冬になると、関東など太平洋側の地域では安定して晴れる日がぐっと増えます。2020年までの東京の天気出現率(過去30年の天気を振り返り、晴れ・曇り・雨・雪の4つに分けて日ごとに算出した確率)を月ごとに調べると、晴天率が70パーセント以上の高い日は、多い順に1月が23日、12月が19日、2月が9日あり、冬の寒い時期に集中していました。
夏も太陽が照り付けて晴れる日が多いイメージがあるかもしれないですが、気温の上がる午後はいわゆる「ゲリラ豪雨」が起こりやすいので、イルミネーションを眺めながら夜道をのんびりと散歩するのには向かないでしょう。
また、冬は日が暮れるのが早いからこそ、その分、イルミネーションを長い時間楽しめます。イルミネーションの点灯は夕方5時頃からのところが多いので、お仕事帰りにフラっと寄り道するのもいいですよね。
さらに、街中では街路樹を利用したイルミネーションが多くありますが、葉が生い茂った木よりも葉の少ない木のほうがイルミネーションの光が映えます。冬は街路樹の葉が枯れ落ちるため、キラキラ感が増して一層綺麗に見えるのです。
イルミネーションが綺麗に見える天気とは?
なかでも、気象予報士の私がイルミネーションを見るのにおすすめしたいのは、「冬型」の天気の日です。
「冬型」の天気は、テレビなどでよく見る天気図で日本付近が「西高東低」の気圧配置になるときに現れます。「西高東低」とは、日本の西に当たる大陸に「高気圧」、東に広がる海の上に「低気圧」があることです。
「西高東低」の気圧配置になるときの天気の特徴は、2つあります。
- 関東など太平洋側でカラッっと晴れて、湿度が下がる
- 北よりの風が強く吹く
「西高東低」の気圧配置になるとき、日本の天気は本州の真ん中を走る脊梁山脈を境にガラッと傾向が変わります。日本海側には海の上で発生した雪雲や雨雲が流れ込む一方で、太平洋側では山から乾いた風が吹き降ります。このため、関東ではよく晴れて、空気がカラカラに乾燥することが多くなるのです。
湿度がぐっと下がれば、空気中の水分が少ないクリアな空が広がります。
空気が澄んでいると、イルミネーションの光はより綺麗に見えるのです。さらに、強い風が吹くと、チリやほこりが吹き飛ばされる上に、いくつもの光がキラキラと瞬くように輝いて見えます。
特に天気図上で等圧線がたて縞模様になり、せまい間隔で並ぶ時がベストです。
等圧線の間隔がせまいのは風が強い証拠で、風が吹く度にイルミネーションが星のように瞬いて輝きを増します。天気予報をチェックするときは、ぜひ天気図の模様にも注目してみてください。
イルミネーション散歩に必須のアイテム
ただし、冬型の天気のときは晴れていても北よりの風が強く吹きつけるため、万全な寒さ対策が欠かせません。一般的に風速1m/sにつき、体感温度は1℃低くなるといわれます。厚手のコートにマフラーや手袋などで、冷たい風を通さないように十分に暖かくしてお出かけくださいね。
そして、もうひとつ、私がおすすめしたいのは温かいドリンクを持ち歩くことです。冬に街歩きをしていると喉がカラカラに乾いてしまったという経験はありませんか?冬の関東は湿度が10パーセント台まで下がることもあり、とにかく空気が乾燥しています。温かい飲み物で身体を冷やさないようにするだけでなく、のどの潤いもキープして風邪をひかないように気を付けましょう。
参考:東京管区気象台 天気出現率
https://www.data.jma.go.jp/tokyo/shosai/bocho/tenki/link.html
写真・文=片山美紀