◆散歩コース◆

体力度:★☆☆
難易度:★☆☆

  • 登山シーズン 1月~6月、10月~12月
  • 最高地点 75m(大黒山)
  • 登山開始地点 4m(安房勝山駅)
  • 歩行時間 2時間
  • 歩行距離 約6km
スタート
安房勝山駅
駅から国道127号へ出て左へ。佐久間川を渡ってすぐ右折する。大黒山の麓へ。大黒山展望台入り口がある。

大黒山展望台
大黒山へ行く登山道は山頂まで舗装されている。低いだけではなく山の感じがあまりしない。

勝山漁港
下山は来た道を戻る。法福寺に出てから右手のほうへ行けば勝山漁港に出る。みささぎ島を見物して、海岸線沿いの道を進む。

源頼朝上陸地
佐久間川を再び渡って、竜島海岸の砂浜を歩いて行った先に頼朝の上陸地といわれる場所がある。

真珠島
大六港の先の左手に小さな島が見えてくる。真珠を養殖していたという真珠島。前は渡れたが今はだめ。

ばんや
国道に合流して、道の駅きょなんを過ぎれば保田漁港の中に有名な「ばんや」がある。保田駅までは20分。

ゴール
保田駅

アクセス:
[行き]東京駅からJR総武線で木更津駅へ。木更津駅からJR内房線で安房勝山駅へ、約2時間15分。
[帰り]保田駅からJR内房線で君津駅へ。君津駅からJR内房線で東京駅へ、約2時間。

東京駅前から高速バス「房総なのはな号」で上総湊駅前や木更津駅まで行き、内房線に乗り換えて安房勝山駅へ行く方法もある。所要時間はほとんど変わらない。運賃もほとんど変わらない。バス好きにおすすめ。

大展望を満喫し、潮風に吹かれて海の幸に舌鼓を打つ

勝山漁港の近くにあるこの山は、地元のシンボルともいえる山というか展望台。地元では誰もが知っている有名な山だが、観光的にはあまり知られていない。登山などをする人には、さらに知られていない。山と認識する人もほとんどいないと思う。真面目に取り上げるのは、たぶんこのムックくらいのものだろう。

1990年に鋸南町30周年を記念して山頂に城のような展望台がつくられた。下から見ると山城のように見えるが、単なる展望台。これは山城好きを惑わせる建築物でもある。いろいろあるが、極めつきの低山なのに、思いのほか展望はいいのが不思議。ではさっそく登ってみよう。

安房勝山駅を出て佐久間川に差しかかると、右手に立派な独立峰。山の麓の看板には素敵な字面で「登山のお客様へ」とあるではないか。登山の二文字が入っているということは、そう、やはりここは山だったのだ、と再認識する。

山頂までは10分から15分くらいで登頂できる短い行程だが、そこに山登りの何たるかが凝縮されているはずだ。少し上がっていくと、房総ではメジャーな富山(とみさん)が見えてきた。

これは意外と展望がいいのかな、と期待がやや膨らんでくる。

勝山漁港から富山まで、標高75mからの展望に感嘆

山頂には、やはりニセ山城があった。コンクリート製の復元山城なので、なんの感動もないが、それはまた別。山となれば、復元もコンクリートも関係がない。展望あるのみ。これが素晴らしい展望なのだ。

大黒山から東側を望む。左に見える双耳峰が富山。下に内房線も見える。山頂からの展望は海側も素晴らしい。
大黒山から東側を望む。左に見える双耳峰が富山。下に内房線も見える。山頂からの展望は海側も素晴らしい。

とても標高75mとは思えない。すぐ下の勝山漁港と無人島の浮島、背後には双耳峰の富山、そして周辺の風景などなど。期待以上の展望に満足して下山した。

これも大黒山からの眺望。西側の東京湾に浮かぶ周囲800mの無人島、浮島だ。左側の小さな島は大ボッケという名がある。
これも大黒山からの眺望。西側の東京湾に浮かぶ周囲800mの無人島、浮島だ。左側の小さな島は大ボッケという名がある。

