福岡の定番メニュー「かわ焼き」とは?
突然だが、あなたはかわ焼きをご存じだろうか?
鶏の皮を串に巻きながら刺して焼き、タレに漬け込み、乾かして焼く、を何度も何度も繰り返すことで余分な脂は抜け落ち、串に残ったのはパリッパリになった鶏の皮。これをつまみにしてビールやホッピーが何杯でも飲めるという。まさに九州の居酒屋には欠かせないメニューだが、都内でそのかわ焼きを名物にして人気を博しているお店がズバリ、『かわ焼きまいける』である。
「お店自体は2022年で9年目になります。当時から福岡の料理をつまみに屋台風な雰囲気でホッピーを飲もうというコンセプトで営業して、リーズナブルな価格だったこともあって常連のお客さんが根付いてくれた形ですね」と、話してくれたのは店長の馬場さん。通常の焼き鳥の皮の串焼きとは似て非なる料理だけに、当時の中野ではかなり珍しがられたという。
「僕もこの店で働き出してからかわ焼きのことを知ったくらい、当時は浸透していなかったんですが、リーズナブルな価格にしていたので物は試しという感じで頼んでくれたお客さんが気に入ってくれて、常連になって根付いていった……って感じなんですよね。北口と違ってこっちはそんなに居酒屋さんの数も多くないし、スーツ姿のサラリーマンがよく来るというよりも近所に住んでいる人がほとんどなので、気に入ってもらえたらずっと来てくれたという感じです」
確かに居酒屋が所狭しと並ぶ北口側とは異なり、南口側はどちらかというと住宅地といった雰囲気。それだけに地元で一杯を楽しみたいというお客さんがほとんどで、週末にはなじみの顔が多く集まり、コロナ以降は特にそうした傾向が強まったという。
シンプルがゆえに難しい、かわ焼きの奥深さ
鶏の皮を串に刺し、タレに漬け込んだものを何度も何度も焼いていくのがかわ焼きの調理方法。一度タレに漬けて色がつくまで焼き、またタレに漬けて焼き……という単純ながら、奥深い作業工程を繰り返していくことで鶏の皮から余分な脂が抜け、そこにタレが絡み合ってパリパリりとしたあの食感とともに独特な味わいが楽しめる。
「タレを漬け込んで焼くってすごくシンプルな料理なんですけど、その分、毎日試行錯誤しているんですよ。『どうしたらもっとおいしく食べてもらえるか?』ってね。味を変えるとかではないですし、日々向上心を持って、上を目指していくことで現状維持ですから、更にその上に行くには努力、閃き、運、色んな要素が必要です」
出来上がったかわ焼きは香ばしい香りが漂い、見るからにパリパリな雰囲気。実際に食べてみると、油っぽさはほぼ皆無で、まるでポテトチップスやせんべいを食べているかのようだ。見かけによらず軽い食感なので、気が付けば撮影用に焼いてもらった10本をあっという間に食べてしまった。
ちなみに『かわ焼きまいける』では5本単位でかわ焼きをオーダーされるお客さんがほとんどだというが、地元である福岡では1人10~20本食べるのは普通とのこと。かわ焼きをかじった後にビールやホッピーを流し込むことを想像すれば……何本でも入るというのはよくわかる。
店名に込められた、もうひとつの意味
中野の人たちに愛されつつ、徐々に浸透していったという『かわ焼きまいける』のかわ焼き。九州料理をメインにした料理をはじめ、ドリンク類のラインナップも自慢の一つ。人気のホッピーの他にも日本酒は常に8種類は用意。全国各地の酒蔵から取り寄せたこだわりの一杯が飲めると評判になっている。
「気づきましたか(笑)。実は店名に『ぁ』を入れて、『かわ焼きまぁいける』としているんですよ。『まいける』じゃなくて『まぁ、いける』みたいな。かわ焼きはリーズナブルな価格で食べられるし、まぁまぁイケるで!みたいな風に考えてもらえればと思っていますし、そんなに肩ひじ張らずに気軽にお店に来てもらえたらと思って」
「まぁいける」どころか「めちゃイケる」な『かわ焼きまいける』のかわ焼き。中野に行ったなら、一度は食べておきたいところだ。
構成=フリート 取材・文・撮影=福嶌弘