寒さが生み出す冬の空の魅力とは?

めったに雪が降らない関東では、冬といえば真っ青な青空が主役です。冷たい空気がきーんと張り詰める中で広がる快晴のことを「凍晴れ(いてばれ)」といいます。見れば心が洗われるように感じる綺麗な青空は、厳しい寒さが生み出しています。気温が低いと空気中の水蒸気が少なくなるため、青々と澄みきった空が広がるのです。

寒さが生み出す凍晴れの空。
寒さが生み出す凍晴れの空。

冬の空は夕暮れ時も魅力的です。寒い日の夕焼け空のことを「寒茜(かんあかね)」といいます。真っ赤に空を染める夏の夕焼けに比べて、冬の夕焼けは淡い色をしています。ほんのりピンク色に染まった空は、優しく私たちを包み込んでくれるようです。

冷えた身体も心も癒してくれる寒茜。
冷えた身体も心も癒してくれる寒茜。

冬の景色に彩りを添える「風花」「六花」「不香の花」ってどんな花?

草木が枯れ果て、少し淋し気な景色になる冬ですが、この季節にだけ見られる「花」があります。「風花」、「六花」、「不香の花」。これらはどんな花かご存じでしょうか?実は、花といっても本物の花ではなく、全て「雪を表すことば」です。「風花(かざはな)」とは、晴れた空にちらつく雪のことです。強い北寄りの季節風に乗って、日本海側から太平洋側まで雪が運ばれてきたときによく見られます。

また、雪の結晶の多くは六角形をしていることから「六花(むつのはな)」、匂いがしない花ということで「不香の花(ふきょうのはな)」と呼ばれることもあります。確かに木に降り積もった白く輝く雪は可憐な花のように見えて、とても美しいです。

出会えたらラッキー?! 丸々と可愛らしい「ふくらすずめ」に注目

冬の散歩の必須アイテムといえば、もこもことしたダウンコートですよね。暖かいダウンコートが手放せないのは私たち人間だけではないようです。寒空の中、身体をまん丸に大きくした「ふくらすずめ」たちを見たことはありませんか?すずめは寒くなると、羽根の中に空気の層を作って、熱を逃がさないように身を守ります。

「ふくらすずめ」はふっくらとした様子から豊かさや繁栄の象徴とされ縁起物としても古くから親しまれてきました。丸々とした姿はとっても愛らしく、お散歩中に見かけると、福が訪れるかもしれません。

真冬の散歩はダウンコートが必須。
真冬の散歩はダウンコートが必須。
すずめたちも自前のダウンコートで寒さ対策。
すずめたちも自前のダウンコートで寒さ対策。

梅に寒桜、ロウバイも。「小さな春」を探してみよう

まだまだ冷え込みは続くかと思いきや、「小さな春」に出会えることもあります。ことしもすでに、ちらほらと「梅の花や寒桜が咲いているのを見つけた!」という声が届き始めています。梅はどんな花よりも早く咲くことから「春告草(はるつげぐさ)」「花の兄」とも呼ばれています。

「探梅(梅の花を探して見歩くこと)」「寒梅」、「早梅」ということばもあり、すべて冬の季語です。梅のほかにも、「寒桜」や「水仙」なども寒い時季に開花する花で、殺風景になりがちな冬の景色に彩りを加えてくれます。

寒い時季に咲く花の中で私が好きなのは、冬の青空によく映えるロウバイです。ロウバイは小さな黄色い花を咲かせ、その透き通った花びらの様子はまるでろう細工のようです。気品高い優しい香りを届けてくれますが、お辞儀するかのように下向きに花開く姿からは奥ゆかしい美しさが感じられます。

寒いとつい早歩きになってしまう冬ですが、この季節だからこそ楽しめる景色を見逃さないように味わってみるのはいかがでしょうか?

 

写真・文=片山美紀