出合いはネットの画像検索
『古着屋FunnyFace』がこの物件と出合ったのは2022年頭。コロナが流行りはじめる前で、7年ほど営業していた横浜・白楽での最初の店舗が更新時期を迎えていたこともあり、移転を決意、物件を探しはじめる。
旧店舗はたまたま車で通りかかった時に見つけたのだが、今回の出会いはなんとネットの画像検索! サブオーナーが「どこか良い物件はないかな〜」と、“レトロ・昭和・店舗”のキーワードで画像を検索したという。実に斬新な物件探しである。
良さげな画像はありつつも、ほぼ売り物件でなかなかひっかからず。しかしある時、ビビッときた物件が登場。それが今の店舗だった。だが画像はあっても詳細はなかったので、更に検索を重ね、あるサイトに辿りつく。
それは物語のような、親しみのある紹介文で知られる不動産サイト。『漢方薬局屋さんを残したい』という記事で載っていた。余談だが、オープン後にこの記事を書いたライターさんが偶然お店を訪ねてくれ、SNSで紹介。それを見て、「あの記事を書いた人だ!」と気づいたという。これもなんとも不思議なご縁である。
レトロな雰囲気にテンションはマックス!
さて詳細もわかり、旧店舗の更新も迫っていたため、急いで内見に来たお二人は、レトロな雰囲気が残ったままの店内にテンションがマックスに! 内見の時点で借りることをほぼ決意し、翌日正式に契約を申し込んだ。ときどき「どうしてあなたはここを借りたの?」と不思議に思われることもあるという。そう、なかなかリアル世代には当たり前すぎて、レトロ嗜好の気持ちは伝わりにくかったりするのだ。
こちらはかつて漢方薬局が営まれていたが、店が閉まってからはしばらくの間、倉庫のように使用していた模様。
改装はすべて自分たちで
できるだけ漢方薬局時代のままの形を活かそうと、床も壁も棚も必要最低限のリノベーション。全て自分たちで行ったが、困ったのは電気の配線と、梁の位置だという。
古い物件あるあるで、電気の配線がわからず、今でもどこにスイッチがあるかわからない電気もある。壁の中にあるため電気屋さんもお手上げで、ガラスケースの電気もつい最近スイッチを見つけたというから、まるでRPGのよう。また天井にライトや飾りをぶら下げるため、梁を探すもなかなか分からず、こちらも宝探しである。
漢方薬局から古着屋へ
この物件にして良かったことは、元々の調剤室や倉庫部分などの空間を活かせて、洋服のジャンルによって売り場を変えられたこと。また扱っている服の年代と建物が大体同じくらいなので、雰囲気も出しやすく、横浜時代のお客さんも旧店舗との違いを楽しんでいるという。千葉や埼玉からのお客様も近くになってうれしいと足を運んで下さっている。
元・漢方薬局であったことを最大限に活かして古着屋を営むお二人。漢方から洋服へと商品を変えたこの建物も、そんな新しい流れをきっと楽しんでいるだろう。
取材・文・撮影=千絵ノムラ