スペイン坂で異国ムードのカフェタイムを
渋谷パルコへと続くゆるやかな坂道、スペイン坂。その一角に1979年から営業を続けるカフェ&バー『人間関係 cafe de copain』。スペイン坂はその愛称の通り、かつて白壁にレンガ屋根の建物が並び、まるでスペイン・ミハスのような雰囲気を漂わせていた。
そんなスペイン坂に溶け込む本格的なカフェをオープンするべく、同店のオーナー社長はヨーロッパ中を駆け巡りさまざまなカフェやパブでコーヒー文化・酒文化を研究した。そのため、スペイン坂の風景がすっかり変化したいまでも、この店では本場さながらの異国ムードを感じられる。
外からは想像できないほど奥行きのある店内は、イギリスやアイルランド・ダブリンにある昔ながらのパブをミックスしたような空間。本場さながらの雰囲気を味わえる。
日本に今ほどカフェ文化が根付いていなかった当時、日本のカフェではテーブルサービスが主流だった。そんな中、ヨーロッパで主流だったキャッシュオンスタイルをいちはやく取り入れ、コーヒーをより気軽に楽しめるようリーズナブルな価格に設定。
「日本らしいコーヒー文化を作りたい」という想いのもと、誰でもカジュアルにコーヒーや軽食を味わえる現在のスタイルが誕生した。オープンから40年以上経った現在でも、そのスタイルは変わらない。
焼きたてのホットサンドはお手頃ながらも本格派
本場の雰囲気を大切にする同店では、料理にもそのこだわりが反映されている。
オープン当時から提供するホットサンドは、本場アメリカのクラブハウスサンドを再現。注文が入ってから焼きあげるため、いつでも出来たての味わいを楽しめる。
厚焼きたまごとツナのホットサンドは、ふわふわのボリューミーな厚焼きたまご、ツナとマヨネーズ、アンチョビなどを混ぜ合わせた特製のブルックリンソースが生地にギュッとはさまれている。
見た目から、すでにもりもりと食欲が湧いてくる一品だ。
噛んだ瞬間、カリッといい音をたてる熱々で香ばしい生地は、まろやかな風味のたまごと好相性。ツナとマヨネーズ、アンチョビの風味が絶妙なアクセントになっていて、クセになる味わい。一度頬張ったら止まらなくなってしまった。
さくっとランチを済ませたいときに、片手で食べられるカジュアルさもいい。
毎日食べたい上品な自家製スコーン
もうひとつ同店で人気なのが自家製スコーン。常時およそ10種類を揃え、焼きたての温かいスコーンをその日の気分で楽しめる。
この日注文したのは、香り高いアールグレイの茶葉をそのまま生地に練り込んだアールグレイスコーン。アールグレイが香る上品な味わいのスコーンはそのまま食べても十分に豊かな風味だが、生クリームとブルーベリージャムをトッピングして味の変化も楽しめる。
外側はサクッとかため、中はふかふかとした食感でコーヒーや紅茶などのドリンクによく合う。ホットサンドを味わったあとのデザートにもほどよいサイズ。いくつか注文して、気になる味を食べ比べてみるのも楽しそうだ。
朝から夜まで営業する同店は、時間帯によってBGMが変化し、学生やビジネスマン、お年寄りなど客層もさまざま。長い歴史を持つことから、親子2代で訪れる人もいるという。
誰でも気軽にコーヒーを楽しめるようなカフェ文化を根付かせ、100年続く店を目指す『人間関係 cafe de copain』。日本、特に渋谷は時代の変化とともにスピーディーに街の様子が移り変わる。そんな中でもあえて「変化しない」からこそ、この店には定期的に通いたくなる魅力がある。渋谷に訪れた際は、本場パブの空気に包まれながら気ままなランチを楽しみたい。
取材・文・撮影=稲垣恵美