あっさり淡麗系の中華そばは喜多方ラーメンをイメージ
『中華そば専門 田中そば店』の起源は、1995年東京都足立区一ツ谷にオープンした『博多長浜ラーメン 田中商店』だ。そして2008年、その向いに喜多方ラーメンをイメージしたという姉妹店『中華そば専門 田中そば店 足立本店』をオープン。少しずつ店舗を増やし、2012年3月には今回の主役、『中華そば専門 田中そば店 秋葉原店』をオープンした。
店やメニューについて答えてくれたのはエリアマネージャーの丹野幸治さんだ。「社長の田中剛が長距離トラックを運転しながら全国各地のラーメンを食べ歩き、いちばん感銘をうけたのが博多の長浜ラーメンだったそうです」。
それから『田中商店』をオープンし、王道で濃厚なトンコツラーメンを提供する人気店となった。一方で姉妹店となる『田中そば店』の中華そばはまったく逆のあっさり淡麗なテイストだが……?
「根強いファンが多いトンコツラーメンに対し、誰にでも食べていただけるラーメンも提供しようということで『中華そば専門 田中そば店』を立ち上げました。どこの田舎にもある、ラーメンの原風景を感じていただけたらうれしいです」と丹野さんは語る。
無骨で純粋な中華そば。背脂やオリジナル調味料・香唐で味変すれば3倍楽しめる
注文したのは来店する2人に1人がオーダーするという人気の中華そば800円。このご時世にありがたい価格だ。小さめのどんぶりに並々と盛り付けられた中華そばは、田舎町の商店街にある町中華のラーメンみたい。無骨だけど純粋で、ほっとできる味。
麺は喜多方ラーメンを連想させる、多加水の中太ちぢれ平打ち麺。喉越しがよく、適度な弾力があって食べ応えもある。一口食べて筆者は悟った。これは飲めちゃうラーメンだな、と。
スープはトンコツ、豚のゲンコツでとった清湯を使用。「同じトンコツでも長浜ラーメンの『田中商店』は耳から爪先までの部位を使い白濁したスープですが、『田中そば店』では豚のゲンコツなどをコトコト煮込んだ澄んだスープです」。淡麗でキリッと清々しいスープを塩だれで味を整えている。
そして、とんぶりの上を飾るエースといえばチャーシュー。豚バラ肉を特製の醤油で煮込んでいる。噛み締めるととろけるような脂と赤身部分のコントラストがいい。
ここで丹野さんから食べ方のアドバイスが。「半分くらいまで食べたら、ぜひ無料の背脂と卓上の香唐(しゃんとう)を入れてみてください。味変できますよ」。
背脂をレンゲに一杯、香唐をスプーン1杯入れてみると味が劇的に変化。あっさりスープにコクが出て、唐辛子のいい香りが食欲をそそる。後半戦はこの味で行こう!
おいしいラーメン店がひしめく秋葉原。「初めてウチの味を食べた人たちの胃袋をつかみたい!」
ところで、東京都内を中心に14店舗展開する『中華そば専門 田中そば店』。ほかの町の店舗にも足を運ぶ丹野さんには秋葉原がどんな街に映っているのだろう。
「秋葉原は、東京の中でも若い世代が集まる勢いがある街ですよね。うちは親しみやすい味なので、子供からお年寄りまで幅広い年齢層のお客様がいらっしゃるのですが、若い世代の方には特にチャーシューが9枚乗った肉そば1150円の人気も高いですよ」と丹野さん。
「秋葉原はいろんな店が常に入れ替わって、新陳代謝がいい。店を運営する僕らにとっては厳しい戦いになりますが、その分“秋葉原にはうまいラーメンがある”って海外や地方からもここを目指してやってくる人が多いですよね。初めてウチに来てくださった方の胃袋をギュッとつかみたいです(笑)」。
あの手この手で次々と新しい店が登場する秋葉原のラーメンシーン。だが、この中華そばは実家を思わせるような、変わらない優しさや安らぎを感じる。うれしい時も悲しい時も、そっと包み込んでくれる一杯だ。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