亀ケ池弁財天の大亀

赤羽駅の西口からほど近い場所にある亀ヶ池。

かつて太田道灌が築城したと言われている稲付城の西側にあり、言い伝えではその一角の祠にたくさんの亀が住んでいたそうです。

その中でも一番大きな亀は8.9尺(約2.7メートル)もあり、 子供が来るとその姿を見せて甲羅の上に乗って遊んだりすることができました。

しかし、大人が探しに行けば隠れてしまい、絶対に出てこなかったと言われています。

フィールドワーク①赤羽駅から亀ヶ池弁財天まで

JR赤羽駅西口からスタートします。駅から亀ヶ池弁財天までは歩いておよそ4〜5分ほど。軽く散策してみましょう。

今回訪れる亀ヶ池弁財天は前述の通り、近くのお寺の弁天堂(弁財天を祀るお堂のこと)から弁財天を分祀し、1980(昭和55)年に正式な弁天堂となっています。

現在も後援団体・辨天講の方々に大切に守られ、地元の人々に愛され続けている場所です。

人気の多い赤羽駅から遠ざかると街並みが徐々に変化していきます。

しばらく歩いても静かな住宅地が続き、池の気配など微塵も感じとることができません。

本当にこんな場所に弁天堂があるのだろうか……と思い始めた時、ようやく見えてきました。

こちらが亀ヶ池弁財天です!

想像よりもこぢんまりとしたお堂とそれを取り囲む池。白い文字で「亀ヶ池辨財天」と書かれた旗、朱塗の欄干が美しい小さな橋が、住宅地の中にひっそりと佇んでいました。

フィールドワーク②池で大亀を探す

「こんなところにこんな場所があったんだ」という、この連載を続ける上で幾度となく感じてきた驚きを今回もしっかりと感じながら、弁天堂や池を見てまわります。

手水をするための水盤や柄杓もとても綺麗で、汚れやすい水場がこれほど綺麗なのは、きっといつも人の手で大切に守られているからだと気づきました。

池を見てみると、最初はただの岩場だと思っていた場所にたくさんの亀がいるのを発見。

大きさの様々な亀がのんびりと甲羅干しをしたり、橋の上に立っているとすいすい泳いで寄ってきたりと、大変可愛らしい様子を見ることができます。

伝説の大亀を見つけることはできませんでしたが、約2.7メートルの亀が急に出てきたらびっくりして腰を抜かしそうだし、普通サイズの亀たちが揃って歓迎(?)してくれたので、ここへ来てよかったと思いました。

調査を終えて

ミステリアスな大亀の伝説の残るこの亀ヶ池弁財天。

亀ヶ池弁財天にはTwitterアカウントも存在し、池の清掃の様子や式典、節分会などのイベントの様子が発信されているようです。

もとは農業用水の溜池とされていた場所が、この地の人々の熱意によって弁天堂となり、今なお愛され続けている。

形が変わっても人の想いによって繋いでいって、時代を超えてこの場所に佇んでいる。

なんだかじんわりと心があたたかくなるような、素敵な場所でした。

取材・文・撮影=望月柚花