◆散歩コース◆

体力度:★☆☆
難易度:★☆☆

  • 登山シーズン 1月~6月、10月~12月
  • 最高地点 115m(ピーヒョロ見晴台)
  • 登山開始地点 13m(安房神社前バス停)
  • 歩行時間 2時間40分
  • 歩行距離 約7km
スタート
安房神社前バス停
バスを降りてすぐ先の斜めの道を左折してまっすぐ。400mほど行くと大きな鳥居。その奥にも鳥居がある。

ふれあい野鳥館
安房神社の鳥居右側に野鳥の森のふれあい野鳥館。中でパンフをもらって森へ。まず富士見展望台へ。

ピーヒョロ見晴台
国見展望台から平砂浦展望台へと足を延ばし、ピーヒョロ見晴台から戻って西沢の池を回って安房神社へ出る。

安房神社
神社から桜並木の参道を戻り、鳥居から左折し布良の街中へ。国道410号を横切り源八の坂を下りる。

相浜港
突き当りが相浜港。海寄りの道を進む。

布良港
相浜港から1キロも行かないうちに布良港に。近くに二つも港があるとは。駒ヶ崎神社を左に見て海岸へ。

布良浜(阿由戸の浜)
ここが大昔に天富命が上陸したという海岸。青木繁の記念館と布良崎神社に寄ってバス停へ。

ゴール
安房自然村バス停

アクセス:
[行き]東京駅八重洲南口からJRバス関東で館山駅前へ。館山駅前からJRバス関東で安房神社前バス停へ、約2時間20分。
[帰り]安房自然村バス停からJRバス関東で館山駅前へ。館山駅前からJR関東バスで東京駅八重洲南口へ、約2時間25分。

東京駅から電車で行く場合は特急を利用しないと3時間半はかかる。運賃はバスと同程度。

山の標高は一番高い天神山でも146mしかないが、このフィールドの魅力は、深い濃密な森と、いくつかある展望台からの眺望である。展望台からは太平洋の大海原を見晴らすことができる。

これが野鳥の森の特徴だが、この布良(めら)という地は、実はもっと知られていることがある。ひとつは安房神社、そしてもうひとつは青木繁である。

まず安房神社だ。結論を先にいうと、房総のはじまりが、ここ布良の地とされる。およそ二千数百年前に天富命(あめのとみのみこと)が阿波国(徳島県)から忌部氏(いんべし)を引き連れて黒潮に乗って房総半島の布良に上陸した。そして自分の先祖にあたる天太玉命(あめのふとだまのみこと)と天比理刀咩命(あめのひりとめのみこと)を祀ったのが安房神社の起源となる。

一方、洋画家の青木繁は、1904年(明治37)の夏、卒業旅行に画友ら3人と共に布良に来て長逗留。その間にあの「海の幸」を描いた。布良は相当気にいったようだ。

そんなわけで、野鳥の森から安房神社、布良の街へと歩いてみる。

館山駅からバスに乗って安房神社前バス停で降りた。しかし、付近を見渡しても神社らしきものは見当たらない。あとで判明したが、神社は800mの彼方だった。

神社の隣にふれあい野鳥館があるので寄る。どうもまだ2019年の台風の被害で全コースは行けないということで、とりあえず途中まで行くことにする。

コースはいくつかあり、一番長いグリーンシャワーコースなら一周3.4㎞、所要2時間30分。これはほぼ全部回るもの。今回は無理で、半分程度とする。

野鳥の森にある富士見展望台から太平洋を望む

まず最初の展望台、富士見展望台。富士山は見えないが、洲崎(すのさき)方面と太平洋の海原が広がっていた。そのすぐ先の国見展望台もほぼ同じ展望。この2カ所の展望台で十分なほど。その先の平砂浦展望台とピーヒョロ見晴台まで行ったが、木々に邪魔され展望がやや劣る。その先は通行止めなので、戻って西沢の池を回って安房神社のほうへ向かった。

野鳥の森の西沢の池近くのピクニック広場。東屋がある。野鳥の森は広さが22.4ヘクタール。常緑広葉樹林帯で、野鳥のほか、小動物も多い。
野鳥の森の西沢の池近くのピクニック広場。東屋がある。野鳥の森は広さが22.4ヘクタール。常緑広葉樹林帯で、野鳥のほか、小動物も多い。
野鳥の森の最初の展望台になる富士見展望台から。あいにく富士は見えなかったが、平砂浦の砂浜と洲崎方面が見えた。
野鳥の森の最初の展望台になる富士見展望台から。あいにく富士は見えなかったが、平砂浦の砂浜と洲崎方面が見えた。

