澄んだスープに平打ち麺、しっかり味の正統派

『生田庵』外観。
『生田庵』外観。

『生田庵』はカウンターのみのコンパクトな店舗だ。食券売場はドアの横で、悪天候時でも濡れないように大きな軒がしつらえてあるのがうれしい。

基本メニューは中華そば、チャーシュー麺、もり中華、もりチャーシュー、辛味中華そば、そして辛味チャーシューとトッピングといったシンプルな構成。今回選んだのはチャーシュー麺1200円だ。

店内。
店内。

入店すると、はつらつとした笑顔でミャンマー出身の店長ピョ トゥ アウンさんが元気に対応してくれる。店内はカウンターのみ。床もカウンターも道に面した大きな窓も丁寧に磨き込まれている。

着席して食券を渡し、しばらく待つ。水はカウンターに設置された蛇口をひねればでてくる。水のポットの残量を気にすることなくごくごく飲めるのはありがたい。

チャーシュー麺1200円。
チャーシュー麺1200円。

つやつや輝くカウンターに置かれたチャーシュー麺がキラキラと輝く。薄いあめ色のスープは透明度が高く食欲をそそる。どっさりとトッピングされたチャーシューを食べ尽くしたい衝動を抑えながらスープからいただく。

出汁と塩の味が効いていて、醤油は全体をまとめるようにほのかに香る。塩気はやや強めだが洗練されたまとまり具合で箸が進む。

チャーシュー麺1200円。
チャーシュー麺1200円。

麺はストレートの平打ち。なめらかで滑りがいい。しっかりとコシがあり、それでいてぷるぷるとした食感で、のど越しの良さがある。

注文を受けてから切り分けるチャーシューはウデとバラ。しっかりと味がしみこみホロホロで柔らかく、かつ繊維を感じられ、肉々しい満足感に包まれる。麺を口に運ぶたびにチャーシューを同時に頬張ってもチャーシューは尽きない。チャーシューを思う存分楽しみたいときは『生田庵』のチャーシュー麺がベストな選択だ。

カウンター下。
カウンター下。

カウンター前面に掲示された、おすすめを参考に途中でコショウを振りかける。洗練されたまろやかな味わいがキュっと締まる。ニンニクも風味に奥行きを与えてくれる。

こだわりのチャーシューをたっぷりと

ピョさんは以前は福井の工場で働いていたが、縁あって今の会社から店長を任されるようになったという。会社が日本語の学習についても熱心で、すでにコミュニケーションは円滑だ。

「スープは前日に仕込んだ鶏ガラ、醤油、豚骨、豚肉です。肉のうまみが大事なんです」とにこやかにピョさんが言う。

スープも麺も食材も奇をてらわず、基本を徹底することを重視している。澄んだ深みがあるスープは厳選されたシンプルな材料を使い、基本に忠実に仕込んでできあがる。それが誰もが親しみやすくほっとする味の秘密なのだ。

「チャーシューはその日に仕込んでその日に使い切ります。注文が入ってから切り分ける、切り立てを提供しています。部位はウデとバラですね。麺は自社工場で製麺したものを使っています」

絶妙な噛み応えのチャーシューは大人気で、一番売れるメニューはチャーシュー麺だという。最適な仕込み加減でぎりぎりまでうま味を蓄えたジューシーなチャーシューはまさに絶品。それを贅沢に山盛りで味わえるのだから一番人気なのもうなずける。麺も自社製麺ということで、スープとの相性が完璧だ。

正統派中華そばを日本文化の発信地、浅草で楽しむ

カウンターの中のピョさんに今後の目標を聞くと「浅草で一番のラーメン屋になりたいです」と満面の笑みで答えてくれた。
カウンターの中のピョさんに今後の目標を聞くと「浅草で一番のラーメン屋になりたいです」と満面の笑みで答えてくれた。

基本を忠実に守り、オーソドックスな材料のみを使う『生田庵』はラーメンらしいラーメンが食べたいという思いに最高の形で答えてくれる。

店内も細部に至るまで磨き上げられて居心地がよい。明るい光が差し込む大きな窓もあり、ほがらかな気持ちでラーメンを味わえる。

浅草で正統派の中華そばを探しているなら『生田庵』は外せない。

住所:東京都台東区花川戸1-6-4/営業時間:11:00~21:00(土・日は10:00~21:00)/定休日:無/アクセス:東武鉄道東武伊勢崎線浅草駅から徒歩1分

取材・文・撮影=かつの こゆき