◆散歩コース◆

体力度:★☆☆
難易度:★☆☆

  • 登山シーズン 1月~6月、9月~11月
  • 最高地点 180.3m(浅間山)
  • 歩行開始地点 20m(大磯駅)
  • 歩行時間 2時間37分
  • 歩行距離 約6km
スタート
大磯駅
駅から線路沿いを行き最初のガード下をくぐる。右手に妙大寺を見てその先を右折。道なりに上がって行く。

高田公園
高田公園の先から細い道に。アップダウンを繰り返して楊谷寺横穴群へは右へ。道標はない。戻って湘南平へ。

湘南平
海、富士山、丹沢山塊と素晴らしい展望を満喫したら、尾根縦走に。浅間山にはベンチとテーブルあり。

浅間山
浅間山から高麗山の間にはかつての山城の遺構ともいえる堀切などが2カ所ほど。後半は岩場の道もある。

高麗山
高麗寺があった山頂には石の遺構あり。下山は石段を下り、高来神社の道標を見て下り、さらに左手の女坂の道へ。

高来神社
神社を出れば旧東海道。化粧井戸の史跡や化粧坂の一里塚、松並木を見て大磯駅へと戻る。

ゴール
大磯駅

アクセス:
[行き]JR東海道本線品川駅から大磯駅へ。
[帰り]JR東海道本線大磯駅から品川駅へ。片道各55分

大磯駅から行く湘南平は海抜約180mの台地のような場所で、昔は泡垂山(あわたらやま)と呼ばれた。地形図には千畳敷と記されているが、今は湘南平が一般的な名称だ。ちなみに戦前の昭和14年(1939)の5万分の一地形図には、「千疊敷山」とあるから、泡垂山の次にそう呼ばれたのかもしれない。湘南アルプスなどは、完全なる俗称といえる。

海の展望が抜群の山だが、近所の里山といってもいい。なにせ駅に降りるとすぐ裏手が山だ。たぶん、近所の人が散歩がてらに行く場所だろう。近所の小学校の格好の遠足コースでもある。その遠足コースにいざ挑戦!

駅から右手の線路沿いに行き、ガード下をくぐって右手の道を上がって行く。相模湾が少しずつ見えてくる。高田公園まで上がって民家の脇を抜けて行くと土道になる。いったん下ってから進むと直登の階段。

上がりきって山道を行くと、分岐あり。右手のほうへ下ると楊谷寺谷戸(ようこくじやと)に横穴墓群があるという。5分もすると斜面に穴がいっぱい。

7世紀前半の古代人の墓らしい。墓の数は21基あるということだが、埋没して減っているように見えた。再び分岐に戻って、湘南平の台地へと上がった。

湘南平の台地から相模湾を望む

当然だが、いつ来てもいい眺め。少ない努力で大きな見返り。これぞ湘南平。展望台へ上がってテレビ塔のほうを見ると、ホントに平らな台地のようだ。もともと平べったい台地状だと思うけれど、人の手が入ったからこれほどになったはずだ。

湘南平の広場に立つ湘南平新展望台。もうひとつテレビ塔にも展望台がある。展望は360℃の絶景。
湘南平の広場に立つ湘南平新展望台。もうひとつテレビ塔にも展望台がある。展望は360℃の絶景。
湘南平から相模湾の眺望。江の島、三浦半島などがよく見える。
湘南平から相模湾の眺望。江の島、三浦半島などがよく見える。
新展望台から丹沢方面の眺望。中央の高い山が大山。
新展望台から丹沢方面の眺望。中央の高い山が大山。
新展望台からの富士山。手前の丸い山は矢倉岳。左手の尖っている山は金時山。
新展望台からの富士山。手前の丸い山は矢倉岳。左手の尖っている山は金時山。

そう、ここにはなんと軍事施設があったのだ。その名は千畳敷山防空砲台。戦時中にB29などが飛来すると高射砲などで立ち向かったが、B29は打ち落とせなかったらしい。砲弾が届かなかったという話があるが、そうではなく、どうも停電になり発射できなかったというのが真相のようだ。原発事故と同じく、日本は電気系統が苦手らしい。

台地から高麗山方面に向かう。途中に2カ所、よく山城で見かける堀切のような跡。そして高麗山には神社跡があるが、ここには城があったようだ。

湘南平から高麗山の途中に浅間山がある。山頂には浅間神社。富士山に行かなくとも、ここで御参りすれば同じ御利益がある、と信じられた。
湘南平から高麗山の途中に浅間山がある。山頂には浅間神社。富士山に行かなくとも、ここで御参りすれば同じ御利益がある、と信じられた。
面積29haの高麗山県民の森。戦時中には北側、東側が伐採されたが、南側に江戸時代からの植生が残る。スダジイ、タブノキ、ケヤキなど広葉樹の森だ。
面積29haの高麗山県民の森。戦時中には北側、東側が伐採されたが、南側に江戸時代からの植生が残る。スダジイ、タブノキ、ケヤキなど広葉樹の森だ。

子供が遠足でも来る人気の湘南平は、実は中世から昭和まで、軍事施設があった要塞山だったというわけだ。

山歩きメモ

大磯には、島崎藤村が晩年を過ごした家や、旧吉田茂邸、三井家の別荘だった城山荘の跡地の大磯城山公園ほか、いろいろと山以外の見どころが多い。海岸に出れば大磯港のそばに大磯漁協直営の『めしや大磯港』がある。おすすめの店だ。

アドバイス

駅前に観光案内所があるので、最新のハイキングマップなどを手に入れたい。以前は善兵衛池のほうから湘南平に行くコースが普通だったが、今はすすめられていない。住民からの苦情によるらしい。

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高来神社

渡来人が建てた寺が始まり。山全体が霊域だった

高麗寺があったという高麗山山頂。寺の礎石が残っている。
高麗寺があったという高麗山山頂。寺の礎石が残っている。
麓にある高来神社。背後にあるのが高麗山で、明治までは山全体が高麗寺の霊域と して保護されていた
麓にある高来神社。背後にあるのが高麗山で、明治までは山全体が高麗寺の霊域と して保護されていた

高麗山は高麗寺山とも呼ばれ、江戸時代までは山頂に高麗寺という寺があった。明治の廃仏毀釈で高麗寺は廃寺、高麗神社だけが高来神社と改名して残った。7世紀に高句麗からの渡来人が建立したという。

楊谷寺横穴墓群

大磯町が横穴墓群の密集地帯だったとは

大磯周辺には遺跡が多いが、特に横穴墓が多く1000基ほどあるという。横穴墓は古代人の墓で、この楊谷寺の横穴は写真の下にもあり、計21基。天井部分はアーチ形や切妻屋根形もある。7世紀以降のもので、造りもかなり精巧なもの。ひょっとしたら高句麗からの渡来人が造ったものかもしれないと思った。

東海道の松並木

江戸時代が今に残る東海道の松並木

大磯は旧東海道が通っていた大磯宿があったところで、その面影がいくつか残っている。街道筋に一里塚や松並木など。大磯中学校付近の松並木は200mほど続いている見事なもの。写真は、コース上の山王町に残る今にも倒れそうな松。付近には一里塚も残る。

取材・文=清野編集工房
『散歩の達人 日帰り山さんぽ』より