安房神社は明治期に官幣(かんぺい)大社となったくらいの古く歴史ある神社で本殿は明治14年(1881)築。が、拝殿は新しく昭和52年築で、しかも鉄筋コンクリート造り。しかたがないとはいえ味わいが少々……。

神社から布良の港のほうへと移動する。

相浜港の近くの廃屋を覆ったアサガオのような植物。
相浜港の近くの廃屋を覆ったアサガオのような植物。
相浜港。民家の奥が館山野鳥の森になる。布良は明治期にはマグロの延縄漁(はえなわりょう)でにぎわったところ。冬場の漁は危険も多く遭難者も多かった。
相浜港。民家の奥が館山野鳥の森になる。布良は明治期にはマグロの延縄漁(はえなわりょう)でにぎわったところ。冬場の漁は危険も多く遭難者も多かった。

布良港から、大昔に天富命(あめのとみのみこと)と忌部(いんべ)氏が上陸したといわれる駒ヶ崎神社に寄り、阿由戸(あゆど)の浜(布良浜)へと出た。海原の先に伊豆大島が見えた。今から二千数百年前に上陸した人たちも、大島が見える同じ風景を見ていたはずだ。

男神山(おがみやま)の麓に立つ駒ヶ崎神社。この場所に天富命が忌部氏とともに上陸したといわれる。
男神山(おがみやま)の麓に立つ駒ヶ崎神社。この場所に天富命が忌部氏とともに上陸したといわれる。
駒ヶ崎神社の先に阿由戸の浜がある。昭和24年の8月に版画家の川瀬巴水(かわせはすい)は布良を訪れ、この浜を「房州布良」という作品にした。
駒ヶ崎神社の先に阿由戸の浜がある。昭和24年の8月に版画家の川瀬巴水(かわせはすい)は布良を訪れ、この浜を「房州布良」という作品にした。

彼らが房総のこの地に初めて足を着けたとき、何を思ったのかが気になる。房総にどんな夢と希望を託したのだろうか。

主祭神は天富命。後に安房神社の下社となり、布良崎(めらさき)神社の衣食住の神として信仰を集める。境内は二段で下段には狛犬など、上段には本殿と拝殿がある。拝殿は木造で、明治時代の築らしい。
主祭神は天富命。後に安房神社の下社となり、布良崎(めらさき)神社の衣食住の神として信仰を集める。境内は二段で下段には狛犬など、上段には本殿と拝殿がある。拝殿は木造で、明治時代の築らしい。

アドバイス

野鳥の森は最近まで一部が通行止めとなっていた。ピーヒョロ見晴台の少し先と西沢の池周辺までしか行けなかったが、最高峰の天神山へも通行可能に。途中に危険箇所はなし。

安房神社

明治時代は官幣大社という格式の一番高い神社だった

拝殿の手前にある海食岸を くり抜いてつくられた厳島社。祭神は市杵島姫命。
拝殿の手前にある海食岸を くり抜いてつくられた厳島社。祭神は市杵島姫命。
安房神社参道に入る鳥居。
安房神社参道に入る鳥居。
鉄筋コンクリート製の拝殿。昭和52年築。
鉄筋コンクリート製の拝殿。昭和52年築。

歴史は古く、皇紀元年(西暦紀元前 660年)の創建と伝わる。天富命は、 神武天皇の命令で最初は阿波国に 上陸、その後、阿波国の忌部氏を引き 連れて安房の国に上陸し、房総を開 拓していったという。時代が過ぎて明 治期になると、社格制度により神社の 最高位になる官幣大社(かんぺいたいしゃ)となったが、戦後は社格は廃 止され、現在は別表神社に。

青木繁「海の幸」記念館

名画「海の幸」を生んだ布良の聖地に記念館

画友3人とともに青木繁が布良に来て小谷家宅に長逗留したのが1904年(明治37)。小谷家に滞在中に、「海の幸」を描いた。この絵は西洋画では最初の重要文化財になった。美術界の聖地として小谷家は保全され、記念館になった。

●10:00~16:00(土日のみ開館)、300円。安房自然村バス停から徒歩3分 ☏0470・28・5063

取材・文=清野編集工房
『散歩の達人 日帰り山さんぽ~低山をきわめる~』より