海老名市では、市に申請を出すことで、デッキ上の「自由通路」と呼ばれる部分や海老名中央公園のステージでライブを行うことができる。ゆえに毎日誰かが歌ったり、踊ったり、それが風景の一部になっているのだ。
「安心して歌える場所を探して、たどり着いた」とは、ラチエンブラザーズの吉田弦さん。地域によっては路上ライブが認められておらず、警察が駆けつけることも。アーティストにとって切実な場所の問題をクリアできる海老名は、のびのび歌える土壌が整っている。そして、街の人々も、彼らに対して懐が深い。「他の地域よりも立ち止まってくれる人が多い。特に、ファミリーやカップルの優しさには、和みます」と、語るエマ。さんは、子供に手を振る一幕も。また、ぽっぷこーん☆のさとみさんは曲の合間に駆け出し、「受け取ってください〜」と、チラシを手渡し。受け取った兄さんは少し驚きつつ、ニッコリ。こんな光景、なかなかない。
これほど近い距離で目の当たりにすれば、愛着も湧こうもの。気づけば、帰りの電車で彼らの曲をヘビロテしている。また会いたい、見つけたい。歌い手と聴き手をつなぐ架け橋。海老名駅前デッキはまさに路上ライブの聖地であった。
ぽっぷこーん☆／火曜日をスペシャルな日に変える、幼なじみデュオ
はなさんとさとみさんは、小学6年生の頃のデュオ結成以来8年間、毎週火曜日に路上ライブを行っている。二人にとって、海老名はまさに「原点」だ。ユニット名のごとく、生き生きとはじけるメロディは、老若男女を楽しませる。ぜひ、締めの『火曜日の歌』まで聴くべし。何かと気の張る週の始まりを、明るく前向きに捉えた歌詞が胸を熱くする。アウトロで二人に合わせて「火曜日！」と叫べば、完璧。明日も楽しく過ごせそうだ！
エマ。／美しく澄んだ歌声に、息を呑む
もとは「片耳とカラスムギ。」というユニットで4年間活動していたが、この夏にソロへと転向。当時から、たびたびライブを開いていた海老名の路上はホームグラウンドだ。詞・曲ともに自ら手掛けた楽曲の数々を、透明感のある歌声で響かせる。中でも『アネモネ』は、必聴だ。エマ。さん自身の夢を花に例え、不安も迷いも受け入れて水を注ぎ続ける。そんな決意に満ちた歌詞が心に響き、奮い立たせてくれる。
ラチエンブラザーズ／親しみやすく楽しい、熟練の路上巧者
同じ事務所に所属していた吉田弦さんを黒宮雅斗さんが誘い、2015年に結成。「全く違うタイプだったから、声をかけた」の言葉どおり、軽妙なトークの吉田さんとのんびり喋る黒宮さんのギャップが笑える。しかしひとたび歌唱を始めれば息の合ったハーモニーで心をわしづかみにするから、ニクイ。代表曲である『君へ』は、頑張る人に向けた応援ソング。こんなん歌われたら、目頭が熱くなっちまうじゃないか。
Nicori Light Tours／ライブハウスのごとき熱気が渦を巻く
Janne Da Arcの元メンバー・youさんとkiyoさんを中心に結成された4人組ロックバンド。抜群の歌唱力を誇るαyumuさんとkoheiさんのツインボーカルにyouさんのギター、kiyoさんのキーボード。四位一体のメロディが、熱気を巻き起こす。挑戦者の心情を雄々しく歌い上げる『サイハテ』を聴けば、気持ち高まること、間違いなし。まるでライブハウスにいるかのような高揚感がクセになる。
N.E.O／瞬き厳禁！ 冴えるダンスをとくと見よ
三川雷斗さん、波瀬章悟さん、千堂博文さん、高橋光さん、岡空也さんのジャンルレスエンタメグループ。海老名では、デッキ上や中央公園のステージで、歌唱、ダンスともに圧巻のパフォーマンスで人々を魅了する。ファン向けの覚えやすい振り付けを組み込んだ『ハレウタ』は必見。一説によると、イントロが始まった瞬間、本当に晴れるというジンクスもある。何それ、凄すぎやしませんかね⁉
ミュージシャン出没スポット
取材・文・撮影＝どてらい堂
『散歩の達人』2023年9月号より
