座談会に参加したのは……
武田(統括編集長・TOP写真中央)
コーヒーとジャズに一家言あり。愛する家族のためになにかと凝りがち。
久保(本誌編集長・TOP写真右から2番目)
大衆酒場通いが日課の飲んべえ編集長。このあと衝撃の事実が発覚する。
高橋(本誌編集部・TOP写真1番右)
本誌ではラーメンと日本酒担当のグルマン。こだわりもクセも若干強め。
吉岡(本誌編集部・TOP写真左から2番目)
今回の取材でトーストにハマった特集担当。中華圏のざっくばらんなお店が好き。
中村(本誌編集部・TOP写真1番左)
武田同様にコーヒーは豆から挽くタイプ。生粋のビートルズ好き。
「コロナ禍に突入してから、家で楽しむ道具の需要は増えたよね」
武田 喫茶店特集はやったことあるけど、パン屋さんと組み合わせるのは初めてだね。
吉岡 私はどっちも大好きなので、本当に楽しかったです。
久保 ……俺、実はパンもコーヒーもあんまり好きじゃないんだよね。
全員 え……?(動揺)
武田 な、なんで?
久保 香りが……。小麦やバターの焼けた匂いが苦手なんです。
吉岡 ライターの高野さんなんか、「幸せの匂いがするねぇ!」って言いながら楽しそうに取材していたのに……。
武田 珍しいね。コーヒーはなんでダメなの?
久保 気持ち悪くなっちゃう。
武田 酒はあんなに飲めるのに。
久保 そもそも喫茶店にもあんまり行かない。最近はタバコも吸えないし。でもこの頃は、本も読めるし自分の時間を過ごせる場所だなと思い直しました。
吉岡 コーヒー飲まないなら、何を頼むんですか?
久保 レモンスカッシュかコーラだね。でもお店で飲むと、氷が多めでまあまあ値段が高いじゃない。だから自分が喫茶店を開くなら、氷抜きでなみなみ注ぎたい。大衆酒場の喫茶店バージョンみたいにね。
武田 (興味なさそうに)ふーん。
吉岡 武田さんはパンもコーヒーも大好きですもんね。
武田 そりゃあ好きだよ。基本的にみんな好きでしょうよ。
中村 私と武田さんは、わりとこだわる方ですよね。
高橋 2人は豆からコーヒー挽くんですよね?僕はペーパードリップまでだなあ。
久保 「おうちベーカリー」で豆から挽いたけど、すんげえめんどくさかった。
武田 でも1回挽くとやっぱり違うよ。絶対挽いた方がいいよ。
久保 まあ、その辺で買うよりおいしい感じはしたけど。
武田 コロナ禍に突入してから、家で楽しむ道具の需要は増えたよね。電動のグラインダーとか、2〜3万円くらいする結構いいやつが、人気で買えなかった。
吉岡 挽きたての豆はドリップするとすっごい膨らみますよね。
中村 挽きたてはいいよね。焙煎所で買って3日くらいはよく膨らむ感じ。
武田 でも豆は挽いてから1週間くらい寝かせておいた方が甘みが出て旨いんだってさ。昔、「大坊珈琲店」で聞いたことがある。
吉岡 あの大坊さんが。
武田 いい店だったよねえ。
喫茶店はわざわざ行く場所?
高橋 ところでみなさん、喫茶店には何しに行くんですか?何かを食べに行くんですか?
中村 え? それは時間つぶすとか、行ってみたいお店があれば行くでしょう。
吉岡 読書とか、1人でぼんやりしたい時は好きな喫茶店に行きますけどね。
高橋 実は僕も久保さんと一緒で、1人だとあんまり喫茶店入ろうって気持ちにならない。
久保 夕方前で、居酒屋がまだ開いてないときは俺も喫茶店入るけどね。最近は。
中村 わざわざ行くのも、ふらっとお店に入るのもどっちも喫茶店の楽しみ方なのかな。気張らずに。
高橋 僕も喫茶店にもっと通える大人になろう。
武田 会社の近くの喫茶店とかは、たま〜に知ってる人に会っちゃうから気まずいよね。
久保 知り合いに限らず、周りに人がいると落ち着かないですね。喫茶店で相席も嫌だなあ。
武田 そんなところある?
吉岡 チェーン店とかは多いですよ。あの、長机で相席になるようなお店はなんか疲れちゃいますよね。落ち着かなくて。
中村 わかる。まあ、回転率もあるから仕方ないんだろうけど。
武田 デカい長机ならいいんじゃないの。対角線上に座っててもイヤなの?
吉岡 嫌ですね。あと明るくて開放的なお店もソワソワしちゃう。自分で喫茶店を開くなら、暗くていい感じに狭くて隣の席との間隔が広いところにしたい。
久保 『神田伯剌西爾(ぶらじる)』みたいな。
吉岡 そうそう。2022年に閉店しちゃったけど会社の近くにあった、「プリマベーラ」とか。サッと出してくれて、あとはご自由にどうぞって感じのところがいい。
武田 えっ。あそこ閉店しちゃったの。知らなかった。
吉岡 名店の閉店、続きますね。
いつしか話題は理想の喫茶店談議に……
久保 他に自分のイメージに近い、理想の喫茶店はあるの?
