オーナーのこだわりと、コロナ禍に店をオープンさせた理由
JR総武線と地下鉄浅草線の浅草橋駅より徒歩3分ほどのところにある『カフェタロー』。2022年10月2日にオープンした、比較的新しいカフェである。
2021年11月に開館した東京タロット美術館のミュージアムカフェとのことだが、カフェ近辺に美術館は見当たらない。じつは東京タロット美術館は『カフェタロー』から歩いて5分ほどのところにあるのだ。ミュージアムカフェとして一般的にイメージする、美術館の館内に併設されているカフェではない。
そのため独立したカフェとしても成り立ち、さまざまな客層が訪れて人気となっている。
『カフェタロー』は一見して、洗練されたインテリアのおしゃれなカフェといったイメージだが、それだけではなかった。このカフェには、オーナーのこだわりが随所に散りばめられている。佐藤元泰オーナーが、並々ならぬ思いを語ってくれた。
タロットは「自分自身を知るための道具のひとつとして使うもの」。
コロナ禍で人生の不条理を感じる人も多い中、家の中にこもっていても、何も前に進まないと感じ、外へ出て他者との対話をしてもらいたいという思いから『カフェタロー』をオープンさせた。そんな社会的なメッセージを送りたかったと語るオーナーは、「哲学対話」など、このカフェに人が集まるイベントも積極的に開催している。
見知らぬ人が集まり、テーマにあわせて自分のあるがままを話す、そういった社会的な場をつくりたいという強い思いから、イベントにも力を入れているそうだ。
カフェに限らず、美術館でもタロット入門講座や「感じる」をテーマにしたイベントも企画しているらしい。
メニューはすべてヴィーガン!グルテンフリーがうれしい!
1階でメニューを注文すると、裏返したコースターを手渡された。それを持って2階へ上がる。
タロットカードは、大アルカナ22枚と小アルカナ56枚の合計78枚のカードからなる。
選んだカードによって、自分と向き合えるのだ。
注文時に渡されたコースターには、22枚ある大アルカナ(寓意画が描かれたカード)のうちのひとつが描かれており、毎回訪れるたびに今の心の状況を知る楽しさがある。
カードの意味は、説明書を見ることでタロットに詳しくない人でもわかるのがうれしい。
今回のカードは「TEMPERANCE 節制」だった。こうして『カフェタロー』に通うごとに、タロットに触れられる。
しばらくすると、料理が完成した合図の呼び出しベルが鳴り、階下へ取りに行く。今回いただいたのは、ファラフェルランチプレート、ドリンクつきで税込み1600円。
肉や卵を使っていないヴィーガン料理が、なんとも体によさそうだ。新鮮な野菜がたっぷりで、お腹はいっぱいだが食べすぎの罪悪感も一切なさそう。
厳選された食材を、手作りにこだわり、丁寧につくられている様子が伝わってくる。ファラフェル、フムス、新鮮野菜、グリルされた野菜が、いろどり豊かに盛り付けられ、見た目も美しく洗練されたワンプレートとなっている。
ひよこ豆のコロッケ、ファラフェルは、衣がカリカリさくさくで小さいサイズだが食べごたえたっぷりだ。香辛料がきいていて、おいしい。ひよこ豆のディップ フムスは、クセがなくやさしい味わいだ。横に添えられたキヌアなどと一緒にいただく。
新鮮野菜にかかる、こだわりの手作りドレッシングはそれすら立派な一品となり、野菜の味を引き立てている。
またソフトクリームも、オーツミルクを使い店内で手作りしているとのこと。
『カフェタロー』のメニューは、すべてヴィーガンにこだわっている。また一部のパンなどをのぞいて、基本はグルテンフリー。どのメニューを選んでも安心感があり、それをめざして訪れる外国の方も多い。東京のヴィーガンをあつかう店舗を紹介するサイトでも上位に表示されるそうだ。
この日も次から次へとさまざまな国籍のお客さんがやってきて、ヴィーガン料理を楽しんでいた。
食後はタロットの魅力に触れて
ヴィーガン料理を堪能した後は、おしゃべりを楽しむ人、タロットカードをめくる人、など各々の楽しみ方をしている。
タロットクロスを広げている人もいた。会話の内容までは聞こえてこないが、タロットカードをはさんで会話がはずんでおり、穏やかな時間が流れているようだ。
この空気感は、他のカフェではけっして味わえない『カフェタロー』ならではの魅力。
タロットカードには神秘的なイメージをもっていたが、「何もあやしいものではないんです」とオーナーがタロットカードを並べて見せてくれた。
『タロットカフェ』の店名は、フランス語で「Tarot」を「タロー」と読むことが由来となっている。
タロット好きな人はもちろん、ヴィーガン料理を楽しみたい人も、そんなことはまったく関係なく、おいしいカフェでまったりとした時間を過ごしたい人もいる。またご近所のおじいちゃん、おばあちゃんがふらっと立ち寄ることもある。
そんな方々にも「タロー」なら親しみをもってもらいやすいと感じて、名付けた名前だそうだ。
そして店内には、タロットの意味が込められたインテリアがたくさん。これも見どころだ。
ただお腹を満たすだけ、コーヒーを飲むだけで訪れるには、もったいない。それ以外にも多くの魅力や楽しみ方、くつろぎ方がある。インテリアに隠されたモチーフを探すのも楽しい。カフェを訪れたら、ぜひ探していただきたい。
テイクアウトもOK!
1階では、米粉でつくられたグルテンフリーのマフィンなどが販売されている。マフィンは季節ごとのフルーツを使ったスイーツ系や、マッシュルームマフィンなど毎朝手作りしているらしい。
店内で食べることもできるし、テイクアウトもOKだ。
ただ単におしゃれでおいしいカフェではなく、なんでも表面的なものだけで判断してしまう世の中、「見えない世界も大切にしたい」オーナーの熱い思いがこもっている。地元の方や外国人、タロットやハンドメイド好きのマダム、ビジネスパーソンなどが立ち寄る、カオスな場となっているのもおもしろい。
『カフェタロー』は、さまざまな人たちの思いの結集によってでき上がった、快適な空間なのだ。
心理学、色彩学、シンボル学など、たくさんの要素をもつタロットや他者との出会いから、新たな自分を発見できるかもしれないと感じた。
/定休日:不定/アクセス:JR・地下鉄浅草線浅草橋駅から徒歩3分
取材・文・撮影=ほし ななこ