アジアンテイストの意匠を施したエキゾチックな温浴施設

欧文の店名表記や玄関脇の石像などが異国情緒を演出する。
欧文の店名表記や玄関脇の石像などが異国情緒を演出する。

最寄り駅は埼玉新都市交通ニューシャトル伊奈線の原市駅。といっても沿線以外の人にはあまり馴染みがないかもしれない。東北・上越新幹線の高架軌道の脇を走る新交通システムの路線で、大宮駅から原市駅までは6駅約15分。高架を走るため車窓からの眺めがよく、秩父の山並みや富士山を望むことができる。初めて乗る人はレジャー気分を楽しめるだろう。

原市駅から住宅が立ち並ぶ街道を行くと、円形の窓が連なる異彩を放つ建物が見えてくる。ここが『天然温泉 花咲の湯 HANASAKI SPA』。永遠を意味する蓮(はす)の花をモチーフに、フランス統治時代のベトナムでよく用いられたというフレンチコロニアルという建築様式を採り入れた建物。スーパー銭湯は和の情緒を演出するところが多いが、ここはアジアンリゾート風の意匠で統一され、館内にもリゾート感が漂う。

内風呂は男女とも5種類。女性限定のバラ風呂が好評

入浴剤のほか、生花もふんだんに使ったバラ風呂は女性のみのうれしいサービス。
入浴剤のほか、生花もふんだんに使ったバラ風呂は女性のみのうれしいサービス。

浴室は2階にあり、男女ほぼ同じ造りで風呂の種類も同じ。内風呂には5種類の風呂があるが、メインの浴槽は床に信楽焼の陶版を敷き詰め、風呂全体から湧き出す無数の気泡が身体全体を包み込む美泡の湯。泡の刺激が心地よく、ぬる湯なので長湯好きに好評だ。

ジェットバス、ハンドジェットバス、リラクゼーションバスの3つの機能浴を備えるアトラクション風呂は、高圧水流で全身のつぼを刺激するのでマッサージ効果が期待できる。

ユニークなのが電気風呂。通常の電気風呂と違って、押す・揉む・たたくという3種類の刺激が体験できるマッサージ機のような機能が付いている。ビリビリとした電気の刺激も弱めなので、電気風呂が苦手という人も試してみるといい。

毎月花の日(7・8日)には女性限定のバラ風呂を実施している。ピンクに染まった湯、湯面に浮かぶバラの花、ほんのり甘い香りも漂い、ロマンチックな気分で入浴できる。

内風呂に併設されたサウナでは、1時間ごとにオートロウリュウを実施。熱せられたサウナストーンに自動で水が噴霧されると、高温の水蒸気が立ち上がりサウナ室内の湿度が一気に急上昇する。そして、高温の蒸気が天井から徐々に降りてくると体全体が熱波に包まれたような感覚になり、身体中から噴き出す大量の汗が滝のように肌を滑る。

サウナなどで火照った体をクールダウンしてくれるのが18℃前後に設定された冷水風呂。キンキンに冷たい風呂が好きな人には物足りないかもしれないが、このくらいの温度のほうが浴後の爽快感が増す。

露天エリアで楽しむ源泉かけ流しの湯

屋根がある浴槽は源泉かけ流し風呂。あふれた温泉が手前の天然温泉風呂に注がれる。
屋根がある浴槽は源泉かけ流し風呂。あふれた温泉が手前の天然温泉風呂に注がれる。

露天エリアで真っ先に入浴したいのが地下1500mから湧き出る源泉「花咲の湯」を加水・加温なしで楽しめる源泉かけ流し風呂。茶褐色の濁り湯で、源泉温度が38.5℃なのでぬる湯だが、じっくり浸かって温泉の効果を享受しよう。

