駅から徒歩1分の飲食店街にある鶏そば専門店

入り口にメニューが掲示されているので、ここで注文のラーメンを決めておこう。
入り口にメニューが掲示されているので、ここで注文のラーメンを決めておこう。

水道橋本店、西新宿店に次ぐ都内3店舗目として2022年5月にオープン。アメ横の外れ、飲食店が立ち並ぶ路地にあり、派手な看板が多い中で、白地に筆文字の看板がかえって印象的に映る。

えんじ色ののれんをくぐって地下へ。階段下に券売機があるが、初めて訪れた人はメニューが多いので迷ってしまうかもしれない。入り口に基本となるメニューが写真付きで紹介されているので、まずはここでメニュー選びを済ませておこう。

地下の店は入りにくいといわれるが、この店は女性一人での利用も多い。
地下の店は入りにくいといわれるが、この店は女性一人での利用も多い。

店内は背中合わせのカウンター席が2列。全12席というこぢんまりした店なので、アメ横がにぎわう休日の昼食時には行列ができることもある。

ヘルシー感がある「鶏そば」の店ということもあって女性客が多く、牛豚を一切使用していないのでムスリム(イスラム教徒)の人もわざわざ訪ねて来るという。

両側から看板が迫り出すにぎやかな飲食店街。色があふれる通りにあってモノトーンの看板が目を引く。
両側から看板が迫り出すにぎやかな飲食店街。色があふれる通りにあってモノトーンの看板が目を引く。

味の基本は黄金色の透明スープ

鶏本来の旨味と風味が楽しめる、あっさり鶏そば900円。
鶏本来の旨味と風味が楽しめる、あっさり鶏そば900円。

スープは、大山(だいせん)鶏の丸鶏と鶏ガラ、さらに野菜や昆布などをじっくりと煮込んだ清湯(ちんたん)スープ。これが『鶏そば かぐら屋』の味のベースとなる。

この清湯スープを使ったのが「あっさり鶏そば」。透明感のある黄金色のスープは鶏の旨味も十分に引き出され、香りもよい。カロリー低めということも女性に人気がある要因になっているのだろう。

トッピングにも特徴がある。肉厚の鶏チャーシューのもっちりとした食感、薄味に煮たメンマ、水菜のシャキシャキ感、ユズの香り、九条ネギの風味などが一体となって上品な1杯に仕上がっている。食材によって異なる食感の違いも楽しい。

麺は1917(大正6)年創業の「大成食品」に特注。あっさり鶏そばには細めの麺が合う。
麺は1917(大正6)年創業の「大成食品」に特注。あっさり鶏そばには細めの麺が合う。

ポタージュのような濃厚な白湯スープ

濃熟鶏そば950円は中太麺を使用。
濃熟鶏そば950円は中太麺を使用。

前述した清湯スープに水、鶏油、野菜などを加えてさらに3~4時間煮込み、鶏の骨を砕いて髄液を出して濾(こ)す。これをさらにグツグツと煮込んで乳化させ、再度濾したものが濃熟白湯(ぱいたん)スープとなる。二度にわたって濾す作業を行うことで味がマイルドになるのだという。完成するまでに12時間ほどかかるので、店を開けている間ずっと巨大な寸胴鍋で煮込んでいる。

濃熟白湯スープを使った濃熟鶏そばはポタージュのようなとろみがあるスープで、コラーゲンたっぷり。鶏チャーシュー、九条ネギ、メンマのほか、水菜に変えて茹でキャベツ、ユズに変えて鶏そぼろがトッピングされている。外国人客も多いが、彼らに一番人気があるのが、この濃熟鶏そばだという

トマト+生クリーム+チーズが作る絶妙な味

完熟トマトの塩鶏そば1050円は女性に人気がある。
完熟トマトの塩鶏そば1050円は女性に人気がある。

「あっさり味」「濃熟味」と並ぶ3本柱の一つになっているのが完熟トマト味。清湯スープに完熟トマトを合わせ、生クリ-ムとチーズを入れた洋風スープだ。ほんのり香るアサリの出汁がスープにコクを与えている。

完熟トマトの塩鶏そばは鶏チャーシュー、キャベツ、水菜、プチトマト、鶏そぼろ、粉チーズをトッピングしている。白い丼とのコントラストもよく、映える一品といえる。生クリームのマイルドさ、チーズのコク、トマトの酸味などが混然一体となった複雑な味はクセになりそう。スープはねが心配な方は、紙エプロンを用意しているので、スタッフに声をかけるといい。

各種鶏そばの特徴を記したチラシも掲示している。
各種鶏そばの特徴を記したチラシも掲示している。

味変やサイドメニューで千変万化の味を楽しむ

清湯スープには味にパンチを与える三色ペッパー、濃熟スープやトマト味にはクラッシュガーリックがよく合う。
清湯スープには味にパンチを与える三色ペッパー、濃熟スープやトマト味にはクラッシュガーリックがよく合う。

テーブルの上にはラー油、クラッシュガーリック(ニンニクチップ)、節粉、三色ペッパー、一味、酢などが置かれている。お好みのものを入れて味変を楽しんでみよう。

黄身の味が濃くてクリーミーな卵かけごはん。
黄身の味が濃くてクリーミーな卵かけごはん。

鶏そばに一品添えるなら各種あるご飯料理から選びたい。鶏めし400円、鶏そぼろ丼370円、めんたい鶏雑炊250円、チーズリゾット250円、鶏ぶし卵かけご飯350円など、鶏そば専門店ならではのサイドメニューが勢ぞろいしている。小丼サイズなのでボリュームがあり、満腹度も高い。

清湯スープのあっさり鶏そば、濃熟白湯スープの濃熟鶏そば、トマト風味の完熟トマトの塩鶏そば。メニューはこの3つの味が基本となるが、それぞれの味のつけめんもあり、トッピングを変えることで味のバリエーションも多彩になる。さらにテーブルに置かれた各種調味料を加えれば千変万化の味を楽しめる。

清湯スープから白湯スープを作り、清湯スープにトマトなどを加えることでまったく新しい味になる。それぞれのスープに合わせて麺を変え、トッピングを変えることで、多彩な味を演出している。改めてラーメンの奥深さを知らされた思いがする。アメ横を訪れるときには、ぜひチェックしておきたい店といえるだろう。

「大山鶏で作る鶏そばは風味がよく、ヘルシーなので女性にもおすすめです」と話すスタッフ。
「大山鶏で作る鶏そばは風味がよく、ヘルシーなので女性にもおすすめです」と話すスタッフ。

取材・文・撮影=塙 広明