エレベーターを降りたら、別世界。一等地なのに隠れ家感満載な『びいどろ』銀座店
地下鉄銀座駅から徒歩約1分。にぎわう銀座通り沿いのビルの地下1階に、スペイン料理の老舗『びいどろ』の銀座店がある。通り沿いの看板は小さめであまり目立たないが、エレベーターを降りるとすぐに、ランプの暖かい灯りが出迎えてくれる。
45席ほどの店内は落ち着いた雰囲気で、そこここに飾られたスペイン陶器がノスタルジック。ちょっとカジュアルに、でも美味しい料理をゆっくり食べたい、というときにぴったりだ。
『びいどろ』3大名物の一つ、ホワイトアスパラガスのサラダ
『びいどろ』といえばパエリアが有名だが、こちらのホワイトアスパラガスのサラダも、ぜひ頼んでほしい一皿だ。スペインの農園地帯・ナバーラから直輸入しているホワイトアスパラガスは、現地でも貴重な特大サイズ。これが2本盛り付けられたたっぷりサイズで1600円、2人でシェアする場合などは写真のように2皿で提供してくれる。
ナイフがスッと入るホワイトアスパラガスは、口に入れればとろけるような食感と優しい旨味が楽しめる。3種のピーマンとビネガー、卵黄を組み合わせた特製ソースも絶品! 酸味とコクがあって、アスパラの上品な美味しさを更に引き立てている。お酒好きなら、白ワインが欲しくなること間違いなしだ。
きのこの香りとジューシーさを存分に味わえる、シャンピニオンのセゴビア風。
『びいどろ』のもうひとつの看板メニューが、シャンピニオンのセゴビア風1050円、いわゆるアヒージョだ。ぐつぐつと煮立ったオリーブオイルからはにんにくの香りが漂い、食欲をそそる。
契約農家から取り寄せているマッシュルームは、通常の2倍ほどの大きさで存在感たっぷり。食べてみると、まずは白ワインでフランベされたマッシュルームとにんにくのすばらしい香りが口いっぱいに広がる。大ぶりのマッシュルームは噛むほどにエキスが出てきて、不思議とオイルのしつこさを感じない。最近は普通の居酒屋などでも見かけるようになったアヒージョだが、本場の味はここまで違うのか、と感動してしまった。
いよいよ真打ち登場。国際コンクール優勝の、魚介のパエリア
さて、最後に頂くのは『びいどろ』一の人気メニュー、魚介のパエリアだ。1人前1500円で、注文は写真の2人前から。このほかにもパエリアは何種類もあるのだが、魚介のパエリアは創業以来変わらぬ定番の味だ。
パエリアを頂くときは、豪快に。おしぼりを用意してもらえるので、エビの殻も手で剥いてOK。具材はエビやアサリ、ムール貝のほか、イカやタラの切り身もゴロゴロと入っていて、その全ての旨味をお米が吸い込んでいる。スペイン直輸入のバレンシア米はプリッとした歯応えと味染みの良さが特徴で、一口ごとに濃厚な旨味が溢れだす。
そして忘れてはいけないのが、スペイン人がもっとも好むというおこげの部分。鍋の縁をスプーンでこそげとって食べるおこげは、まさにパエリアの醍醐味だ。
定番以外も美味しそう……。おすすめメニューを見て再訪を心に決めた
『びいどろ』の料理は量もしっかりあるので、カメラマンと2人で3品を平らげるころにはお腹もいい具合に満腹に。しかし、壁に掲げられた本日のおすすめメニューには、東京和牛の網焼きやら、ウナギの稚魚のアヒージョやら、気になる料理が満載だ。これは再訪せざるを得ない。
ちなみに『びいどろ』の創業は1977(昭和52)年。六本木に有った当時の店はもう無いが、銀座店のほかにも、渋谷スペイン坂や、吉祥寺、西武池袋、銀座三越に店舗を構えているので、美味しいスペイン料理が食べたくなったらぜひ訪れてみて欲しい。
取材・文=岡村朱万里 撮影=加藤熊三