◆散歩コース◆

体力度:★☆☆
難易度:★★☆

  • 登山シーズン 1月~6月、10月~12月
  • 最高地点 349.3m(富山・北峰)
  • 登山開始地点 60m(国保病院前バス停)
  • 歩行時間 4時間15分
  • 歩行距離 約10.5km

 

スタート
国保病院前バス停
バス停から歩き出すとすぐ伊予ヶ岳の姿。ほどなく左手に鳥居が見えてくる、その先に平群天神社がある。

平群天神社
神社の左手が登山口になる。上がっていくと富山への分岐がある。東屋のある展望台はすぐ。

展望台(東屋)
展望を楽しんだら、いよいよロープのある急坂を上がっていく。慎重にゆっくり登ろう。15分程度で山頂だ。

伊予ヶ岳
下りは登りに増して危険なので、ロープを十分利用して下ろう。分岐から富山方面へ。30分で六地蔵登山口。

六地蔵登山口
ここから富山の麓までは快適な里山歩き。富山を正面に見ながらの散歩になる。振り返れば伊予ヶ岳。

登山口
ここから舗装路を約30分ほど上がる。展望もないので少々つらい登りとなるが、しばし我慢のとき。

富山
北峰から戻って伏姫籠穴方面へと下山する。富山中学校の先のバス停からバスで駅へ向かってもよし。

ゴール
岩井駅



アクセス:
[行き]東京駅からJR総武線で木更津駅へ。木更津駅からJR内房線で岩井駅へ、約2時間15分。
[帰り]岩井駅からJR内房線で木更津駅へ。木更津駅からJR総武線で東京駅へ、約2時間15分。


東京駅前から高速バスも利用できる。木更津駅か君津駅までバスで行き、そこから内房線で岩井駅へ行く方法も。所要時間は電車とほぼ同じで2時間程度。運賃もほぼ同じである。

房総のマッターホルンこと伊予ヶ岳と展望の山、富山(とみさん)を巡る山歩き

そもそもその名は伊予の国(愛媛県)にある石鎚山(いしづちさん)の最高峰、天狗岳に似ていることから名称がついたという。天狗岳がどんな山なのか知らなければ、なんとも言い難いが、あちらの標高はほぼ2000m。かつての修験の行場の山で、クサリ場が続く。70mほどの長いクサリもあったりするという本格派の行場である。実際、山の姿はたしかに似ている。が、それ以外は及びもつかない。

伊予ヶ岳に登ってから、ほど近い富山に登って戻るルートを紹介する。

岩井駅からはバスで伊予ヶ岳の麓まで。「トミー号」というやさしいバス名が、なんとも猛々しい伊予ヶ岳にそぐわないような気がするが、それはどうでもいい。

国保病院前で下車し、スタートすると、すぐ千葉の天狗岳が見えてくる。角度にもよるが、本場の山にそっくりな山容。これは登攀意欲が湧いてくる。逆に「まいったな~」、と思う人も多いかもしれない。

まもなく登山口になる平群天(へぐりてん)神社が見えてくる。この神社は菅原道真公を主祭神とする。道真公は学問の神だが、この際、それはどうでもよく、とにかく安全を祈願して登りたい。

神社の脇の道が登山口になっている。富山方面に行く分岐まではまったく展望のない樹林の中。分岐からさらに上がると、東屋のある展望台へ到着。ここからは、上の山頂とほぼ同じような展望が得られる。ちょっと低いので多少違うが、十分な眺め。岩場の上り下りが苦手だという向きは、ここで満足して下山することをおすすめする。

岩場をロープで登り、伊予ヶ岳南峰の山頂へ

伊予ヶ岳山頂ではなく、下の東屋のある展望台からの眺望。付近の集落や田んぼが見える。
伊予ヶ岳山頂ではなく、下の東屋のある展望台からの眺望。付近の集落や田んぼが見える。

展望台の先に行くと、看板あり。

「ハイキングコースはここまでです」と書いてある。この先は岩登り。

目の前に一本の長いロープがぶら下がっていて、それに何人かが取りついている。最初は垂直のような岩場に見えるが、そうでもないので、あせらずゆっくり行けば登れる。最初のロープが終わっても終わりではない。またロープ、ロープと、山頂近くまで何度もロープが出現する。

