美味しさを保つ秘訣は「茶葉の弱点を知る」こと、そして「楽しむ」こと!

毎日飲む日用品としてはもちろん、嗜好品としても人気が高まっている日本茶。近年は、複数の茶種・品種を飲み比べできるセットや、デザイン性・保存性が高いオリジナリティ豊かなパッケージが登場するなど、商品バリエーションも楽しみ方も多様化しています。

そんなお茶の美味しさを少しでも保つためには、どのように茶葉を保存すればよいのでしょうか? そもそも、煎茶やほうじ茶、紅茶はすべて同じ保存方法でよいのでしょうか? 埼玉県入間市で狭山茶の栽培・製造を行う「的場園」の4代目・的場龍太郎さんのもとを訪れ、茶葉の保存にまつわる素朴な疑問をあれこれ聞いてみました!

教えてくれた人:的場園4代目・的場龍太郎さん

狭山茶の栽培から加工、販売までを一貫して自社で行う的場園。茶葉を使った食品の開発や、他業種や自治体と連携したイベントの開催などさまざまなプロジェクトにも挑戦し、広い視野で茶の性質や魅力を研究・発信しています。

4代目となる龍太郎さんが掲げるのは「次世代への狭山茶・日本茶の継承」です。子ども向けのワークショップはもちろん、狭山茶サウナや狭山茶ビールといったユニークな企画を立ち上げ、若い世代へ積極的にアプローチ。「楽しさがなければ続けられない」という信念のもと、0%だった日本茶への興味を1%にするための活動に日々奔走しています。

「保存方法ひとつをとっても、ワクワクする気持ちや家庭でできる手軽さがないと結局続けられず、継承されていきません。大事なのは、お茶の弱点を知りそれをカバーしながら、気軽に楽しむこと! ご家庭で実践しやすい方法をお伝えしますので、最後に示す一覧表も合わせてぜひ参考にしてみてください」

Q.1 まずは基本的な茶葉の保存方法を教えてください

はじめは未開封の茶葉の保存方法です。未開封の場合は茶種や茶葉の形状、パッケージのタイプに関わらず、すべての茶葉において、直射日光と高温を避けた冷暗所で保存するのが原則です。茶葉の弱点は「光」「高温多湿」「酸素」。できるだけこれらを避けることでよい状態を保つことができます。

現在のパッケージには、もともと光や酸素を通さないような加工が施され高い保存性があるので、買ってきたパッケージのまま保存します。ちなみに今は、次の3タイプのパッケージが主流になっています。

(左から順に)

①真空パック:茶葉を充填後、空気を抜いて真空状態にしたもの。製造効率がよくもっとも一般的。
②窒素パック:酸素を抜き窒素充填したもの。真空のように茶葉を圧迫しないので、茶葉が潰れたり折れたりする心配が少ない。高価格帯のお茶に使われることが多い。
③スタンドバッグ:酸素を抜き、開閉に便利なチャックを備えたもの。利便性やデザイン性が高いため近年人気。

どれも保存性は変わらないので、お茶を飲む頻度やシーンに合わせて、容量や利便性などを基準に選ぶとよいと思います。

Q.2 高温に弱いということは、冷蔵や冷凍保存してもよいのでしょうか?

確かに、温度が低いほど品質が維持され、フレッシュな香りや茶葉本来の旨味を保つことができます。【冷凍】→【冷蔵】→【冷暗所】の順でよい保存場所といえるでしょう。

ただし、注意していただきたいのは、急激な温度変化も茶葉にはよくないということです。冷凍からいきなり常温の中で開封すると結露の原因になり茶葉が傷んでしまいます。そのため、もし冷凍した場合は必ず一晩〜半日以上かけてゆっくりと常温に戻してから開封する必要があります。

でも日常的に飲むお茶にそこまで気を遣うのは面倒でしょう?(笑) なので、そういう市販茶は飲みたいときにすぐ飲めるように冷暗所で保存しながら、冷凍保存は、新茶やシングルオリジン、発酵茶など、フレッシュな香りを楽しみたいお茶くらいにしておくのがおすすめです。少しよいお茶は、ぜひ丁寧に扱ってじっくり味わってください。

Q.3 開けてしまった茶葉はどのように保存すればよいですか?

一度開封した茶葉はすべて常温(冷暗所)で保存してください。冷蔵や冷凍保存は厳禁! その上で、僕は茶種・形状の違いによって、次のような方法をおすすめしています。

①リーフティーは茶缶に入れ替えて保存。ポイントは「茶缶のサイズ」

お茶の弱点である「光」「高温多湿」「酸素」を効率よく遮ることができるのが茶缶です。袋から茶缶に入れ替えて保存しましょう。茶缶保存のコツは、なんといっても茶缶の「サイズ選び」。なるべく空気が入る隙間を少なくしたいので、保存する茶葉の容量に適した大きさのものを使ってください。缶いっぱいに茶葉を詰めることで茶缶内の空気量を減らし、酸化や湿気を防ぐことができます。

中蓋がギリギリ閉まるくらいぴっちりと茶葉を詰めるのが好ましい(参考サイズ:直径7mm✕高さ75cmmの茶缶で、深蒸し茶100g入る)
中蓋がギリギリ閉まるくらいぴっちりと茶葉を詰めるのが好ましい(参考サイズ:直径7mm✕高さ75cmmの茶缶で、深蒸し茶100g入る)

最近はデザイン性の高い茶缶もたくさん販売されているので、ぜひお気に入りのものを探してみてください。棚や食卓に置いておくだけで華やかになりますし、お茶を淹れる時間が楽しくなります。

②茶缶がなければパッケージを活用しても。お気に入りのクリップでかわいくアレンジ!