源泉かけ流し風呂の一段低いところには天然温泉風呂がある。源泉かけ流し風呂からあふれ出た温泉がここに流れ、別途、加温した温泉も注がれ、適温の風呂になっている。

このほか露天エリアには、温泉を独り占めできるつぼ湯や、高濃度炭酸泉、寝ころび湯もあり、趣の異なる湯船をハシゴするのも楽しみだ。

つぼ湯は一人用の浴槽。入浴すると浴槽から温泉があふれ出る贅沢な風呂だ。
つぼ湯は一人用の浴槽。入浴すると浴槽から温泉があふれ出る贅沢な風呂だ。

時間制限なしの岩盤浴ではロウリュサービスも体験できる

アロマの香りが漂う「烈の部屋」は70人が定員の大きな部屋。
アロマの香りが漂う「烈の部屋」は70人が定員の大きな部屋。

1階にある岩盤浴は時間無制限で何回でも利用でき、男女共浴なので家族や友人同士、カップルで利用できる。岩盤浴610円(土・日・祝は660円。岩盤房専用着・専用マットの貸出含む)。

岩盤浴は3室あり、最も大きな部屋が室温55℃の「烈の部屋」。熱した富士山の溶岩石から放出される遠赤外線が室内に充満している。中央に配置された「烈炎炉」に大量のアロマ水をかけて、立ち上がる水蒸気をスタッフが大団扇(うちわ)であおぐロウリュサービスを実施している。オートロウリュに勝る熱波に包まれるので、汗の料もはんぱではない。浴後には達成感さえ得られる貴重な体験なので、ぜひ参加してみよう。

「華の部屋」は50℃。ヒマラヤ岩塩とトルマリン鉱石の2種類の砂利状のパワーストーンを床一面に敷き詰めた部屋で、ほどよく背中のツボを刺激する寝心地が快感だ。

「彩の部屋」では灯りを少し落としているので静かな空間でゆっくりくつろげる。
「彩の部屋」では灯りを少し落としているので静かな空間でゆっくりくつろげる。

「彩の部屋」は45℃。薬宝玉石、麦飯石、化石黄土、ブラックゲルマニウムといった効果の異なる4種類のパワーストーンを床一面に敷き詰めており、心地よい温度で身体を芯から温めることができる。

「涼の部屋」は5℃のアイスルーム。岩盤浴で火照った体を冷気でクールダウンする部屋だ。クールダウン後は、リクライニングルーム「憩の部屋」や岩盤房専用テラスでひと休みするといい。岩盤房専用ロビーと合わせて約8000冊のコミックと雑誌が読み放題なので、お好みの場所でのんびりとくつろぐといい。

憩いの部屋は岩盤浴利用者専用の休憩コーナー。コミックや雑誌などを読んで、のんびりとくつろごう。
憩いの部屋は岩盤浴利用者専用の休憩コーナー。コミックや雑誌などを読んで、のんびりとくつろごう。

レストラン「LOTUS CAFE(ロータス カフェ)」ではそばや定食などもあるが、レッドカレー、鉄板ミーゴレン、石焼きナシゴレンなど、タイ料理を中心にしたエスニック料理が評判。

リラクゼーションサロン「Rakura(ラクラ)」では、リンパトレナージュ、全身リフレッシュ、リフレクソロジー(足ツボ)などさまざまなメニューが用意されているが、タイ伝統のストレッチと指圧を組み合わせたソフトタイ古式マッサージや、足裏全体で圧力をかける足流(そくりゅう)と呼ばれる施術が珍しい。

「アジアの薫り漂う天然温泉で癒やしの時間をお過ごしください」とチーフの髙橋さんが話すように、建物や館内の意匠だけでなく、レストランやリラクゼーションにもアジアンテイストが感じられる。スーパー銭湯には珍しいエキゾチックな雰囲気の中で、源泉かけ流しの風呂に入るのも楽しい体験だ。

1階にはリクライニングチェアを置いたリクライナールームや寝転び座敷のくつろぎ処などの休憩コーナーがある。
1階にはリクライニングチェアを置いたリクライナールームや寝転び座敷のくつろぎ処などの休憩コーナーがある。
住所:埼玉県上尾市原市570/営業時間:8:00~24:00(土・日・祝は~翌1:00、最終受付は閉館1時間前)/定休日:無(メンテナンス休あり)/アクセス:埼玉新都市交通ニューシャトル伊奈線原市駅から徒歩5分

取材・文=塙 広明 写真=天然温泉 花咲の湯 HANASAKI SPA