駅周辺にあるイラストマップはよくできている
その点、駅周辺に設置されているイラストマップはよくできている。駅にはもともと、周辺案内のためのきっちりした地図が設置されているが、それとは別に、周辺を案内するためのイラストマップが併置されていることもある。
私がよく目にするのは、JR東日本の各駅にある「沿線近郊名所ご案内」と題されたオレンジ色の地図だ。目印になるのは、線路と国道と川ぐらいしかない。この地図のみで目的地にたどり着くのは難しいかも知れないが、それぞれの名所の位置関係が一目でわかり、レトロなデザインも味わい深いものがある。
花小金井駅にあるマップもこのような「シンプル型」だが、イラストや情報をふんだんに盛り込んだ「盛りだくさん型」のマップも結構発見できる。
たとえば東村山駅前に設置された「東村山市北西部わくわくマップ」では、東村山駅西口から多摩湖までの公園や寺社、名所が細かくイラスト入りで紹介されている。道もほとんど省略されておらず、観光客にとってわかりやすい地図である。
鶯谷駅構内の「駅付近名所旧跡めぐり」も、道は若干省略されているものの、七福神と博物館がイラスト入りで盛り込まれている。
地図が空白になる部分には山手線と京浜東北線をあしらっており、デザイン的に見ても秀逸だと思う。右下のテープで隠された部分には、うっすら「東京北鉄道管理局」(国鉄時代の機関)の文字が見えていることや、車両が103系であることなどを考えると、1980年代頃から設置されている地図なのかも知れない。
イラストマップは80年代と相性がいいのかもしれない
そのような視点でイラストマップを見てみれば、確かに80年代風のファンシーな絵柄で制作されているものが結構ある。善行駅に設置された「ふるさとまっぷ」は、吹き出しの解説付きで各名所が細かく紹介されているが、その色づかいや、「まっぷ」を平仮名で表記するあたりなどに80年代の香りが漂う。しかし、それは必ずしもマップが制作された時期が80年代であったことを意味しない。
駅前ではないが、かっぱ橋に設置されているイラストマップも、80年代風の雰囲気を漂わせながら、2005年開業のつくばエクスプレスや、2012年開業の東京スカイツリーも描かれている。
もしかすると、「イラストマップ」という文化自体が、80年代と親和性が高いということなのかも知れない。スマホで目的地を検索することができなかったあの時代、我々はイラストマップにかなり信頼を置いていたからである。
いま言ったように、現在はスマホで地図検索すれば、すぐに目的地に到達できる。駅周辺のイラストマップも今後は新設されなくなるだろうか。それでも今ある駅周辺のイラストマップは残り続けて欲しいと思う。私はそれを見て勉強したい。
絵・文・写真=オギリマサホ