
「店のオープン当時は醤油味の完成度が高かったので醤油味の鶏白湯がメインになっていますが、その後研究を重ねて塩味も完成したので、言っていただけたら塩味の鶏白湯も作ります。券売機にも実は書いてあるんですが、気づかない人も多いので(笑)」
また、鶏白湯よりもあっさりと仕上げた鶏中華そば、限定商品だったが好評でレギュラーメニューに昇格した鶏と鯛煮干しの塩中華そば、基本の鶏白湯らーめんに自家製ラー油を加えた紅らーめんなど多種類のメニューがあり、この店はまだまだ奥が深そうだ。
取材・文・撮影=稲垣恵美