大きな契機は、50年代よりNYで活躍するジャズ・ピアニスト穐吉(あきよし)敏子が、戦後29年目にフィリピンで発見された日本兵・小野田寛郎少尉の帰還を題材にした74年のアルバム『孤軍』。現在まで続くジャズへの情熱の灯となった。
「ジャズ、特に日本のジャズは流行らない音楽。でも素晴らしい音楽なんです。大好きなんです。その好きなことを何よりも最優先にして、使命感に突き動かされてやってる」と堂々たる照井さん。
現在はジャズ喫茶営業のかたわら、穐吉敏子の資料収集をライフワークとしている。決して広くはない店内は、夥しい数のレコード、CDほか、40年代から発売されたスイングジャーナル全誌を始め日本のジャズに関する記録で埋め尽くされている。「ゆくゆくは日本のジャズを牽引した穐吉さんについての大きな本を出版したい。目下“黄色い長い道”なんです」と、文章家でもある照井さんは語る。
【店主が選ぶ一枚】坂元輝トリオ “海を見ていたジョニー”
日本ジャズアルバムの中でもレアな一枚
店名の由来は、ベトナム戦争帰還兵の元ジャズ・ミュージシャンを題材にした五木寛之の小説『海を見ていたジョニー』(1980年録音)。この小説に感銘を受けたピアニスト坂元輝さんが、この店で録音したアルバムが照井さんが選ぶ一枚。実はプロデュースも照井さんだ。日本のジャズアルバム復刻ブームの中でも、特にレアものとして珍重される、リリカルにして熱情あふれる作品。ライナーノーツは五木寛之氏が書いている。
取材・文=常田カオル 撮影=谷川真紀子
散歩の達人POCKET『日本ジャズ地図』より