「ハイキングコースはここまでです」からすぐ現れる1本の長いロープ。これは長いけれど比較的楽に登れる。小手調べのロープか。
「ハイキングコースはここまでです」からすぐ現れる1本の長いロープ。これは長いけれど比較的楽に登れる。小手調べのロープか。

最後のロープを終えて山頂に飛び出すと、見事な眺めが待っていた。眼前に双耳峰の富山や付近の集落や低山など。遠くには東京湾とうっすら富士山も。まるで箱庭のように見えた。

伊予ヶ岳も富山と同様、双耳峰で、これは南峰からの眺望。正面に富山がどっかりと居座る。周辺の眺めも秀逸だ。
伊予ヶ岳も富山と同様、双耳峰で、これは南峰からの眺望。正面に富山がどっかりと居座る。周辺の眺めも秀逸だ。

慎重に下って、分岐から富山方面へと向かう。六地蔵登山口へ下り、富山の登山口まで小1時間。のんびり里山歩きの気分。登山口から30分ほどで富山の北峰へ到着。展望台へ上がると、東京湾がはっきりと見え、行きかう船もくっきり。

伊予ヶ岳から下って、富山へ向かう途中の道。田園の中の道もまたいいものだ。
伊予ヶ岳から下って、富山へ向かう途中の道。田園の中の道もまたいいものだ。
富山周辺の菜の花。1月のスイセンの季節が終われば、2月の初めから3月いっぱいくらいは菜の花のシーズンになる。
富山周辺の菜の花。1月のスイセンの季節が終われば、2月の初めから3月いっぱいくらいは菜の花のシーズンになる。
富山へ行く登山口を上がっていくと、背後に見える伊予ヶ岳の雄姿。上部、右側の尖がっている山頂が南峰になる。
富山へ行く登山口を上がっていくと、背後に見える伊予ヶ岳の雄姿。上部、右側の尖がっている山頂が南峰になる。
富山北峰の展望台からの眺望。岩井の街並み、東京湾と三浦半島。相模湾の奥には丹沢の山々。その先に富士山がうっすらと顔を出している。
富山北峰の展望台からの眺望。岩井の街並み、東京湾と三浦半島。相模湾の奥には丹沢の山々。その先に富士山がうっすらと顔を出している。

伊予ヶ岳も富山もどちらも400mにも満たない低山だが、眺めは申し分のないものだ。これぞ千葉の低名山といってもいいだろう。

帰りは南峰へ寄ってもいいし、伏姫籠穴(ふせひめろうけつ)のあるコースをとってもいい。どちらも岩井駅まで1時間半程度。

山歩きメモ

富山からの下りのルートは2ルートあり。紹介した伏姫籠穴を通るルートのほかに、南峰から福満寺へ下りるルートも。すぐ近くに宮谷口バス停があるので、駅へ急ぐ場合にはいい。

アドバイス

伊予ヶ岳の岩場のレベルは、普通の低山歩きのレベルではないのでそのつもりで挑戦しよう。最初のロープを見て、これはちょっと無理かもと思ったら引き返そう。手前の東屋のある展望台からの眺めでも満足できる。

伏姫籠窟

南総里見八犬伝の舞台でもある籠屈

富山中腹にあるこの籠穴は「南総里見八犬伝」の物語に登場する伏姫と飼い犬の八房が籠ったとされる籠穴。ここで伏姫が八房の子を身ごもったとされるが、もちろん創作である。八犬伝は江戸時代後期、1814年(文化11)から1842年(天保13)までのなんと28年の歳月をかけ刊行された長編小説で、全98巻、106冊の大作。作者は曲亭馬琴。江戸時代の戯作文学では代表的なもの。

平群天神社

村の鎮守は、学問の神様でもあった

伊予ヶ岳麓の登山口にある神社で、菅原道真公が主祭神。1353年(文和2)に北野天満宮を勧請したのが創建とされる。1586年(天正14)に本殿が改築され、さらに1808年(文化5)に再建された。もともと平群九ヶ村の鎮守として尊崇されていたが、明治維新後の分村によって平久里中だけの鎮守となった。学問の神様だけあって、受験シーズンには参拝者でにぎわうそうだ。

取材・文=清野編集工房
『散歩の達人 日帰り山さんぽ 低山をきわめる!』より