吉岡 今回でいうとやっぱり『穂高』や平井の『珈琲ワンモア』。家族で切り盛りしてるお店は、不思議な安心感がありますよね。あと、学生時代に過ごした台湾の喫茶店はいい意味で適当なお店が多くて、そんな雰囲気も憧れます。
久保 なるほどね。俺は今回取材した『プルミエメ』の穴場感がすごくよかった。新しいお店なんだけど、ひっそりしてて。
吉岡 久保さんがお店を開くならどんな雰囲気にしたいですか。
久保 中野に昔あった「クラシック」が好きだった。持ち込み自由で、落ち着ける感じで。俺がやるなら郊外で開くかな。なんかこう、家みたいな店を。家系喫茶。
武田 ラーメン屋じゃないんだから。
中村 私の理想は西荻にあった「ダンテ」かな。包み込まれる隠れ家みたいな感じが好きだった。
高橋 西荻は名店が多いよね。やっぱり中央線で開きたい?
中村 うーん。自分で開くなら新宿かな。実は、曾祖父母が新宿でジャズ喫茶をやってたらしいんだよね。
武田 えーーっ。何それ。なんてお店だったの?
中村 「噺(はなし)」っていう。
吉岡 カッコよすぎる。じゃあ、いつかそれをリバイバルですね。
高橋 新宿といえば、『らんぶる』が好き。ああいう喫茶店の空間自体はすごく好きなんだけど、コーヒーがだんだん冷めちゃうのがあんまり好きじゃなくて。温かいものは温かさを維持できるような仕組みの店にしたい。
中村 おいしいコーヒーは冷めてもおいしいんじゃないの。
高橋 つけ麺屋でスープあっためなおしてくれる石、あるじゃない。ああいうのとか。
久保 俺たち、発想が全部ラーメンじゃねえか。
武田 私は一見そっけないというか、こだわってるけどそれを感じさせない雰囲気の店がカッコいいと思ってるんだよね。ルールが細かくてこだわりが見えすぎると、緊張するじゃない。
吉岡 わかります。ふらっと入るには勇気がいるお店、ある。
武田 清澄白河の『ザ・クリーム・オブ・ザ・クロップ』なんかはすごいよ。喫茶店というか焙煎所なんだけど、工場の中にソファがポンと置いてあるのがいい。放っておいてくれる感じがね。
パン屋さんと喫茶店。街の中での発見は?
吉岡 理想のお店談義は後ほど続けるとして。今回はパン屋さんでの発見も多かったですね。
高橋 『パン屋塩見』でいただいた焼き立てのパン、おいしかった。あんなお店が近所にあったらなあ。
久保 パンは苦手だけど、フレンチトーストはなぜか好きなんだよね。それで今回は「古典的フレンチトーストの美学」という企画を担当しました。で、掲載した4軒中、3軒は地元のパン屋さんからパンを仕入れてて。単純にそういう付き合いがあるってことが発見だった。
中村 「ご近所なかよし名コンビ」で取材した『Boulangerie Django』と『Single O Hamacho』は、取材前にもお互いに買い物をしていて、お向かい同士で日常的に交流があるのが垣間見えてほほえましかった。
武田 まあ、毎日使うものだから、近くにいい仕入れ先があるのは幸せなことだよね。
吉岡 お店同士の仕入れの関係はパン屋さんと喫茶店に限った話じゃないですが、どっちもお客さんとして気軽に訪ねていけるのがこの両者。深掘りしがいのあるテーマでした。
武田 パンがよければ旨いってわけじゃないもんね。切り方とか、焼き方で個性が出る。
吉岡 喫茶店で食べたトーストがおいしかったとき、そのパンを作っているパン屋さんに行ったり、反対にパン屋さんが商品を卸している喫茶店に行ってみたり。街の中で両者のつながりを発見していくおもしろさを、この特集で感じてもらえたらと思います!
妄想大炸裂!編集部が考える理想の喫茶店&看板メニュー
アフタートークが終わった後も、本誌編集部の“理想の喫茶店”談義はまだ続き……。
本誌編集長・久保が考えたのは……
店名
「喫茶ぐぅたら」
メニュー名
店長本気のウインナーパン 焼きそばパン 各400円
コーラ 300円
こだわりポイント
店長本気シリーズは、食材すべて店長による手作り。なんなら焼きそばの麺も。老後の遊びなので利益は度外視。コーラには氷を入れず、グラスは冷凍庫で冷やしておくスタイルに。
本誌編集部・中村が考えたのは……
店名
「Sgt. Pepper’s Cafe」
メニュー名
酔える深煎りモカマタリ&エピセット 900円
こだわりポイント
コーヒーはウイスキーを加えてクリームを乗せたアイリッシュコーヒー風。でも、砂糖は入れません。コショウの効いた塩っ気強めの生ハムのエピには、甘くないコーヒーがよく合うのです。
統括編集長・武田が考えたのは……
店名
「やすめメロス」
メニュー名
老人と海 550円
ストレートコーヒー 500円
こだわりポイント
梅酒を漬け終わった梅で作った黒糖ジャムを、近所で仕入れたイギリスパンに塗ったもの。豆は「老人と海」にちなんでアフリカの豆。エチオピアのイルガチェフとかクセが強くていいかと。
本誌編集部・吉岡が考えたのは……
店名
「童年往事」
メニュー名
こしあんぱん 300円
烏龍奶茶(ミルクティー) 450円
こだわりポイント
台湾カフェの定番ドリンクに日本のこしあんぱんを掛け合わせた夢のコラボ。烏龍ミルクティーは砂糖は使わず、さっぱりした後味に。牛乳よりも少し余韻が残る感じ。台湾映画の名作みたいにね!
本誌編集部・高橋が考えたのは……
店名
「喫茶魔女見習い」
メニュー名
日替わりベーグルと豆乳セット 700円
構成・撮影=吉岡百合子(本誌編集部)
『散歩の達人』2023年2月号より