前述のとおり、もともとパッケージにも遮光や空気を遮る加工が施されているので、茶缶がない場合は茶袋自体も機能的な保存容器として使えます。

ただししっかり空気を抜くことが大切です。袋の余白の部分の空気を抜き(チャック式のスタンドバッグの場合も同様にしっかり空気を抜きましょう)、何度か折り込んで最後にクリップで止めればOK!

お好きなデザインのクリップでコーディネートも楽しんで。コンパクトに収納出来るので、お茶の種類をたくさん持っている方や、日常的にお茶を飲む方におすすめです。

③ティーバッグは“見せる”保存もOK! 茶種ごとに保存容器を使い分けておしゃれに
最近はティーバッグタイプの茶葉も増えましたよね。ティーバッグの場合、そもそも浸出時にバッグ内で茶葉が動くような空洞構造になっているため、空気を遮断するのが難しいのが現実です。なので、よりインテリア性を楽しみながら早めに飲み切りましょう。

◆煎茶

さまざまな茶種の中でも、煎茶は特に日光による変色を起こしやすいため、できれば遮光できる保存容器がおすすめ。もちろん茶缶でもよいですし、金属製の容器をお持ちならそれを使っていただいてもかまいません。

◆ほうじ茶・紅茶

比較的光に強く変色の心配が少ないので、中身が見える透明のキャニスターでおしゃれに楽しんでみてはいかがでしょうか? プラスチックだと臭い移りする可能性があるのでガラス製でフタがゴム付きのキャニスターがおすすめです。

どちらにも食品用の乾燥剤(100円ショップなどで購入可)を入れておくと湿気を防ぐことができます。

今の流れを一覧でまとめたのが以下です!

Q.4 開封した茶葉はどれくらい日持ちしますか?

1ヶ月くらいで飲み切るようにしてください。古くなった状態を見極めるのは難しいので、袋やキャニスターに開封日をメモしておくなどして、期間を目安にするとよいと思います

Q.5 新鮮なお茶を飲むためには、少量ずつ買ったほうがいいのでしょうか?

新茶やシングルオリジンなど、フレッシュな香りや味わいを楽しみたいお茶は少量ずつがおすすめですね。ただし、毎日飲むお茶を必要以上に小分けにして買うといった不便なことをあえてする必要は僕はないと思っています。

最近は製造現場でも「家庭ではある程度空気に触れてしまう」ことを想定した製品づくりが進んでいます。たとえば、少し強めに焙煎・乾燥させることで酸素や湿気を吸収しにくくしたり、萎凋という半発酵のような加工を行って、時間経過とともに味の変化を楽しめるようにしたりしたものなどがあります。日本茶はあくまで農作物なので、変化を味わうのも楽しみ方のひとつです。

ただし、どんなお茶でもやはり3つの弱点は極力避けたほうがよいので、Q.1の保存方法を実践してください。

Q.6 古くなった茶葉を、美味しく復活させる方法はありますか?

フライパンで軽く炒ることで美味しく飲むことができます。吸収してしまった水分を飛ばし、酸化による嫌な臭いを香ばしい香りに変えてあげましょう。方法も簡単ですよ。

用意するもの:アルミホイル、フライパン、古くなった茶葉(今回は煎茶を使用)

①フライパンにアルミホイルを敷き、中火で温める(ホイルを敷くのは、普段の調理でフライパンに染み込んだ油が茶葉に移らないようにするため
②古くなった茶葉を広げて入れ、中火のまま、焦げないよう常にかき混ぜながらお好みの香りになるまで炒る。1〜2分ほどが目安(茶葉が赤くなるまで炒るとほうじ茶になる)
③皿などに上げ、粗熱を取る。

リメイクした茶葉も、Q.1の方法でしっかり保存を!

“楽しさ”を感じてもらうことこそ、茶文化継承への近道

もちろん、美味しさを保つことだけを究極的に突き詰めれば、より厳格な管理をしなければなりません。でもそれはプロがすればよいことであって、家庭で続けられること、ましてやワクワクしながらできることでないと暮らしには馴染まないと僕は思っています。

お茶って、本当に楽しい日本の文化だと思うんです。今、1200年以上の歴史の最先端を担っていることを僕は誇りに思っています。伝統ももちろん大切ですが、まずはそのおもしろさを肌で感じてもらうことこそ次世代に日本茶文化を残す一番の近道。基本の茶の性質を理解しつつ、容器選びも茶袋も、ぜひ自分らしく楽しんでください。

的場園

住所:埼玉県入間市南峯6804-2936-0615
営業時間: 9:00〜18:00
定休日:年中無休
オンラインショップ: https://matobaen.base.shop/

写真・吉田浩樹  文・RIN(Re:leaf Record)