勝山漁港に立ち寄ってから、西側に突き出た岬のほうへ行くと、大黒山が大きく見えた。山の麓のこの辺は、昭和30年頃は遊園地や水族館などがありにぎわった場所だったらしい。古びた旅館や、「おみやげ」の看板がかかった、かつては店だった家並みが残っていた。

勝山漁港沖合のみささぎ島の近くの岬から大黒山を仰ぎみる。標高は低いけれどなぜか高く見える。
勝山漁港沖合のみささぎ島の近くの岬から大黒山を仰ぎみる。標高は低いけれどなぜか高く見える。
これがみささぎ島。傾城島ともいう。日本武尊の妃が身を投げて荒海を静めた際の亡骸が漂着した島。という神話が残る。
これがみささぎ島。傾城島ともいう。日本武尊の妃が身を投げて荒海を静めた際の亡骸が漂着した島。という神話が残る。

佐久間川を再び渡り砂浜を歩いていくと、源頼朝上陸地。「鎌倉殿」は、1180年(治承4)、石橋山の戦いに敗れて真鶴の海岸から船でここへ逃れてきた。安房国には2週間ほどしか滞在しなかったようだが、安房国の人々は頼朝に大いに協力したようだ。

1180年(治承4)に挙兵し、石橋山の戦いで平家に敗れた源頼朝は、真鶴から安房の国へ船で逃れてきた。その上陸地がこことされる。
1180年(治承4)に挙兵し、石橋山の戦いで平家に敗れた源頼朝は、真鶴から安房の国へ船で逃れてきた。その上陸地がこことされる。

大六海水浴場から先に、ぽつんと小島がある。真珠島といい、昭和30年代に島で真珠を養殖していたという。島の最上部に錆びた鉄の柱が残っていたが、それが遺構なのだろう。

昭和30年代、アコヤガイを養殖して真珠を採っていたという真珠島。現在、島には渡れなくなった。
昭和30年代、アコヤガイを養殖して真珠を採っていたという真珠島。現在、島には渡れなくなった。

遠くに鋸山が見えてきた。保田駅の手前にある「ばんや」に寄って、海の幸を食べて行こう。

保田漁港。定置網ではイサキ、ブリアジ、サバ。イカなど、いろんな魚介が捕れるそうだ。それが「ばんや」に直行だ。
保田漁港。定置網ではイサキ、ブリアジ、サバ。イカなど、いろんな魚介が捕れるそうだ。それが「ばんや」に直行だ。

山歩きメモ

勝山漁港近くには「ばんや」のように漁協直営の「なぶら」がある。こちらも人気が高い。魚介類のボリュームもあり料金も安い。火水曜が休みで、11:00~15:00まで営業。

アドバイス

大黒山は山の名はついているが、山であって山ではないようのもの。登山道も舗装路だし、ほかも舗装路と砂浜歩きくらいなので、登山靴ではなく、ウォーキングシューズのような軽めのシューズがよい。

ばんや

隣の漁港直送の鮮度抜群の魚介は旨いに決まっている!

刺身の三点盛。
刺身の三点盛。

保田漁協直営の大型規模の食堂。もともとは漁師のために開いた食堂を一般に開放したら人気が出て、すでに20年を越えた。隣の保田漁港から仕入れた魚を料理するわけだから鮮度は申し分ない。日帰り入浴ができる「ばんやの湯」も併設。

●9:30~17:00 LO(平日)・土休日は18:45LO、無休(新館とばんやの湯は火曜休み)。保田駅から徒歩20分 ☏0470-55-4844。

ばんやの隣には干物などを販売しているみやげ物屋があり、そこで干していたうつぼの干物。皮は固いが、味はいいそうだ。
ばんやの隣には干物などを販売しているみやげ物屋があり、そこで干していたうつぼの干物。皮は固いが、味はいいそうだ。
かなりでっかい天ぷらは小エビのかき揚げ。
かなりでっかい天ぷらは小エビのかき揚げ。

取材・文=清野編集工房
『散歩の達人 日帰り山さんぽ 低山をきわめる!』より